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Bicep 【インタビュー】 「レコーディングして終わりではなく、ひとつの音楽を様々な形で存在させたい」

ロックダウン以降、「ダンスミュージック」はどこへ向かうのか。

Mixmag Japan | 30 January 2021

Bicep, Bicep アルバム, mixmag

© Photography by Khris Cowley

北アイルランドはベルファスト出身のエレクトロニック・ミュージックデュオ“Bicep”。自身の名前を冠したデビューアルバムから実に2年半、ついに待望のフルアルバムが完成した。その名も『Isles』。2008年に音楽ブログ「FeelMyBicep」を開設して以降、今や〈NINJA TUNE〉の筆頭エース的存在だ。2018年にロンドンのPrintworksで行われたギグの模様は、YouTubeで公開されて以来175万再生数を超えている(2021年1月時点)。そのうえ本作『Isles』は、現在UKのチャートでBring Me The Horizonと目下1位を争っているところだ。

彼らは常々「様々な音楽を聴く」と言っているが、そのスタンスは今も更新され続けているブログに由来するだろう。古今東西のアーティストのミックスや音源を紹介しており、韓国のソウルを拠点に活動するC’est Quiや、ロンドンの新鋭・Kassianらが本サイトにミックスを提供している。そのレンジの広さに裏打ちされるように、『Isles』は多面性に富んだ内容に仕上がった。それはジャンルだけにとどまらず、我々の音楽の聴き方・接し方にまで射程が伸びている。彼らが今作で問う“多面性”は、ロックダウンによってダンスフロアが閉鎖された現在において重要なテーマであるように思われる。

BICEP | APRICOTS


― COVID-19の影響を受けて中止になってしまいましたが、昨年の3月には1万人を動員するO2 Academy Brixton公演*が開催されるはずでした。チケットも完売しており、それはまさに前作『Bicep』の素晴らしさを物語っていると感じます。パンデミックの影響を考慮しないとすれば、前作の成功の要因は何だったと考えますか?

Bicep(以下、B): それは僕たちにも分かり難い。僕たちは、自分が好きなものに誠実であり続けることにフォーカスしただけなんだ。もう10年も一緒に作業しているから音楽のテイストは似てきているけれど、僕たちは今でも互いに自分自身のアイデアを持って来るようにしている。それに、2人ともベルファストとロンドンの両方から大きな影響を受けているから、それが音楽にユニークなフレーバーをもたらすのかもしれないね。

*O2 Academy Brixton公演: 2020年3月27日に予定されていたが、新型コロナウイルスの影響を受けて2021年9月10日にリスケジュールされた。

― 個人的に、前作に対してはあらゆる意味でレンジの広い印象を受けました。曲の細かいパーツを聴くと、オールドスクールなダンスミュージックからアイデア引っ張ってきているようにも感じられるのですが、全体のイメージが圧倒的に新しい。ジャンルで考えても、全方位に訴求しうる奇跡的な作品でした。

B: ありがとう。そんな素敵な評価をもらえて嬉しいよ。確かに僕たちはあらゆる音楽をかじっている。そしてキャリアを経てゆくうちに、それらの影響をもっと自分たちの音楽に取り入れることに心地よさを感じるようになったんだ。2人とも昔のアナログ・ハードウェア、そして80年代と90年代の音楽が大好きなんだけど、同時に新しいテクノロジーとアートも好きでね。音楽性とソングライティング面に多くの時間を費やしたけど、より“曲っぽくない形”を意識したんだ。

― これまでの長いツアーを経て、体得した感覚、新たな創作に繋がるインスピレーションはどんなものでしたか?

B: 会場のサイズや国によって演奏の仕方を変えられたのが良いインスピレーションになったね。優しく演奏した時もあれば、より緊張感のあるショーをやったりもした。あの経験は、今回のアルバムにも多くの影響をもたらしたと思う。今回は、アルバムのフォーマットをもっとホームリスニングな感じにしたかったから、ライブではそこにもっとエナジーを加えて、曲を進化させるつもりなんだ。僕たちはレコーディングして終わりではなく、ひとつの音楽を様々な形で存在させたいと思ってるから。

― 2000年代以降、「djhistory.com」のようなフォーラムや、SoundCloudとYouTubeに類するプラットフォーム、お二人が運営される「FeelMyBicep」のようなブログなど、インターネット上で新たな才能や作品が発掘されるようになりました。初期の「FeelMyBicep」はトレンドセッター的な役割を担っていましたが、時代の変化を受け、お二人の音楽の聴き方・探し方はどう変わりましたか?

B: 以前からオールドスクールな音楽を掘ってるけど、最近はそれが1950年代~1970年代といったさらに昔の音楽になってきた。僕たちは、歴史と共に音楽を調べるのが好きだからね。でも、それと共にモダンで新しい音楽にもより注目するようになった。エレクトロ・ミュージックの世界ではテクノロジーがかなり進化したし、そのおかげで、業界にとっては超エキサイティングな時代が訪れていると思う。僕らは、過去から影響を受けつつ未来に目を向けることを意識しているんだ。

― 様々な変化が起こるなか、今回のアルバム制作はいつ、どのように始まりましたか?

