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INTERVIEW:Björk(2)「別に自分が他の人よりも素晴らしいとは言わないけど、ミュージシャンの仕事は希望を与えることだとは思うの」

彼女は電子音楽界のエネルギー源だ

Mixmag Japan | 30 December 2017

「あまりにも美しいものについては話すことによって
冒涜してしまうような気がする」Arca

近年、ビョークのテクノに対する欲求は彼女の音楽をより興味深い方向へと変形させつつある。2015年のアルバム『Vulnicara』は、深い闇と傷心に包まれていた(歌詞の例:「私たちの愛は子宮だった/それでも絆は切れてしまった」)が、『Utopia』では、光の方角に向かって180度の方向転換を見せた。アルバムに登場する、「Blissing Me」の「互いにMP3を送りあって曲に恋をする二人の音楽オタク」や「Features Creatures」に登場する古典的な「マジで恋する5分前(意訳)」などの歌詞は、ビョークと、ベネズエラ人プロデューサーのArca、そして全員女性のフルート・オーケストラのコラボレーションによって生まれた有機的でオーケストラ調のサウンドと組み合わせられている。

「アルバムに収録されたフルートは全て12人編成のフルート・オーケストラによるもので、なぜか毎週金曜日に予定が空いていたので、私のキャビンに集まってリハーサルをしたの。フルートでアルバムを作りたいなら、なるべく多くの音色を作り出したいもの!」と説明する。「Loss」では、メロディと楽曲があまりにも深く融和しているため、それぞれのパーツの輪郭を見つけるのが難しいほどだ。この曲は共同プロデューサーにRabitを迎え、数多あるアルバムの聴きどころの一つとなっている。「あまりにも美しいものについては、話すことによって冒涜してしまうような気がするんです」と、ビョークと再び作業を共にしたことについて訊かれたArcaは答える。

「夢のようでしたが、深く愛する人と共に音楽を作るということは、本当に純粋なものを内包しています。言葉にしてしまうのが躊躇われるのですが、これまでの人生の中で、最も深い音楽的な繋がりを感じました。喜びであり、挑戦であり、刺激であり、活力を与えられ、気持ちを持ち上げられました。二人共同じゃないと実現できないことだけをやろうというのが、最初からのコンセンサスでした。体験や視点を下地に、何かを作ろうとする試み。彼女はアレンジや歌詞を独自に手がけましたが、私が参加してからは、同じ部屋で作業をすることを好みました。それにしても、色々な場所で作業しました。ロンドン、レイキャヴィク、ニューヨーク……東京のホテルで試聴したこともありました。あのアルバムの曲は全て、私にとって意味合いがあります。陰も陽もあり、時として牙を向くこともあります」。

アルバムは、精神の力について迷走する「Body Memory」で一つの山場を迎える。10分の大作だ。「前のアルバムには『Black Lake』という曲が収録されていたけど、あれは失恋のどん底の歌だった。たぶん私の潜在意識が、これまでで一番悲しい曲を書くなら、その対極の明るい姉妹曲も書かなければいけないと思ったの。アイスランドのキャビンに戻って、ちょっと寒かったのでコートを3枚着て、湖の側で横になって4時間オーディオブックを聴いた。そのオーディオブックは『チベット死者の書』だった。3割くらいは、まるでカトリック的な内容だったわ。この人生で善人でないと、死後、トンネルの中で1,000年焼かれるとか。一部はそのテーマだった。でも他のセクションで、私の一番好きな部分なんだけど、ユートピア的な人生の話があって、善人として生きた場合は、20マイルも咲き続けるラベンダーと、湖ほどのクジャクを与えられるの。だから、「Body Memory」は、私が、死ぬとき、何を考えているかな? ということを考えた曲なの。私から、私への戒めで、他の人にも少しでも何か足しになれば嬉しいな。Aメロは、精神の錯覚のせいで神経質になったり不安になったりするときのことを歌ってて、サビでは身体がリラックスするの。人生の重大なことについて、身体を信じましょうっていうのがメッセージ。DNAに刻まれているのだから、リラックスして身体の記憶に任せれば、どうすれば良いのか、自然と分かるはずなの」。彼女にとって、一曲一曲は具体的に「何か」の歌ではなく、インスピレーションの源が複数あるという。彼女の音楽が、他の誰よりも複雑で奥深い理由だ。「例えば、三つの異なるシチュエーションに登場する、共通の、一つの感情についての歌だったりするわ。例えば、感情的になった人生のワンシーンと、親戚についてと、映画で観た何かについて、とか……」と説明する。

