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コロナ禍におけるUKでの議論 -「他の仕事を探せば良い」と発言した政府に対する6人のDJたちの反論 –

Goldie、SHERELLE、Fatboy Slim、Jyoty、HAAi、そしてThe Blessed Madonnaがイギリス政府のナイトライフ軽視についての意見を共有した。

Mixmag Japan | 5 January 2021

昨年の10月にITV Newsに出演した際、Rishi Sunak氏は、芸術やナイトライフなど、コロナウイルスのパンデミックによって大きな被害を受けた業界の人々は、他の仕事を見つけるべきだと発言した。

「誰もがこの危機の始まりの頃と同じ仕事を続けられるとは言えない」と、同大蔵大臣は感想を述べた。

Sunak氏が感想を述べたのは、別の大臣Gillian Keegan氏がSky Newsに対して、近日中に「ナイトクラブが再オープンすることは考えにくい」と発言した1週間後のことだった。

政府は現在、人々に「新たなスキルを獲得し、さらなるスキルの向上を心がけ、人生の他の道も模索する」ように訴えかけ、15億7000万ポンドの緊急助成金を除けば、このパンデミックの期間中、芸術やナイトライフの業界を支援する姿勢は特に見せなかった。イギリスの音楽業界は年間で52億ポンドの経済効果を持ち、同国のナイトタイムエコノミーに至っては、その効果は660億ポンドだ。

大臣のコメントと、政府が芸術やナイトライフを軽視する姿勢はイギリスのあらゆるカルチャー・シーンに衝撃を与え、ナイト・ツアーがナイトクラブに資金を投入するよう国会に働きかけることや、ダンスミュージックのコミュニティから政府の近眼的なアプローチを疑問視する声が上がっている。

これに対し、当編集部では、キャリアのさまざまなステージにいる6人のDJに「他の仕事を探す」ように言われたことに対する感想や、ナイトライフの将来について思うことを聞いてみた。

政府は、DJたちに、新たに訓練を受け他の仕事に就くように伝えました。それに対して、どのように思いますか?

Goldie:かつてない戯言ですね。なんせRishi Sunak氏ですよ。元ヘッジファンドのマネージャーで、色々と恵まれた青年です。芸術がなんなのか分かってないのでしょう。

新たに訓練を受けるように進言するのは、かなり強い発言です。何せ芸術の話ですよ。いずれはテート・ギャラリー*も閉鎖せよと言うのでしょうか。バービカン・センター*も不要ですかね。サウス・バンクや、あらゆる舞台芸術もなくしてしまうのでしょうか。全く現実味の無い話ですね。

*テート・ギャラリー: 美術コレクションや近現代美術コレクションを所蔵・管理する、イギリスの公的機関

*バービカン・センター: ヨーロッパ最大の文化施設。女王エリザベス2世から贈られた「国民へのプレゼント」

SHRELLE:私は、本当に酷い話だと思いますし、政府は恥じるべきです。イギリスの音楽業界は年間52億ポンドの経済効果をあげています。それだけ経済に貢献しているのですから、Rishi Sunak氏には、経済の一部としてちゃんと救済してほしいです。とても重要な一部ですからね。

現在、苦しい状況に置かれているアーティストは多数います。ツアーやコンサートがキャンセルされ、これまでの投資が無駄になった人も少なくありません。私や私の周囲のアーティストのように、やっと芽が出てきたアーティストは…私のように運が良くメディアに紹介してもらえている例外もありますが…多くは苦境に立たされています。私は自営業者向けの補助を受けていて、最初は例年の80%ほどもらえていましたが、それが70%になり、次回の受取額は去年の20%程度です。これは、3ヶ月ほど続く予定ですが、明らかに不十分です。他に、ユニバーサル・クレジット*という補助金を申請しているアーティストもいますが、つき返され、食料や最低限の必需品、各種料金の支払いもできないという人がいます。そんな人たちがどのように生き延びているのかというと、当座貸越を活用したり、ローンを組んだりしています。借金を抱える人も多く、福祉関係の費用もかさんでいきます。これらは、経済にどのように影響するでしょうか?

