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BLOG

月刊: ベストアルバム6選

12月25日~1月31日までが対象。変わりゆく価値観の中でどんな音楽が生まれ、我々はどのように解釈してゆくのか?

Mixmag Japan | 2 February 2021

月刊ベストアルバム, mixmag

今年からMixmag Japan編集部が粛々と選ぶ、「月刊: ベストアルバム&ミックス」をスタートさせます。本来Mixmagは雑誌媒体なので、名を月「刊」としました。先月公開した、日ごとに年間ベストを明らかにしてゆく「日刊: 年間ベストアルバム&ミックス」と同様にブログ記事として発表します。ポリシーとして、同じくこちらでも「ですます」調を守るつもりです。

さて、新型コロナウイルスの影響はダンスミュージックのあり方まで変えてしまいそうな勢いですが、変わりゆく価値観の中でどんな音楽が生まれ、我々はどのように解釈してゆくのでしょうか。音楽の内容だけでなく、様々な外的要因も含めて考えてゆきます。まずはアルバム編。なお、対象は昨年12月25日以降にリリースされた作品とします。


Bicep 『Isles』

BICEP | SAKU (FEAT. CLARA LA SAN)

Bicepがセカンドアルバムとしてリリースした『Isles』。全10曲(日本版は13曲)が収録されている本作には、まったく4つ打ちパートがありません。これまでにも彼らはブレイクビーツ、あるいはIDM的なアプローチを試みてきましたが、“徹頭徹尾4つ打ちなし”というのはすいぶん思い切った決断です。Bicepいわく、本作の制作が開始されたのは「パンデミック以前」とのことですが、図らずも同時代性を帯びているように感じるのです。弊誌が実施したインタビューでは、「ダンスフロアよりもリスニングミュージックを意識した」と語られており、そしてその在り方は可変式であることが明らかにされています。つまりは、自室(あるいはヘッドホン)で聴いているときの印象と、彼らのLive Setで披露されたときの印象は異なるように設計したと。これまでのジャンルを横断するスタイルからさらに1歩踏み込んで、今度は我々の音楽の接し方にまで影響を与えうる作品を発表してきたわけです。ダンスフロアにとっては死活問題が山積する現在ですが、こういう作品を聴くとなんだか元気になりますよね。むしろダンスフロアでも体感したいので、それまでは生き残るぞ。


Yu Su 『Yellow River Blue』


中国出身にして現在はカナダのバンクーバー在住のプロデューサー / DJ、Yu Su。彼女のデビューアルバム『Yellow River Blue』が1月22日にリリースされました。本作はダウンテンポなハウスとアンビエント・ダブが溶け合い、どこかオリエンタルな雰囲気を感じる内容に仕上がっております。最近は欧米でもアジア人の活躍が目立ちますが、Yu Suらの活躍を見ていると、それは「人種のアイデンティティを捨てることと同義ではない」と実感できますよね。これは極東かつ島国日本に住む我々にとっても大きな気付きではないしょうか。むしろアーティストがバンクーバーのようなグローバル都市に拠点を移したとき、自身のローカリズムを表明する傾向すら感じられます。昨年Yaejiがリリースした『What We Drew 우리가 그려왔던』も好例ですね。


AceMo 『All My Life 2』


2018年に〈Haus Of Altr〉がスケートボードブランドからレコードレーベルに変貌したとき、確実にブラックコミュニティに活気がもたらされました。中心人物のMoMa ReadyAceMoの貢献は著しく、現在のブルックリンのアンダーグラウンドの盛り上がりを象徴するような存在です。「テクノがブラックミュージックであること」はBLMの影響もあって近年改めて強調されていますが、彼らもまたそれに自覚的であります。AceMoが昨年12月31日に突如発表した『All My Life 2』は、まさしくそれを決定付けるような1枚。3曲目の「New Daft Punk」なんて、タイトルからして最高ですよね。あまりにも鮮やかなカウンター。


Jazmine Sullivan 『Heaux Tales』

今年の初めにリリースされたアルバム『Heaux Tales』で、Jazmine Sullivanはひたすらセックスと愛について歌っています。複数の異なる女性の視点が「Interlude」的にアルバムの随所で登場するのですが、そのテーマもそれぞれ違う。つまり、セックスと愛の裏側にあるものを克明かつ複眼的に描いているわけです。それによって得るものと失われるもの。相手の男が経済的に豊かでなくとも、愛のあるセックスが与えてくれるものはお金の力を凌駕するのでは? けれども、もし相手が自分の財布からお金を抜き取るような場面に遭遇したとき、本当に同じことが言えるのか? …というように、視点が切り替わることによって、愛の行方が探られてゆきます。そして複雑に絡み合うテーマとは裏腹に、サウンドはシンプル。中枢に据えられているのは、他ならぬJazmine Sullivanの声なのであります。そのコントラストがまた素晴らしい。


Kasper Marott 『Full Circle』


どんなジャンルの音楽でも作れるプロデューサーは今日も世界のどこかで活躍しております。器用貧乏の域を超越した、真のヴァーサタリティ。たとえば、デンマークのコペンハーゲンを拠点に活動するKasper Marott。「アシッドが熱い!」だとか「イタロが来るぞ!」などと言われ始める前に、彼はいずれの趨勢にもキャッチアップし、あまつさえ高いレベルの楽曲を制作してきました。2018年に発表されたEP『Keflavik』なんかは好例で、わずか3曲の中にアシッドもイタロもNew Orderも入っております。そして1月22日にリリースされた初のフルアルバム『Full Circle』で、さらにスケールアップして帰ってきました。全11曲入りにして、まさかのジャンル被りゼロ。ダンスミュージックはこんなにも豊かでありました。


Cultures of Soul 『Saturday Night – South African Disco Pop Hits – 1981 to 1987』


現行のローカリズムには光が当たり始めているとはいえ、優れたアーティスト/作品が不遇を極めた時代はありました。現在も相対的に「マシ」なだけであって、まだまだ過小評価されている部分はたくさんあります。そのように前置きしたうえで、1980年代の南アフリカに思いを馳せます。ニューヨークやデトロイトでハウスやテクノが隆盛を極める中、かの国ではアパルトヘイトに対する民衆運動が激化しておりました。そんな時代に南アフリカで作られたダンスミュージックを集めたコンピレーションアルバムが、『Saturday Night – South African Disco Pop Hits – 1981 to 1987』。ニューヨークやデトロイトの音楽に後れを取らない、素晴らしいバイブス。なお、投獄されていたネルソン・マンデラが釈放されたのは1990年2月でした。


Text_Yuki Kawasaki

 

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