引き続き、「日刊:The Best Album & Mix」をお送りしております。前回の内容はコチラから。12月31日まで、本企画は毎日更新してゆきます(全部紹介しきれていないのでお正月も続きます)。今回は10本目。どうぞよろしくお願いします。
GAIKA 『Seguridad』
GAIKA – 「Kingdom of Slums Ft. Lao」
USに負けず劣らず多民族国家であるにも関わらず、UKの民族的な多様性にはそれほどフォーカスされていない印象がありませんか。サッカー選手やラッパー、バンド界隈など、ポップスターたちにもブラック・ブリティッシュの姿が多数見受けられますが、良くも悪くもUSほど声が上がっている様子は確認できません。それもそのはずで、イギリスの学校が教える黒人の歴史といえば、大西洋を行き来した奴隷取引やアメリカの公民権運動の話ばかりなのであります(参考:BBCニュース)。つまり、ブラック・ブリティッシュは当事者としての実感を持てないのだと。その矛盾を「Black Lives Matter」が激化する以前からずっと指摘していたのが、ブリクストン出身のMC・GAIKA。ゴシック・ダンスホールとエレクトロニック・ミュージックの境を自在に往来しながら、鋭い筆致でリリックを書きなぐっております。今年リリースされた『Seguridad』は、図らずもBLMの世界的な連帯と重なり、これまでよりも更に同時代性の高い作品へと仕上がりました。オープニングの「Of Saints」からして、“remember we, our nobility, there’s kings and queens on every street”(俺たちの尊厳を忘れるな。すべてのストリートにクイーンとキングがいる)と来るわけです。「ストリート」という言葉がここで登場することにドキッとしますよね。逃避が主たる目的になりがちなダンスミュージック(個人的にはそれが悪いことだとは決して思いません)ですが、この曲では明らかに抗議の色が濃い。デトロイトでBLMのデモが起きたとき、民衆がテクノ(あるいはハウス)をかけて行進している動画がSNS上を賑わせておりましたが、あれが発生した場所もストリートです。その意味では、本作はダンスミュージックが持つ意味性のようなものを改めて思考させるアルバムでもありました。
Guest 008: The flavour of Meg Ward
彗星のごとくシーンに現れたDJ / プロデューサー、Meg Ward。彼女は2018年に地元のニューカッスルでデビューを果たしたらしいのですが、一体この才能をどうやったら見過ごせるのでしょうか。フロア向けの曲も高いレベルで作れるし、何よりDJがシンプルに上手い。このミックスにしても、「Hard-House」と銘打たれてはいますが、その内容は実にポリバレント。ガレージもありますし、ブレイクビーツも随所に聴かせてくれます。現場が復旧した暁には、ぜひとも各所を席巻していただいですね。もっとも、既に一部では熱烈な歓迎を受けているようですが。かの街の人気アンダーグラウンドパーティ「ILL Behaviour」でレジデントに抜擢されて以降、Mark BlairやDemuja、HAAiらシーンの最前線で活躍するDJからラブコールを受けております。
Text_Yuki Kawasaki
最新情報をお届けします
Twitter でMixmag Japanをフォローしよう!
Follow @mixmagjapan