アメリカはLAを拠点にするエレクトロニック・デュオ、Grey。Zeddから熱烈なサポートを受け、彼のツアーにも帯同し、リリースする曲が次々にチャートアクションを起こす。ここ日本でも単独公演を含むライブパフォーマンスを行っており、目下人気急上昇中だ。デュオを形成するマイケルとカイルは実の兄弟でもある。今回のインタビュー中も仲の良さが垣間見えるぐらい、友達のような関係性であった。そして話していくうちに明らかになったのは、2人とも生粋のweeb(日本風のオタク)であること。
近年変化が著しいダンスミュージックシーンとの向き合い方に加え、“いかに自分たちが日本を愛しているか”を語ってもらった。
‐ まず、カイルさんはこのデュオを始める前に別の音楽プロジェクトで活動していたそうですね。Greyを形成するに至った経緯を教えて下さい。
カイル: 高校生の時はメタルバンドを組んでいたよ。その後に「Singularity」っていうソロプロジェクトで活動していた。Singularityの頃は既に今みたいなエレクトロニックミュージックをやっていたよ。スタジオを借りるお金もなかったから、ソングライティングに関してはその時独学で習得したんだ。Greyを結成したのは2015年の時だね。
‐ マイケルさんもロックがルーツにあるんですか?
マイケル: そうだね。ただ僕の場合はもっと幅広かった。音楽に目覚めたきっかけはプログレとかメタルだったけど、その後にヒップホップも聴くようになった。
‐ お2人の曲を聴いていてもメタルやロックは反映されているように感じました。僕があなた方を認識したのはKaskadeの「Disarm You ft. Ilsey (Grey Remix)」を聴いてからなんですけど、この曲のドロップにはロックのマナーが投影されているように思います。
マイケル: そうだね。僕らも好きなRemixだな。
カイル: Remixを手掛ける時はまったく新しい曲を作るつもりでやってるから、自分たちの好みが大いに反映されていると思う。
‐ …すいません。初っ端から話の腰を折ってしまうんですが、めちゃくちゃ(マイケルの)ピアスかっこいいですね。
マイケル: あざっす(日本語)。
‐ 何のモチーフなんですか?
マイケル: 刀だね。僕は「NARUTO」が大好きなんだけど、特に波風ミナトってキャラクターがお気に入りで。細かいことを言うと、この刀は彼にインスパイアされたものだよ。柄の部分にはGreyのロゴが入ってる。
‐ ミナトを選ぶあたり歴史あるNARUTOファンですね…。Greyのロゴしかり、VJの演出しかり、あなた方のパフォーマンスには随所にアジアの影を感じます。お2人が昨年2018年のZeddの来日公演に出演してらっしゃった時、僕はVJの映像を見ながら「ブレードランナー」を思い出してました。
マイケル: 特に日本のポップカルチャーの影響はかなりデカいよ。僕なんかは日本のアニメを観ながら育ったからね。ずっと日本には来たかったし、実際に来てみて“住みたい”とすら思ったよ。僕らから見ると日本は未来的なんだ。
カイル: まさにサイバーパンクだよね。僕らのパフォーマンスを見て「ブレードランナー」を思い浮かべる解釈は、本当にその通りだと思う。
‐ Zeddも「ゼルダの伝説」のテーマ曲をRemixしてますが、あなたがたの世代にとっては、Weebなカルチャーをクールに解釈することは普通なんですか?
カイル: Zeddはかなりゲーマーだもん(笑)。少し前に「リーグ・オブ・レジェンド」の曲もやってたし。
マイケル: 僕らが育ってきた文化だから、どんな形であってもそれに貢献できるのは嬉しいもんだよ。僕は常々思ってるんだけど、もはやオタクは蔑まれる対象じゃないんだ。
カイル: だってさ、スーパーボウルを観る人の数と、Twitchで他人がやってるゲームを観る人の数がほとんど一緒なんだぜ? 最高にクールだろ。
‐ 今までどんなゲームをプレイされました?
マイケル: 一番ハマったのはスマブラかなぁ…。もちろんオリジナル(Nintendo 64)のほうね! 最近だと「Overwatch」シリーズ。僕よりもカイルのほうが上手だよ。
カイル: 「Overwacth」は全米で40位ぐらいにランクインしたことがある(笑)。
‐ そういうオタクカルチャーの啓蒙を万人規模で最初に始めたのって、まさしくUltraやTomorrowlandのメインステージに立つプロデューサーでしたよね。Zeddに限らず、ポーター・ロビンソンとか、Slushiiとか…。日本人ではなかった。
マイケル: そもそも僕らが物心着いた頃って、ゲームに対してそこまで悪いイメージがなかったんだよ。
カイル: うん、スタートから違うかも。オタクカルチャーに限らず、少数派の文化って始まりの段階では批判されるものじゃない? 僕らがゲームに触れた当時は、既にその段階にはなかったんだと思う。ゲームやアニメに対する後ろめたさは、オタクカルチャーを生み出した日本独特の苦しみな気がするな。
‐ オタクへのステレオタイプが崩された影響は、我々日本人にも大きく作用していると思います。
カイル: 外圧がかかって物事が前に進む場合は結構あるよね。まぁ、必ずしもポジティブな方向に働くとは限らないけど…。僕らもEDMって言葉が嫌いだった。“EDM”って、まさにステレオタイプに落とし込むフレーズで、本当に煩わしいものだったよ。元々は“コンピューターで作られた音楽”ぐらい幅広い括りだったのに、今やEDMと聞くとみんなが想像するサウンドは大体同じだ。
マイケル: いわゆる“EDM”って2010年前後の音楽を指すと思うんだけど、その頃とはもう全然違うんだよ。BPMにこだわったりせずに、自由に音楽を作ってる。それでも未だにEDMって言葉に回収されてしまうことがあるんだ。
‐ 言葉がアーティストを縛ってしまうってことですね。お2人も含めて、最近ではDJの形態を採らず、Live Setを採用するケースが増えてきました。そのような偏見に対抗する意図もあるのでしょうか?
Zedd, Maren Morris, Grey – 『The Middle』
カイル: 間違いなくあるだろうね。ただし人の認識を大きく変化させることは難しくて、なかなかこちらの意図が伝わらないんだ。基本的に人は、予想外の事が起きてほしくないからね。僕らがLive Setをステージ上で行う時、その様子をスナップチャットに撮って「なんでコイツはDJブースにギターを持ち込むんだ?(笑)」みたいことを書く連中もいるんだよ! 自分の考えにそぐわないからと言って、自分の想像の範疇にアーティストを追いやるのは健康的じゃないと思う。特定の枠に入れずに、自分たちの音楽を評価して欲しい。
‐ 最近のGreyの曲もそういう意図で作られてませんか? フェスのメインステージだけじゃなくて、たとえばベッドルームで寝る前に聴いてもエモーショナルに感じられます。
マイケル: その通りだよ!「Want You Back」以降はそういう傾向が強いと思う。えーと、誰だっけ?“Morning to Club”って言った人。
カイル: あー、そんな言葉あったね。僕も誰が言ったかは忘れちゃった。ある人が「朝食からクラブまで」って言ってたんだ。つまり、“朝食からクラブに行く間のどの時間帯で聴いても素晴らしい”って意味でさ。それこそが良い曲の定義じゃないかって。良い言葉だよね。
マイケル: 僕らもそういうスタンスを崩さずに、純粋に良い曲を作り続けたい。
最新シングル「Grey Area feat Sofia Carson」配信中!
Interview_Yuki Kawasaki
Photography_Reiji Yamasaki
Grey
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