B: アルバムを作り始めたのは2019年の1月。150近くのデモの中からベストなものを選んで、それに磨きをかけたんだ。僕たちが使っているスタジオは、ソングライティングにおいてとても重要な場所でね。ジャムりながら曲を整えていくやり方に最適というか。音を感じるためには欠かせない。僕らはかなりの数のモジュラーシンセも使うんだ。90年代のサンプラーとギターペダルも。昔のぼやけた機材から生まれる音と、新しいものを混ぜ合わせるのが好きなんだよね。

― 今年春にリリースした「Atlas」は、トランシーなシンセサイザーとレイヴィーな声ネタ、ブレイクビーツが特徴的で、前作の流れを引き継いだメランコリックなアンセムです。どのようなアイデアから生まれた曲なのでしょうか?

B: その曲のコンセプトは、自分たちの前回のツアーで生まれた“強い高揚感”の精神を捉えることだった。そのエナジーを次回の作品に取り入れたくてたまらなかったんだ。だからそのトラックを書き始めたんだよ。

BICEP | ATLAS

― 「Aprictots」にもトランスの影響は見受けられますが、ブログを始めた時期のBICEPから考えると非常にユニークな要素だと感じます。お2人はトランスにどんな面白さを感じますか?

B: トランスには強烈さと落ち着きのコントラストがある。僕たちはアイルランドの民放ラジオでそれを聴きながら育ったから、トランスが入ってくるという進行は、僕らの潜在意識の中に根付いているものだったんだ。

― 「Saku」は、ガラージやジャングル、フットワークといったベースミュージックの要素が溶け合った、非常に今日的で『Isles』を象徴する内容だと思います。IDMやR&Bの影響も感じられ、さらにはボーカリストのClara La Sanをフィーチャーしていますよね。その多面性こそBicepらしさだと思うのですが、この曲はどのようなプロセスで作られたのでしょうか?

B: このトラックにはたくさんのバージョンがあって、Claraは多くを削ぎ落としたシンプルなデモから作業に参加したんだ。彼女は僕らがシンセを重ね合わせるようにヴォーカルをのせる。だから、一緒に作業するのはすごく自然だったし、相性がよかった。互いに異なるレイヤーにとりかかり、それを交換し合うという作業を何度も繰り返したんだ。すごくシンプルなドラムとサブ・ベースのデモトラックに彼女が自身のヴォーカル・パートを構築していった感じだね。

BICEP | SAKU (FEAT. CLARA LA SAN)

― 先ほどから仰っているように、今作はフロアを意識した作品というより、リスニング寄りで繊細さが際立った作品という印象を受けたのですが、COVID-19の影響も大きいのでしょうか? クラブがロックダウンしているなか、オーディエンスを入れた状態でのギグは困難な状況にありますが、お二人は現状をどのように捉えていらっしゃいますか?

B: アルバムのほとんどはパンデミックの前に書かれたものだから、コロナの影響は全くない。僕たちはこの作品をアルバムというよりは流動的な活動として考えているから、その要素をもったアルバムを作るということが今振り返ると大変だったかもしれない。“アルバム”というのはファーストステップであり、この活動のエンディングまでに僕たちは各曲を進化させ、願わくはショーのために、アルバムで最初に聴いたヴァージョンのフィーリングを残ししつつも何か新しい作品に変化させたいと思っているから。そういう意味で、僕たちは今回のアルバムをダンスフロアのための作品にしようとは思っていなかった。ライブのために4つ打ちよりアップテンポなヴァージョンを後から作ることを予想していたからね。

― そうしたサウンド面の変化、多彩な楽曲をどのようにアルバムにまとめたのでしょう? 『Isles』とアルバムタイトルに示唆されていますが、北アイルランド出身のバックグラウンドと作品の内容はお二人のなかでどのように繋がっていますか?

B: 今作では4つ打ちをやらないというのは早い段階から決めていたんだ。それが僕たちに大きな自由を与えてくれたし、同時に方向性を定めてくれたから、しっかりと集中することが出来た。多分、このアルバムでは、落ち着きと狂乱のバランスを実験的に表現することができたんじゃないかな。今作で僕たちが全体を通して感じるのはそれだね。『Isles』というタイトルは、イギリスとアイルランドで生活している僕たちの中間の視点と、その2つの場所それぞれがいかにハイブリッドなサウンドを形成するということにおいて影響を与えているかということを表しているんだ。

BICEP | SUNDIAL

― COVID-19のソーシャル・ディスタンスによって孤立が深まっていますが、個人的にBicepの音楽が持つ多層的な音楽性は現状に対するカウンターにもなりうるのかな、と。フロアで鳴るBicepのサウンドを聴けないのは残念ですが、2人が音楽に求め、あるいは託すものとは?

B: 今回のアルバムはかなり内省的だから、リスナーがひとりでも楽しめる作品になっていると思う。みんながヘッドフォンで楽しめるアルバムを意識していたし、ライブショーのためにそれらのトラックをクラブ・ヴァージョンにしたものをこれから作っていく予定だよ。家でも会場でも同じくらい楽しめるけど、違いが異なる世界観を持つようにしたいんだ。パンデミック以降、音楽はフラストレーションを吐き出すことができるアート作品として役に立てると思う。人々がそれによって変化を起こし、将来それを振り返ることが出来たらいいね。


Edit_Yuki Kawasaki
Translate_Miho Haraguchi

■ Bicep 『Isles』
Label: NINJA TUNE / Beat Records
国内盤CD Tracklist:
1. Atlas
2. Cazenove
3. Apricots
4. Saku (feat. Clara La San)
5. Lido
6. X (feat. Clara La San)
7. Rever (feat. Julia Kent)
8. Sundial
9. Fir
10. Hawk (feat. machìna)
[Bonus Tracks] 11. Light
12. Siena
13. Meli (I)
<商品詳細>
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11475

 

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