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【インタビュー】 Gilles Peterson 「まだ誰も僕を知らない頃、Blueyだけが僕のラジオに出演してくれた」

ブリット・ファンクの伝道師が語る、これまでの足跡と現在

Mixmag Japan | 28 April 2021

STR4TA, STR4TA ジャイルス, Incognito, mixmag

Gilles PetersonとIncognitoのBlueyによる新プロジェクト、STR4TA(ストラータ)。2人が提示するブリット・ファンク最新型が詰め込まれたアルバム『Aspects』が絶賛発売中だ。「クラブジャズ」という概念を生み出し、今もなお屈指のトレンドセッターとして活躍するGillesと、当代最強のプレイヤー・Bluey。かつてはGillesが1990年に立ち上げたレーベル〈Talkin’ Loud〉でも深い関係にあった彼らが、このタイミングでユニットを組んだ。数多の才能ある若手が“UK Jazz”界隈から出てくる中、いよいよオリジネーターがプレイヤーとして登場する。STR4TAの足跡と現在地を辿るインタビュー、ここに公開。

なお、本稿の質問草案は、2019年にGilles Petersonとクラブジャズの聖地・Dingwallsで共演を果たした、沖野修也(Kyoto Jazz Massive)によるものである。

STR4TA – 「Aspects」


― まずは、このプロジェクトを結成するいきさつを教えて下さい。

Gilles Peterson(以下、G): まず、僕とBlueyの友情の始まりは昔々に遡る。僕がまだ少年だった頃、ラジオを配信していたんだ。裏庭で録音したものを流すような、実験的な番組をね。まだ16歳だったから、実家の裏庭だね。自分が好きなアーティストたちにゲスト出演してもらいたくて。もちろん、誰も僕のオファーに答えてくれなかった。僕の名前なんて誰も知らないし、当時はロンドンから西の方に遠く離れた町にいたから。でも、1人だけ出演を承諾してくれた人がいた。それがBlueyだよ。それで、Blueyが僕の実家にやってきたんだ。そして、彼を相手に人生初のインタビューをした。そこからすぐに友だちになったわけではないんだけど、僕はもちろん彼のことをずっと覚えていたし、それから7年ぐらい経って、僕がTalkin’ Loudを立ち上げてからまた縁が繋がったんだ。「Blueyはどうしてるのかな」と思って彼に連絡をして、Incognitoと契約することになった。通算で、彼らのアルバムを5、6枚リリースしたね。他にも色々なプロジェクトを一緒にやった。

それで、3、4年前、いやもっと前かな? Blueyと、「日本で一緒にアルバムを作ったら面白いんじゃない?」って話になったんだ。日本だよ! 僕たち2人とも、よく日本に行くからね。ジャパニーズ・ジャズ的な、ジャズ・ファンクのアルバムを作ろうってことになって。ただ、それは実現しなかったけどね。でも去年、僕の方から「仕切り直そうよ!」ってBlueyに持ちかけた。それが『Aspects』の始まりなんだ。

― 何故、今、 ブリティッシュ・ジャズ・ファンクだと思ったのでしょうか?

G: 僕の感覚として、みんながまたブリット・ファンクを求めているような気がしてたんだ。最近の音楽を聴いたりしていてね。僕のレーベルの〈Brownswood〉からデビューした、Yussef Kamaalというユニットがいるんだけど、彼らが出したアルバムもブリット・ファンクっぽいんだ。評価も高かった。若い子たちがそういうサウンドを求めてるんだね。それでBlueyに、ファンク・アルバムにしようって言ったんだ。彼のスタジオに色んなレコードを持って行って、「こういう感じでいこう」って作戦会議をした。僕がアルバムを作るにあたって一番気にするのは「クリーンになりすぎない」ようにすることなんだ。その点ブリット・ファンクは、アメリカン・ジャズやジャパニーズ・ジャズ・ファンクみたいに滑らかすぎず、もっと粗々しい。それが好きなんだ。なんていうか、ちょっと脆い感じの音にしたい。今回のアルバムは、そういうイメージから始まったんだ。

― Gillesさんが、Blueyをプロデュースするのではなく、一緒につくったユニットという理解でいいのでしょうか?

G: そうだね。これまでBlueyとやってきたプロジェクトでは、僕がA&Rのような役割の仕事をすることが多かった。彼と他のアーティストを繋げて、スタジオでは僕が彼らの補助的なことをするっていう。でも今回は、「一緒に1枚のアルバムを作ろう」っていうところからスタートした。だから、よりクリエイティブな関係性だったね。これまでもクリエイティブだったけど、今回はもっと大きな意味でクリエイティブだったんだ。

― 通常のプロデュースと今回のようなユニットでは取り組み方に違いはありますか?

