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月刊: ベストアルバム6選(May)

今年度暫定で最も時間がかかった、5月の「月刊ベストアルバム」。『Quantum Blackness』、『Tewari』、『Bishintai』、『99%』、『Arc Mountain』、『Antifate』の6枚

Mixmag Japan | 22 June 2021

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Rainbow Disco ClubもFFKTも延期になり、もちろんクラブも通常営業はしておらず、仕事を終えて街へ繰り出せどもコンビニぐらいしか開いてない…。まぁ、そもそもお上は「人のいる街へ行くな」と要請しているわけですからね。おかげで我々は孤独への耐性とインドア遊びの技能が向上しております。少しばかりVTuberに詳しくなり、積んでいた本や映画を消化し、DAZNのサッカー観戦で曜日感覚を整える。

音楽と向き合う時間も相対的に増え、とりわけアルバム単位で作品を咀嚼できるようになった気がします。それだけが救い。孤独を埋めてくれたのは、やはり音楽。本題に入る前に前置きすると、5月の「月刊ベストアルバム」選出が今年度暫定で最も時間がかかりました。豊作も豊作。


Kareem Ali 『Quantum Blackness』

Kareem Ali – 「They Can’t Stop Us」

2019年から現在まで、たった2年間のうちに約50枚ほどの作品をリリースしてきたKareem Ali。ニューヨークに生まれ、現在はアリゾナ州のフェニックスを拠点に活動を続ける27歳の新鋭。その多作ぶりは決して乱打ではなく、多彩な作家性によって裏打ちされています。ある時はハウスミュージック、そしてまたある時はブレイクス、さらにはベッドルームポップスと、ジャンルの垣根を越えて楽曲のプロデュースに勤しんでいるのです。幼いころの彼は宇宙飛行士を目指していたそうですが、それは今、ビジュアルや作品の世界観に継承されています。さらに、そこへブラックアメリカンとしての矜持が合流してきました。アフロフューチャリズムはKareem Aliの指針であり、Sun Ra、Herbie Hancock、Larry Heard、Underground Resistance、Drexciyaなどの先駆者が、彼の重要なインスピレーションとして挙げられています。もっと言うと、エレクトロニック・ミュージックを制作する以前の彼は、Miles Davisに心酔するジャズプレイヤーでした。

それらが一切合切詰め込まれ、全24曲の長編アルバムとして結実したのが本作『Quantum Blackness』です。ハウスを基軸にしながら、R&Bやダウンテンポ、フットワークのテクスチャーを施しつつ、さらに狭義のハウスとしても発展させてゆく…。そして本作もSFに繋がっております。「宇宙」として解釈できるエレクトロニック・ミュージックといえば、Jeff MillsやFlying Lotusの諸作品を想起するリスナーも多いでしょう。個人的にはKareem Aliにも同じぐらいスケールを感じるのですが、どうですか? 実際、最近では大手のデベロップメント・エージェンシー「One House」が彼のマネージメントを買ってでたそうで、活躍の場はさらに増えてゆくはずです。


Scotch Rolex 『Tewari』

Scotch Rolex & Lord Spikeheart – 「Success」

現在の拠点をベルリンに置く日本人アーティスト・DJ Scotch Egg。彼の新たなプロジェクト“Scotch Rolex”によるアルバム『Tewari』が、〈Nyege Nyege〉傘下のレーベル〈Hakuna Kulala〉からリリースされました。アフリカ各地で素晴らしいダンスミュージックが鳴っている昨今、非アフリカ圏においても彼らが作る音楽は強烈なインスピレーションとなっています。シンゲリやアマピアノなど、もはやローカルの枠を超えてグローバルにその影響力を発揮し、日本国内においてもアフリカのテイストを感じる音源が確認できます。

“外様がメインプロデューサーを務めた作品”という意味で、本作『Tewari』はひとつの到達点ではないでしょうか。全編通してアフリカ(とりわけウガンダ)の空気感をめいっぱい吸い込みながら、インダストリアルなハウスを鳴らす「Cheza」、シルキーかつ緊張感に溢れたトラップチューン「Omuzira」、オリエンタルなバイブスを詰め込んだ「Afro Samurai」など、唯一無二のサウンドが耳を引きます。さすがは百戦錬磨のコラボレーター。SeefeelやWaqWaq Kingdomの一員として活躍し、個人名義でもあまたの共作を世に放っている彼だからこそで成しえた芸当、いやもはや曲芸。一朝一夕では到達することのできない崇高な境地であります。「エクレクティック」の真の体現者。


UNKNOWN ME 『Bishintai』

前作・前々作と同様に、LAのレーベル〈Not Not Fun〉からリリースされた、アンビエント・ユニット“UNKNOWN ME”の最新アルバム『Bishintai』。これまでの作品は、細野晴臣の言う“観光音楽”的な側面があったように感じられます。特に前々作『subtropics』(2017年)は、すべての楽曲に世界中の都市の名前が冠され、さながら“聴く旅”のような内容でした。対して本作『Bishintai』は、比較的インナースペースに根差した印象があります。その点では、彼らのデビューアルバム『sunday void』(2016年)のテイストに近いのではないでしょうか。