*ユニバーサル・クレジット: イギリスの生活保護制度。失業者を段階的に就労に向かわせるシステムを持つ

Fatboy Slim:銀行が斜陽になった時、他の仕事を探せと言う人はいませんでした。我が国の経済のために必要だと判断されたので、救済されました。ところがカルチャーやアートの話になると…。バレエやDJだって、我が国の経済や対外的な印象に大きく貢献しているわけですが、それを無視して「他の仕事を探せ」と言うのは、どうでも良いと言っていることと同じです。

Jyoty:DJになる夢を追いかけている人は、もともと安定した収入を求めずにリスクを背負っています。ロックダウンの最初の頃、全てが下り坂となって、とても不安になりましたが、あの時にみんなを励ましてくれたのは、クリエイティブな産業だったと思います。

DJはクラブにとって不可欠ですし、クラブはたくさんの雇用を生み出します。経営者や社員だけでなく、バーテンダーやセキュリティ、清掃員、タクシーなど。クラブがなくなったら、深夜のタクシー運転手はどこで仕事があるのでしょうか。全く理にかなっていません。

正直、ブースに立てなくたって構いません。それよりもダンスフロアが恋しいです。友人たちと出会ったのもそこですし、恋人もそうですし、旅行に行くお金がなければ、クラブに行くのがちょっとした旅行でした。政府は、周りが見えていません。国会議員は、いざとなったら家族をどこか遠くに連れて行くこともできますが、多くの人にとっては、金曜か土曜の夜に4〜5時間ほど遊ぶのが、そのバカンスなのです。

HAAi:Rishi Sunak氏のような人物が人々の職業選択に口出ししているのを見て、私はすぐに怒り心頭でした。コロナは私にも直接影響していますが、この業界は巨大で、私の仕事が成立するためには多くの人々が関わっています。私たちの業界や、そこに遊びに来る人たちをあからさまに軽視する行為は、本当に無知だと思います。

The Blessed Madonna:他の仕事ならもうやってます! ほとんどのDJは、副業型です。専業でやっていけるのは一部だけで、そういう面々は、長いこと他の仕事をやっていませんので、急に転職しろと言われても、屈辱的なだけでなく、不可能に近い状態の人もいます。新しい職場で「ところで、2012年から2020年までは何をやってたの?」と訊かれた時に、「世界中でDJをやってました」と答えたところで、履歴書に箔が付くわけでもありません。この業界にいない人からしたら、真っ当な仕事だと思われていないのでしょう。多くのDJにとって、DJは、パーティーのようなライフスタイルではなくて、週7日の堅実な仕事です。また、履歴書に「レイブ好き」と書くのに相応しい欄があるでしょうか? そのような経歴が役に立つ業界などほとんどありませんし、逆に、役立つ業界があったならば、それらもクラブと同様、苦しい状況にあることでしょう。もし今の仕事を辞めるとしたら…もちろん辞めませんが…クラブのブッキング担当など、前に経験した仕事に就きたいですが、そういった仕事もなくなっています。エレクトロニック・ミュージックと関係ない仕事に従事したのは、2008年が最後です。

政府はなぜナイトライフ産業を救済すべきなのでしょうか?

Goldie:経済に対する貢献度と(ナイトライフが成立させる)たくさんの働き口です。そして金曜の夜に劇場に行くなり、HypeAndy Cのプレイを見に行くなり、コンサートのためにロイヤル・アルバート・ホールに行くなり、出かける理由を生み出してくれます。

レイブ好きは、ヘッジファンドを含む多数の一般企業が投資できるインフラをイギリスのカルチャー内に作りました。これらの大企業は(ダンスミュージックのカルチャーに)既に組み込まれています。もうすでに長い付き合いです。ここで見捨てるんですか? それはすごい。茶番ですよ。

SHRELLE:この国のナイトライフシーンは、国際的にも有名です。音楽目当てのツアー客がナイトクラブやイベントを訪れます。イギリスには、黒人のディアスポラによるものを筆頭に、カルチャーや音楽ジャンルなどを生み出してきた深く、豊かな歴史があります。ラバーズロックからガラージ、ドラムンベース、グライム、ダブステップなど、私たち黒人が生み出したものがたくさんあります。イギリスの音楽の歴史は、誇るべきものだと思います。

Fatboy Slim:私たちのカルチャーの一部です。アイデアの温床でもあります。年間660億ポンドの産業でもあります。経済的にも重要な存在であるアーティストたちは、イギリスの骨格をなす要員ですし、ダンスミュージックとクラブカルチャーは、イギリスをイギリスたらしめる、重要な輸出資源でもあります。優等生の皆さんが私たちのやることを理解できないからって、政府が私たちを軽視して、私たちを蔑ろにすることは、許されませんよ。