G: 僕はラジオだったり、色んなことを掛け持ちしているから、例えば1ヶ月間スタジオに通い続けるなんてことになると、飽きちゃうんだよね。だから、色んなプロジェクトにちょこちょこ顔を出すぐらいが僕的にはちょうどいいんだ。Kanye West方式だね。色んなアーティストと別々のプロジェクトを同時進行して、それぞれに対して「それいいね」、とか「それはもっとこうした方がいい」とかって判断を下していく感じ。短期集中型だからだと思うんだけど。その点で言うと、Blueyとの仕事はストレスがないんだ。彼は僕のことをよく知っているから、僕のエネルギーや考えをそのまま音楽にして表現できる。30年とか40年とかの間ずっと付き合いを続けてるっていうのは、そういうことなんだね。

STR4TA – 「Rhythm In Your Mind」

― 具体的に曲がゼロの状態から出来上がるまでのプロセスを教えて頂けますか?(例えば収録曲の中から)

G: まずは僕がスタジオにレコードを持参して、それを聴きながらBlueyと意見交換して、リズムセクションをスタジオで作って、ジャムセッションをして、アイディアを構築していく。そこでできたアイディアを洗練させていくのは、大体僕の担当。朝2人で話し合ったら、次の日の午後にまた会うまでに、僕がアイディアを発展させておくんだ。そして演奏に関しては、僕がミュージシャンに指示をしながらレコーディングを進めていく。「この曲はもう終わったから、これ以上手を加えないで!」ってね。

今回のアルバムの曲に関しては、どれもローファイでライブ感を出したかったから、Blueyが歌ってくれて光栄だった。彼は普段から歌うけれど、いつもは他のアーティストのコピーのために歌うだけ。でも僕は、Blueyの歌声が大好きなんだよ!だから、今回は「絶対そのまま使うよ」って言って。だからどの曲も、ブルーイの生歌を収録したんだ。

― コロナ禍でのレコーディングに、メリット、デメリットはありますか?

G: レコーディングには2~3週間しかかからなかったんだけど、ちょうど終わった頃にロックダウンになってしまった。それで、まずはBlueyがミックスをして、それを僕が自分のスタジオで聴きながら、「これはあり、これはなし」っていう風に手を加えていった。実質、僕は午前1時間、午後1時間ぐらいしか作業しなかった(笑)。だから、今回のアルバムはロックダウン・ミックスだよ。Blueyとは徒歩10分圏内のご近所同士で、デメリットはあまりなかったな。

STR4TA – 「Give In To What Is Real」

― レコーディング中の興味深いエピソードがあれば教えて下さい。事故や偶然、何でも。

G: そうだなあ・・・。制作中、僕は毎日欠かさず自分のスタジオで作業していたんだけど、制作中の様子をFMで配信したりしていたんだ。それで、ロックダウンだから家族としか会えない関係で、19歳の息子にラジオのアシスタントをしてもらってたんだけど、Blueyが現行で作った曲を、10代の息子が聴くわけだよね。それがなんだか、パラレルワールドのような感覚でね。僕が10代の頃にIncognitoに出会ったように。それに、今回のアルバム制作では息子が大事な役割を果たしてくれたよ。彼なりの視点で意見を言ってくれたりしてね。Blueyだけではなく、息子とも一緒にアルバムを作ることができたなんて、僕にとっては魔法のような時間だったよ。

― Original British Jazz Funkのオリジネーターであり、かつてはTalkin’ Loudで何枚ものアルバムを一緒に作ったブルーイと再びタッグを組むというのはどんな気持ちでしたか?

G: 僕にとって、Blueyは最高のプロデューサーなんだ。さっき話したみたいに素晴らしいミュージシャンと仕事をする上での方法論というのがあれば、素晴らしいヴォーカルと仕事をする上での方法論というのもある。偉大なシンガーたちと仕事をして、彼らの最高のパフォーマンスを引き出すBlueyの様子を、これまで何年も見てきた。Joy Malcolmとか、Jocelyn Lorette Brownとか、そんなベストなシンガーたちのさらにベストを引き出すことができるんだ。Quincy Jonesしかり、優れたプロデューサーというのはそういうものなんだ。相手のベストを引き出せる。Blueyは、そんな優れたプロデューサーの1人だよ。本当に尊敬している。

