引き続き、「日刊:The Best Album & Mix」をお送りしております。前回の内容はコチラから。12月31日まで、本企画は毎日更新してゆきます。今回は3本目。どうぞよろしくお願いします。
Luke Slater 『Berghain Fünfzehn』
〈Ostgut Ton〉のレーベル結成15周年を記念し、Luke Slaterがリリースした作品。本作には、15年の間に発表された音源が155枚分(12インチ125枚とアルバム30枚)詰まっています。言うまでもなく世界最高峰のレーベルの記念碑的1枚。その手法が興味深く、当初彼が頼まれたのはアニバーサリー“ミックス”でした。単純なミックスに飽きていた彼は、「RIP THE CUT」なる方法を発明したのです。くだんの155枚を切り出し、削り出し、加工して、全く新しい音楽として作り上げました。それはサンプリングとは少々異なり、感覚としてはあくまで“ミックス”であったと言います。リミックスでもリエディットでもなく、まさしく“Reassembled(再構成された)”なものだったわけですね。
MartynやShed、Answer Code Requestら同レーベルのレジェンドたちの楽曲を惜しげもなく使い、さながらミニマルテクノの歴史をたどるような感慨を覚えました。本作につきましては、弊誌がLuke Slaterに実施したインタビューでも語られています。
naivetape #38 – Sapphire Slows
来年で活動10年目を迎えるマルチプレイヤー / DJのSapphire Slows。ひとくちに「DJをする」と言っても、その内容は千差万別であります。ジャンルひとつ取ってもそれは言えますが、プレイする時間やハコによっても大きく異なります。それがたとえ、同じDJによるミックスであっても。彼女はそういう“自分の時間”を作れるアーティストだと感じます。自分のプレイ時間の中に、多様でコンセプチュアルな世界観を見せることができる。アンビエントによる静謐なサウンドスケープも提示でき、このミックスのようなフロアコンシャスな音像も作れるのです。「かける音楽の幅が広い」という言い方もできそうですが、彼女が長けているのはフロアと音楽をパッケージする能力だと感じますね。James Zabielaが2018年に発表した、〈Balance Series〉のミックスコンピレーション「Balance 029」にはSapphire Slows名義の楽曲「Silent Escape」が収録されておりますが、個人的には彼女自身が紡ぐミックスレコードも待望しています。
Text_Yuki Kawasaki
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