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BLOG

月刊: ベストミックス6選(Jun.)

6月にオンラインで公開されたミックスをご紹介

Mixmag Japan | 15 July 2021

月間ベストミックス, mixmag

何か記事を書いているとき、その内容に関わるような“非常事態”が最近では日常的に起きますね。矛盾した言葉によって紡がれる世界の愚かさはジョージ・オーウェルが指摘した通りですが、こうも正確に再現されると感嘆さえ覚えます。いやはや、いつまで続くディストピア。

「DJの選曲・ミキシングは現場で聴くほうが1億倍幸せを感じられる」と前置きした上で、6月にオンラインで公開されたミックスをご紹介します。


DJ Boring | Boiler Room x Lost Sundays

オーストラリアはシドニーで開催されたパーティ「Lost Sundays」の模様。これが今年の5月30日の映像だというのだから恐れ入ります。すし詰めのフロアでDaft Punkの「Prime Time of Your Life (Para One Remix)」を聴く体験、既に記憶の彼方かと思われましたが、この映像のおかげで容易に思い出せました。DJ Boringも初期の頃に比べるとかなりアップリフティングな内容でセットを組んでおり、フロアの熱気がありありと伝わってきます。終盤にかかるThe Thrillseekersの「Synaesthesia (En-Motion Remix)」を聴いて、微塵も興奮しない人なんています? トランシーなブレイクから、再びパワフルなドロップへ。手を上げるオーディエンスに、モクモクと焚かれるスモーク。そしてサイケな色彩のライティング…。通算4度目の非常事態宣言が発令された今、悔しさと羨望と妬みが入り乱れた複雑な感情でこの映像を観ております。

シドニーも7月8日時点ではロックダウン中ですが、オーストラリア全体の新規感染者数はわずか42人(米ジョンズ・ホプキンス大学の集計による)。我が国に比べると希望のあるロックダウンだと感じます。これも「隣の芝生は青い」で片づけられてしまうのでしょうか。


WAVE MIX 011 “CRUE-LWAVE MIX” by KENJI TAKIMI

ヴァイナル盤で頭をぶっ叩かれる衝撃…、というとセンセーショナルな表現ですが、実際はそんなインスタントなものでなく、このミックスでは素晴らしい長編小説を堪能するような満足感を得られます。それも、ほぼ確実に。4つ打ちをキックで繋げて…、あるいはBPMをハーフでとって…、と型にはまったつなぎ方に慣れたリスナーは静かな衝撃を受けるはずです。自由かつ耽美的に紡がれる、古今東西様々な楽曲たちは名手によって新たな顔をのぞかせます。

たとえばThe Velvet Underground & Nicoの「All Tomorrows Parties」(14:10ぐらい~)を聴かせたあと、擦りながらBeing Boringsの「The Cult of Elegance feat. Eddie C(Gonno Re-Edit)」を落とすわけです。新旧やジャンルの違いは、Kenji Takimiの前ではもはや些事。彼の盤上には“普遍”しかない。良い音楽を最高の状態で聴かせてくれる、ザ・マスター。


Bassiani invites Anastasia Kristensen / Podcast #97

デンマーク出身のDJ/プロデューサー・Anastasia Kristensenが、ジョージアのナイトクラブ「BASSIANI」のポッドキャストに登場。ジャンルレスで多様性に富んだスタイルは、2019年の初来日以来、ここ日本でも厚く支持されています。このミックスは通しで聴くと印象に残るのはフロアバンガーなテクノトラックかもしれませんが、その盛り上がりまでの道筋が実に鮮やか。さらにはエンディングまで美しい。つまり、起承転結の妙が彼女のミックスからは感じられるのであります。様々な音像を経由しながら、我々は恍惚へと導かれる…。

このミックスは、前半のテクノで始まり、中盤のブレイクス&ジャングルを経て、再度テクノへ回帰し、終盤にはギターを基軸としたフレンチハウスにたどり着きます。ロックへの造詣の深さは彼女の作家性を語る上で欠かせないような気がしますね。昨年彼女も参加したMixmagのミックスシリーズ「Downtime」では、“alternative cuts”と銘打ち、My Bloody Valentineの「Only Shallow」やRecoilの「Bloodline」が選曲されてましたし。再来日が待たれる。