― ミュージシャンと作業する面白さ、難しさがあればそれぞれ教えて下さい。

G: 今回のBlueyとのアルバム作りでは、僕は彼に「ストップ」って言う役目だった。素晴らしいミュージシャンと一緒に仕事をする時はいつもそうなんだけど、彼らは止めなければいつまででも演奏し続ける。だから、僕が「それぐらいで充分。ここでストップ!」って言わないといけない(笑)。「もうサックスはいいよ!」「そこでやめて!」ってね。Blueyに関して言えば、彼は僕のテイストを知っているから、僕らが落ち着くべきところを見つけるのはすごく簡単だったよ。

ミュージシャンと仕事をするには、感情的にすごく繊細なところまで理解できないといけない。まずは自分が仕事をするミュージシャンがどんな人間なのか、自分の音楽にどれぐらいの自信を持っているかを知っておかないといけないと思ってる。自信を持っているということは、コントロールができるということに繋がるからね。そして、一緒に挑戦的なことにも挑めるし、彼らのエゴを傷つけることだってできるということでもある。確固たる自信があれば、プライドが傷つくなんてことは気にしないから。ただ、難しいのはそのミュージシャンがまだ若いときだね。若い場合は、こちらが少し駆け引き上手にならないといけないから。気にしてあげないといけない。

そう考えると、良い悪いで語れる話ではないね。それぞれのミュージシャンの個性を理解できるプロデューサーが良いプロデューサーだから。そういうプロデューサーであれば、その作品に求めるものに向かってミュージシャンとコミュニケーションしつつ、彼らの最大限の魅力を引き出すことができる。どんなミュージシャンにも、ポジティブな要素は必ずあるわけだから。人生には陽と陰が必ずあるわけで。特に今はロックダウンで、自分に向き合う時間ができた人が多いと思う。スタジオでも一緒なんだ。全ては人であり、そのエネルギーであり、自分が自信を持って表現できることを見つけること。

STR4TA – 「After The Rain」

― Original British Jazz Funkのオリジネーターで今も現役で活動されているアーティストはBluey以外におられるんでしょうか?

G: もちろん。まずはAtmosfearのLester J. Batchelor。彼は素晴らしいミュージシャンだね。それから…ブリット・ファンクを形作ったバンドとして、代表格はFreeez、Atmosfear、Lights Of The World、Level 42の4組だね。彼らは僕が子どもの頃から聴き続けてきた、ブリット・ファンクを語る上で鍵となるバンドだ。Level 42に関しては、正統派から国際的に活躍するバンドに成長して、ブリット・ファンク界のデュラン・デュランとか、シンプル・マインズのようになった。しかもすごいのが、ベースのMark Kingはいまだにバリバリの現役なんだよ。以前、デビュー40周年とか50周年とかのライヴに行ったんだけど、すごかったよ(笑)。Markの次のアルバムではコラボしようっていう話をしてる。それからFreeezに関しては、彼らの『Southern Freeez』というアルバムがあるんだけど、その中で僕が以前ブラジルで行った「Sonzeira」というプロジェクトのフレーズを使ったんだ。僕の中の、ブラジルの原風景なんだけどね。ブリット・ファンク史上、彼らはとても重要だね。『Southern Freeez』は最近リイシュー版も出ていて、とても素晴らしいアルバムだよ。次はAtmosfearだけど、面白いのが彼らの「Dancing In Outer Space」っていう曲が世界的にとても有名になって、NYやシカゴなんかですごく有名なアメリカ人のDJたちがこぞってAtmosfearの曲を使うようになったってことなんだよね。それから、Light Of The WorldやAtmosfearの他に避けては通れないバンドとして、Hi-Tensionを上げたい。彼らはとても素晴らしいバンドだったんだよ。生々しくて、エキゾチックで、ラテンのバイブスも持っていて、「Hi Tension」や「British Hustle」といった最高の曲を出した。それに対して、「London Town」や「Time」、「Swingin’」なんかを出したLight Of The Worldはブリット・シーンでのEarth, Wind & Fireと言える存在だね。

Blueyの何がすごいかって、彼がそんなFreeezの初期メンバーだったっていうところだよ。もちろんLight Of The Worldとも繋がっていたし、Incognitoは言うまでもなく、Warriorsというバンドもやっていた。Warriorsも、本当に本当に素晴らしいバンドだよ。それぞれのグループは毛色が違うけれど、Blueyはそんな彼ら全てとコネクションを持っているんだ。すごいよね。

