テクノシーンの様々な方面において多大な影響力を持つ、Freddy K。ヴァイナルオンリーのレーベル「KEY」のボスとしての顔も持っており、更にはアムステルダム拠点を構えるオンラインラジオステーション「Red Light Radio」でプレゼンターも務めている。
世界中の名だたるクラブやフェスティバルからもラブコールが絶えず、ベルリンのBerghainを中心に各所から招聘の声がかかる。Mixmag Japan編集部のメンバーも、先日オランダで開催されたADEでBlawanとのb2bを見てきた。
日本でも彼を信頼する声は非常に多く、今年は8月に東阪でギグを行った。初来日であったものの、その長いキャリアに裏打ちされたセンスとテクニックに魅せられるオーディエンスは多く、既に再演を望む声も多数聞こえてくる。日本語で公開されるインタビューも本稿が初となるが、激務の合間にも関わらず快く答えてくれた。
― まずはDJを始めたきっかけを教えて下さい。
Freddy K(以下、F): 1989年ごろにDJとしてのキャリアをスタートさせたんだ。僕はラジオが大好きで、実は当時はずっとヒップホップを聴いていたんだよ。友達の中にもDJがいて、そいつがヒップホップの熱心なファンでさ。DJに興味を持ち始めたのも彼の影響が強かった。今の僕が主戦場にしてるテクノに好みが移ったのはその後だったんだ。僕はローマで生まれ育ったんだけれど、あるラジオ番組にとことん惹かれてしまってね。「The Mad Show」っていうんだけど、この番組ではテクノがたくさんかかってたんだ。“どうやら自分はテクノが好きらしい”ってことに気付いたよ。90年代はひたすらレイヴまみれな生活を送ってた。
― 音楽を制作する上で、インスピレーションを受けるものはありますか?
F: レイヴに行くことと、ダンスフロアで経験することのすべてだな。DJを始めてからずいぶん経つけど、いまだに現場から学ぶことは多い。フロアのコミュニティと繋がることによって、尊敬や愛を感じることができるよ。僕にとってDJはコミュニケーション手段のひとつなんだ。音楽を通して人と通じ合えるのは素晴らしいよ。それが今も昔も変わらぬインスピレーションさ。
― バイナルオンリーのレーベル「KEY」についてお伺いしたいです。立ち上げた経緯と、“バイナルオンリー”をポリシーとする理由は何ですか?
F: さっきも話したように、僕がDJをやる最大の目的がコミュニティと繋がることなんだ。そのためにどうしても必要だったのがレーベルだった。繋がりたかったのはフロアで踊るオーディエンスだけじゃない。アーティスト同士の交流も持ちたかったんだ。そのためのレーベルだよ。「KEY」そのものがコミュニティになってくれれば満足さ。で、当然だけどそういう時に「やぁ、僕はDJなんだ。友達になろう!」と言うだけではダメなんだ。自分のことを相手に分かってもらう必要があるよね。それが僕の場合はバイナルレコードだったんだ。単純に好きなんだよ。実際に音を聴くまでに手間もかかる分、音楽を大事にしているような気になる。そういう面倒なこだわりに気付いてくれる人は、もうそれだけで友達だよ(笑)。
― 素敵だと思います。新譜も続々とリリースされていますが、新作のインフォについてもお聞かせください。
F: 本当に僕の好きな音楽しかリリースしてないから、トレンドなんてまったく無視してるよ。10月にはVela Uniform、BenalesのEPが出たし、12月にはBorder OneとCtrlsのEPをリリースする予定だ。Vela UniformのEPにはBlawanも参加しているし、僕としてもかなり充実していると感じるよ。
‐ 90年代からテクノに移行したと仰っていましたが、当時と比べて現在のシーンに変化はありますか? 今の状況を指して“90年代リヴァヴァル”と表現されることもありますが…。
F: 実際、音楽性も当時のそれと似てると思うよ。過去の制約を受けず、新しい音楽を生み出すことは難しい。技術的な話をすれば、マスタリングやミキシングは現在のほうが圧倒的に優れているけどね。もうひとつ当時と違う点を挙げるならば、やっぱりSNSかな。ファッションの道具になって、どんどん消費されている気がする。90年代はそこで鳴ってる音楽が好きで現場に行ったものだけど、今は音楽が手段化してるとは思う。マーケティングとお金が力を持ち始めたというか。…でもまぁ、結局のところテクノはテクノなんだけどね。僕はあの頃と変わらず、テクノが好きだからテクノをかけるよ。
Interview_Kimya Khayat
Edit_Yuki Kawasaki
【Freddy K】
Resident Advisor
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