Seimei Vinyl Sessions Vol.1 06-17-2021

ドイツのとあるエージェントとオンラインチャットでやり取りをしていたら、「そろそろテクノもフェスティバル・ミュージックの座から降りるんじゃないか」という話になりました。すなわち、大仰なドロップで大勢の客を煽るような内容のサウンドではなく、ややミニマルな展開が基本になってゆく、と。かつてのテクノが90年代から2000年代に移り変わる際に辿った道を、もう一度クラブシーンがなぞる可能性があるのではないかと、そういう旨の話です。何のエビデンスもない、軽口をたたいた程度のやり取りでしたが、可能性は大いにありそうです。

TREKKIE TRAX〉の中心人物・Seimeiが発表したミックスは、まさにその文脈上にあるテイストなのではないかと感じます。“ミニマル・ハードテクノ”とでも言うべき、激しくも抑揚の効いた内容。余談ですが、彼と筆者は年齢で言えば1992年生まれの同学年でして、日本の代表的レイヴイベント「WIRE」全盛期を体感として知らないのであります。横浜アリーナでRichie HawtinやRicardo Villalobosを観た経験がない。そんな人物がこのミックスを紡ぐ事実に、ひとつの転換点を感じずにはいられません。


034 ~ plastic/vibes 2-year anniversary x Shinichiro Yokota

2019年、アムステルダムが街を上げて開催するフェスティバル「ADE」を取材しました。その一環として、筆者は市中にあるレコードストア「Rush Hour」で行われたイベントにお邪魔させてもらい、その模様をレポートとして執筆。お時間あるときにでもご一読ください。(参照: Rush Hour Instore in Amsterdam Dance Event 【レポート】

イベント期間中は様々な国から音楽ファンが来ていたのですけども、日本のエレクトロニックミュージックへの熱量は相対的に高かった実感があります。Rush Hour内の棚にはInoyama Landのレコードや「攻殻機動隊」のサウンドトラックが飾られており、シティポップの再評価とはまた別のベクトルの盛り上がりを感じました。中でも、Far East Recordingの寺田創一、横田信一郎の2人は“ジャパニーズ・ハウスの先駆者”として崇拝されていました。2015年にRush HourのキーマンであるHuneeがFar East Recordingのコンピを監修した経緯もあって、アムステルダムはなかば彼らにとってもホームグラウンドですが、それを踏まえても彼らへのリスペクトには並々ならぬものを感じました。優れた内容で、なおかつそれが客観的に評価された事実をアーカイブする意味でも、ハウスミュージック専門のポッドキャスト〈plastic/vibes〉に提供された横田信一郎のミックスは特筆すべきなのです。まるで、2019年にリリースされた『Ultimate Yokota 1991-2019』を再構築したような内容。


Yazzus B2Beats Miley Serious

遠隔でB2Bを行うことに、もはや違和感はないでしょう。パンデミック以前から、Rinse FMやBalamiiなどのオンラインラジオステーションの台頭により、距離を隔てていても「共演」は可能になりました。今更言うまでもありませんが、コロナ禍以降は顕著に実感するアーティストは多かろうと思います。

ロンドンを拠点に活動するYazzus、ニューヨークに拠点を置くMiley Serious(出身はフランス)が〈Telekom Electronic Beats〉で行ったB2Bも好例でしょう。彼女らはまだ実際にクラブで会ったことがなく、オンラインでのみやり取りをしているそうです。そんな2人が各々のレイヴ観を共有し、ミックスを作り上げる。対面せずとも価値観やアイデアを交換し、ひとつのアウトプットとして結実させるのは、SNS以降のあらゆるアーティストの強みだと感じますが、それを最も実現できる可能性が高いのはDJだと感じます。抽象的な音であっても印象としてメッセージを発せられ、比較的容量が軽い音ファイルとして共有できるわけですからね。どうですか、この身体性の高いレイヴサウンド。


Text_Yuki Kawasaki

 

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