それから以前、僕がイベントを開催した時、カムバックをしてほしくてAtmosfearのLester J. Batchelorに出演をオファーしたことがあった。彼は今パリの〈Saint James〉というレーベルで面白いプロジェクトを色々と抱えているんだけど、思うのが、最近そういったレジェンドたちに若いアーティストやレーベルが目を付けて、コラボレーションしているということ。彼らをスタジオに招いたり、昔のテープを引っぱり出してきてリイシューをリリースしたりしている。僕がイベントにLester J. Batchelorを呼んだように、彼らをまたカムバックさせようという面白い動きが活発になってきているね。

― おととし一緒にDingwallsでDJをした時に、「生まれて初めてDJをした時にLight Of The WorldのTimeをかけたんだよ」と仰ってましたが、その初めてのDJの時に他にもブリティッシュ・ジャズ・ファンクをかけられていたら、それが何だったか判る範囲で教えて頂けませんか?

G: ありすぎて・・・。リストを渡したいくらいだよ(笑)。ブリット・ファンクはプロデューサーとして、そしてDJとしての僕の礎だからね。レコードのコレクションの数は、自信を持って自慢できる。僕が世界中の音楽を聴き漁り、ジャズやファンクの作品をプロデュースするようになった原点が、ブリット・ファンクなんだ。Linxというバンドの「You’re Lying」や、Second Image、Inversions、Powerlineなんかの曲をかけたね。もっともっと、たくさんあるよ。ブリット・ファンクはひとつの大きなムーブメントなんだ。その最前線にいるのがBlueyだよ。

ちょっと話が逸れちゃうんだけど、Blueyに教わったことのひとつに、ブリット・ファンクは2つの大きな柱で構成されているというものがある。ひとつは僕らみたいにDJセットでブリット・ファンクを使って新しいセットを生み出すシーン、そしてもうひとつが、たくさんの偉大なライブバンドたちが作り出す生の音楽のシーン。だから僕は、自分でイベントをやるときにはライブバンドによるライブも組み込むようにしているんだ。DJシーンはDJシーンで、ライブはライブだから。その2つのシーンをひとつのイベントに落し込むのが好きなんだ。DJがいて、バンドがいるという点ではアシッド・ジャズと似ているね。Jamiroquaiがいて、Brand New Heaviesがいて、Gallianoがいて…。そしてその10年前にはさらに色々なバンドがいて…っていう感じでね。

― 若いアーティストの活躍がめまぐるしいロンドンですが、大御所2人の化学反応で新しい音楽が誕生したことにとても感銘を受けています。おそらくそこには、Gillesさんの新しい音楽への興味と若者達との交流が大きく貢献しているとお思いますが、あなたの”感性の若さ”のお秘訣を教えて下さい。決して秘密にしないで!(笑)

G: 僕自身がそれを話すのは難しいな(笑)。秘訣は音楽なんじゃないかな。ロックダウンで生活は変わってしまったけど、僕にとっては音楽がセラピーなんだ。音楽にしかないパワーとエネルギーがある。それに、常に新しい音楽を聴いていないと気が済まないタチだしね。ノスタルジックなものも大好きだし、古いレコードを聴き返して昔のことを思い出すのも好きだけど、それとは違う新しいエネルギーも必要なんだ。新しいカルチャーのことを知って、そのカルチャーがどんな風に変化していくかを見ることがね。料理と一緒だよね。いつものごはんとパンとポテトと野菜も美味しいけど、創作料理も食べたい。音楽ばっかりに頼らないで、そろそろヨガとか始めないといけないのかもしれないけど(笑)、“Music Is The Healing Force Of The Universe”だからね。

― こういう状況で難しいとは思いますが、今後、STR4TAでライブは考えていたりしますか?

G: やるよ! リアルなライブに関しては、状況が改善次第すぐにでも。8月の「We Out Here Festival」には既にブッキングされているんだ。僕にとっては2回目のWe Out Here出演になるね。そろそろ準備を始めるよ。それから来年の話だけど、ツアーも考えている。僕のレーベルで契約をした、マンチェスターのバンドSecret Night Gangを帯同することになるかな。このSTR4TA×Secret Night Gangのツアーに関しては、本格的なものにするつもりで色々と考えてる。


Interview_沖野修也
Translate_滑石蒼
Edit_Yuki Kawasaki

■ STR4TA 『Aspects』
Release: 2021.03.26
Label: Brownswood Recordings
国内盤CD tracklist:
01. Aspects
02. Rhythm In Your Mind
03. Dance Desire
04. We Like It
05. Steppers Crusade
06. After The Rain
07. Give In To What Is Real
08. Kinshasa FC
09. Vision 9
10. Aspects (Demus Dub) [Bonus Track] <商品詳細>
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11666

 

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