Jyoty:私は、ナイトライフを目当てにロンドンに来ました。かつて、母にはアムステルダムの友人の家に泊まってると言いながら、実際にはトッテナムのTwice As Niceでクラブ遊びしていることがよくありました。世界中を飛び回りましたが、みんな口を揃えて「イギリスのクラブシーンは最高だよ。ラジオも良いし、ライブイベントも良いし、イギリスの様々な音楽ジャンルや、生み出すあらゆるものが大好きだ」と言ってくれます。世界中のクラブシーンが目標とするエピトメのような存在です。経済に流し込むお金のことも忘れてはいけません。

HAAi:経済のためにお金が必要であることは、しばしば語られますが、人々には発散する方法も必要です。ここの音楽と音楽業界は、長年、イギリスの存在価値を高めてきましたし、私がここに移り住んだ理由でもあります。これらが失われてしまったら、将来、国際的なスターが生まれる可能性の芽も摘んでしまうことになるでしょう。

The Blessed Madonna:極めて貴重なビジネスです。救うのにかかる費用と比べても、はるかに多額のお金を国に流し込むでしょう。そして、その価値は、業界を救済するのに小切手を発行した後、末長く継続するでしょう。なぜなら、テクノ目当ての観光や、音楽目当ての観光は巨大な業界であり、アーティストのショーを訪れる人々によって危機を脱した国もたくさん存在します。これらのショーの価値を、私は知っています。いろいろ大変になった時に、周りの人のために、カルチャー的な意味だけでなく、経済的な意味においても立ち上がった私たちを、政府は見捨てると言ってるんです。私たちは、経済的な視点からも非常に価値のある存在です。本当にお金のことを考えるのであれば、私たちの業界を死なせてしまうことは極めて悪手だとわかるはずです。

政府がナイトライフを救済しなかった場合、業界の未来はどうなると思いますか?

Goldie:絶望的だと思います。例えば、僕は何の「訓練」を受ければ良いのでしょうか? カジュアルに音楽を楽しむ一握りのレイブ好きの問題ではないんです。経済を支えている芸術の話なのです。しかし、政府は真剣に取り組もうとしません。僕は、完全に真剣です。

SHERELLE:政府がナイトライフを救済しなければ、業界の未来はとても暗いものになると思います。必要なタイミングでサポートしてもらえなかったことにより、リリースできたはずのものをリリースできず、苦労するロストジェネレーション的な世代が生まれるでしょう。政府は、ドイツのように一念発起して救済パッケージを用意するべきです。

Fatboy Slim:ナイトライフは、最後の最後まで再開が待たされる事業だと思います。パンデミックが長く続けば続くほど、店舗も、企業も、個人も、営業できない期間が続きます。そうすると店舗が廃業するので、再開できるようになった時には住居に変わっていたり、廃墟しか残っていない状態になるでしょう。

Jyoty:政府がアングラを好きじゃないのは明白です。ですから、どうぞ、門限を設定して、クラブを閉店に追い込んでしまえば良いでしょう。そうすれば、悪夢が現実のものとなりますよ。アングラの隆盛です。キッズたちには、発散の場所が必要なんです。政府が今やっていることは、アングラシーンを盛り上げるのに必要なレシピです。どうぞどうぞ。ただし税徴収は、難しくなるでしょうね。そうすれば、必要な場所にお金を残しておくことも可能です。

コロナウイルスは使い勝手が良いんです。政府の狙いのために活用できます。ずっと私たちを追い出そうとしてましたし、店舗もどんどん閉まってます。一方で、高層ビルやオフィスビル、カクテルバーの類は新しいものがどんどん登場してます。その現状は公権力にとって有利なんですが、それがとても明白になってきました。

HAAi:私たちは業界として、いつでも団結して最後まで共に戦います。歴史を振り返ってみても、音楽に関わる人間は比較的粘り強いことがわかります。反旗を翻すときは必ずやってきますが、ここまでどん底に落ちてからになったのが残念です。

The Blessed Madonna:消えることはないですね。ただし、変わるでしょう。アングラになると思います。違法レイブが増え、危険で、税収にも繋がらない、無許可のイベントが増えると思います。それらのお金はブラックマーケットに流れ込み、イベントを訪れる人たちの安全性は保証されないでしょう。それから、人々は他の国に行くようになるでしょうね。ドル箱のイベントは、どこか他の場所に移ってしまいます。このように、2つのことが起きて、どちらも我が国のためにはならないでしょう。


Text_Seb Wheeler

 

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