先進的であり続けよう
音楽的に重要であり続けよう

1965年にレイキャヴィクで生まれたビョークは、1977年の自身の名前を冠した1stアルバム以来、ミュージシャンとして数々の波紋を起こしてきた。ティーンエイジャーの頃はThe Sugarcubesの一員として過ごしたが、1992年に解散してから、ビョークはソロ・アーティストとして4,000万枚以上のアルバムを販売し、世界中を飛び回った上に、オスカー史上最高の衣装(2001年アカデミー賞)を纏った一人にもなった。しかし彼女がなぜ、この四半世紀、これほど重要なポジションを担ったか、その理由については記憶しておくべきだろう。『Post』と『Homogenic』から『Utopia』まで、ビョークを動かし続けるものの一つは、先進的であり続けよう、音楽的に重要であり続けようとするこだわりだ。ネリー・フーパーやLFOのマーク・ベルから最新作のArcaまで、彼女は常に最先端に耳を向け、足元はダンスフロアを意識している。「『Vulnicara』では12のリミックスが作られたけど、制作者はいずれも当時私が個人的に付き合いのあった人たち。人は歩み寄ってくれる。私もそうする。でも本当は有機的な繋がりがあるとベスト。直感を信じなかったときとか、あまり共通点のない人とコラボレーションしたときは、そこまで実りが多くなかった」。

しかし(これは、エレクトロニックの女性プロデューサーならうんざりするくらい身近に感じることだろう)、彼女は、コラボレーションの際にパートナーである男性(大部分がそう)に対して、自分の貢献の度合いをしばしば矮小化されることに関して不満を声にしている。「私がここで発言することが少しでも女性の役に立つのであれば、積極的に発言したい」と、彼女は、2015年のPitchforkに対する取材で、音楽制作において自分自身でどこまで作業しているのかを説明する際に伝えている。今日は、そのことについてさらに詳しく話を聞いた。

「ビートも作るし、アレンジもするし、エディットをすることもあるわ。いろいろなパートを担当するの。もしかすると、自分で作業をしている風景の写真を撮らないので、自分のせいなのかもしれない。でもリリースする楽曲は、自分自身でエディットまで監督するわ。コラボレーターからのビートを使用するときは、私自身が、私が作ったアレンジメントやメロディに合わせて、編集して配置していくのよ。とはいえ、いつも優秀なアーティストとコラボレーションするので、私と一緒に作業をするときに、受身にはなって欲しくないの。私も、相手に対して消極的にはならないわ」。「よく言うの。男は“作家”になれるけど、女性が同じことをやると認めてもらえない」。しかし、最近は進歩が見られると言う。「進歩していると思う。いろいろなアーティストがいることを認められるようになってきたと思うの。例えばM.I.A.のようなアーティストは、アルバムに対して確固たるヴィジョンを持っている」。

ビョークの成長を見守ってきた人の中に、ソロとして最初の3枚のアルバムに携わったUKのミュージシャン、マリウス・デ・ヴリーズがいる。「彼女の好奇心は止まる所を知らないんだ」と、LAの新居から電話を通して語った。彼は、昨年のオスカー受賞作『La La Land』の音楽監督を務めた。「彼女はまた、現代のカルチャーとも交流する。彼女の輪に加えてもらえるのは、本当に素晴らしい体験だよ。作曲の才能もさることながら、彼女を定義するのは、彼女の好奇心と怖いもの知らずな側面だ。彼女はアートに対して素晴らしく誠実で、それが自然と誘う方向へ進むことを恐れないんだ。私は、彼女のその進歩を見守ってきた。彼女が自信をつけ、自立していく道のりを。彼女は物覚えが早く、自分の運命は自分で切り開く必要があることを常に意識していた。特に、音楽業界に生きる女性として。あと、すごいPro Tools使いなんだよ!」

ビョークは、あらゆる活動を通して
世界を少しだけ明るくする

ビョーク作品の多くと同じように、『Utopia』はコンセプト・アルバムでもある。「『Utopia』ってタイトルのどこが一番気に入ってるか分かる?」と彼女は訊いてきた。「誰にでも意味が分かるところよ! トランプだブレグジットだってご時世だから、本当に緊急事態よ。温暖化についてどうするかも考えていかなきゃいけないことだと思う。トランプが米国のパリ協定離脱を決定したときは、絶句したわ。でも今思うと、私たちに残された道はとてもDIYなもので、自分たちの力で“ユートピア”を見つけなければいけないと思うの。リサイクルも必要だし、各自で野菜も作らないと! 一番裕福な10のテック企業が10億ドルずつ資金を提供すれば、環境の改善のために100億ドルの予算ができるわ。そういうことが起きないと! 同時に、私は次世代にも期待しているわ。海のプラスチックを一掃する方法を発見した13歳の子供や、CO2を除去する細菌を培養しているバイオテックの人……だから、必ず道が開けると思うわ。私は、別に自分が他の人よりも素晴らしいとは言わないけど、ミュージシャンの仕事は希望を与えることだとは思うの」。

残り時間も僅かとなり、ビョークはコーヒーを飲み干しながら帰り支度を始めた。そこで、最後に再びユートピアのテーマに戻った。「楽観的であることは、機能的でもあると思うの。人生は、明るい部分もあれば、暗い部分もあるわ。残念ながら、暗い部分だけに着目してしまうと、まるで人生が全部真っ暗に見えてしまう。そして、明るい方に目を向けるというのは、必ずしも能天気に、暗いことが存在しないと思い込んでることにはならないの。このアルバムにも、暗い瞬間はある。でも明るい方に目を向けていれば、暗い部分は自然と解決するのよ」。そう言い残して、彼女は帰った。また、あらゆる活動を通して、世界を少しだけ明るくするために。

INTERVIEW(1)

Words:Ralph Moore
Photography:Maisie Cousins

 

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