しかし驚くべきはその内容の豊かさ。ミニマルなプロダクションでありながら、アイデアの多彩さは特筆すべきです。MC.Sirafuが参加した「Moisture Of View」ではミステリアスなスティールパンが鳴り響き、食品まつりがフィーチャリングされた「Breathing Wave」では複雑なリズムが耽美に重なり、中川理沙がハーモニック・コーラスを担当した「Treadmill」では美しい歌声と空間的なサウンドのレイヤーが高い完成度をみせます。社会が混迷を極める今、本作では極めて有意義な“内省の旅”を実現できるでしょう。


Pixelord 『99%』

アートワークが示す通り、ロシアの鬼才・Pixelordの最新作『99%』はサイバーパンクな作品です。まぁ彼の著作は往々にしてSci-fiな世界観を持っているわけですが、前作『Let’s Collapse』はディストピア的側面も持っていました。タイトルからして破壊的ですね。今年の1月にリリースされた『Let’s Collapse』は、COVID-19以降の世界にケリをつけるようなアルバムだったわけです。サウンドもノイジーで冷たい印象が強く、全7曲のEPを聴き終わったが最後、まるで焼け野原にぽつねんと立たされるような感覚を覚えます。

その意味で今作『99%』は、現在に落とし前をつけた後の世界観で作られたと言えるでしょう。遠い昔、ほとんど無法地帯だったインターネットから何かをダウンロードするとき、最後の“1%”で断念した経験はありませんか。それが違法か合法かはさておき、何かしらのコンテンツをネットで入手しようと試みる行為。プログレスバーがノロノロと進捗を伝えていたあの時代に、Pixelordは立ち返ったのです。すなわち『99%』は、その1%に落とし前をつけるアルバムなのでした。トランスあり、ブレイクスあり、Aphex Twinありの、“ネオ・ノスタルジー”。あの頃果たせなかった野望を、Pixelordはどう挑んだのでしょうか。


V.A. 『Arc Mountain』

Dos Monos, RXM Reality – 「April 11」

レーベルやグループの枠を超えたコラボレーションは、一体どれほどの割合で実現されるものなのでしょう。様々な問題が生じて立ち消えになったプロジェクトも少なくないでしょう。音楽に限らず、共作は単独で作業するのとは別の難しさがあります。その点、〈Deathbomb Arc〉と〈Hausu Mountain〉の2つのレーベルによる共同コンピレーションアルバム『Arc Mountain』は理想的な形で結実したように感じます。しかも“横軸”だけでなく、このプロジェクトの場合は“縦軸”にも繋がっているわけですからね。

90年代後期からUSのアンダーグラウンドから絶大な支持を集めるDeathbomb Arc。他方、2012年に創設された比較的若い、同じくUSはシカゴのHausu Mountain。時にハードコアパンク、時にテクノやブレイクス、さらにはヒップホップ…。ジャンルの垣根を越えて素晴らしい才能を輩出・発掘し続けている両者ですが、そのマインドが時を超えて継承されていることに感動を覚えます。それが作品として高い強度を持っていることにも。日本からは3人組ヒップホップクルー・Dos Monosが参加。


Ziúr 『Antifate』

Ziúr – 「Antifate」

ベルリンを拠点に活動するDJ/プロデューサーのZiúrが、エキサイティングな作品をリリースしまくるレーベル〈PAN〉から最新アルバム『Antifate』を発表。本作は、イギリスの作曲家エルガーが描いたロンドン讃歌「Cockaigne」がモチーフだといいます。街中にワインが流れ、家はケーキでできているユートピア的世界観に立脚したメルヘン。それを抽象的に表現するのは、Ziúr独特の歪かつ繊細なサウンドであります。このユートピア的世界観に当時のロンドンっ子たちは“逃避”を見出したわけですから、これまでコンシャスな態度を表明し続けてきたZiúrが今何を言いたいのか推察できるような気がしますね。言葉で直接表現せずとも、題材やコンセプトに何を選ぶかで具体化できるのがエレクトロニック・ミュージックの素晴らしさのひとつかと思います。仮に本稿が勝手な解釈をしても、「そんなことは意図していない」と言えるわけですから(そして本当に深読みの可能性も十分ありうる)。

サウンドの内容としては、比較的抑制された印象を受けました。彼女の作家性から考えて、上で紹介したScotch RolexやPixelordの作品のように、暴力的なサウンドにも振り切れたはずです。しかし今回はそうしなかった。あまつさえクロージングトラック「The Carry」では、柔らかささえ感じるフルートまで使われます。ともすれば芝居がかって感じられるかもしれません。けれどもこの構成からは、皮肉として採用された“ユートピア”を、彼女はなかば本当に信じているようにも思われるのです。ささくれ立った黒い感情の奥に、あの日のロンドンへの憧れをみる。


Text_Yuki Kawasaki

 

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