ニューヨークのジュリアード音楽院で学位習得に励んでいた、Francesco Tristano(フランチェスコ・トリスターノ)。バッハの新たな解釈を探求すべく、彼は勉学に精を出していた。そんな日のある夜、街のクラブでテクノとハウスに出会う。その後、彼はMixmagの読者にはもはや説明不要のアンセム「Strings of Life」をピアノ1台で表現し、全音楽シーンに衝撃を与えたのだった。それからも、彼はクラブカルチャーとクラシックを繋ぐ存在として、異彩を放ち続けている。表参道のVENTでのLive Setを間近に控えた今、フランチェスコに直前インタビューを行った。
Francesco Tristano – 『Strings Of Life』
エレクトロニック・ミュージックとの出会いは、くだんの一夜よりも遥か昔にさかのぼる。
「Daft Punkの『Around The World』が、この手の音楽との最初の出会いだったんだ。当時の僕は15歳ぐらいだったかな。今でも大きなインスピレーションとして残ってるよ。あと母親の影響も大きいな。母はバロック音楽のフリークだったんだけど、70年代のシンセの音も好きだったんだ。そういう多面的な考え方や嗜好は、かなり影響されたね」。
そう前置きしたうえで、フランチェスコは自身のルーツを語り始めた。
「子供の頃は絵を描くことも大好きだったよ。僕がミュージシャンになりたいと思うようになったのは、11歳か12歳の頃だった。そのあたりで僕は絵を描くことから、音楽へ時間を割くようになっていったんだ。当時はジャズにも関心があったから、自分がクラシックとジャズのどちらをやりたいのか正確にはわからなかった。それでまた面白いことに、僕がまだ6歳か7歳の時にピアノを弾いている写真があるんだけど、僕の周りにはシンセサイザーが置かれてるんだよ。最近の僕のセットアップと一緒。あの頃から僕の未来は決まっていたのかもね」。
デリック・メイだけでなく、彼は数多のアーティストと共演と共作を重ねてきた。カール・クレイグにジェフ・ミルズ、Murcof…。テクノの重鎮からも信頼を勝ち得、権威あるアワードにも名を連ねている。けれども、あくまでその眼差しは未来に向いていた。
「僕は過去よりも未来について目を向けたいタイプの人間なんだ。常に新しいことをやっていたい。今の僕が本当にやりたいことはクラブの中でピアノを弾くことなんだけど、それってやっぱり普通じゃないからなんだよね。まさしくそれをVENTで見せられるんだけど、ありがたい話だよ。完全なLive Setさ。88個鍵盤がついているYAMAHAのキーボードと、シンセサイザーを使う予定だよ」。
フランチェスコの音楽をひとことで言い表すのはなかなか難しい。テクノとクラシックを繋げるようなアプローチは今ではそこまで珍しくはないが、彼の場合似たタイプのアーティストがいない。ピアノとクラシックの素養が、何よりも先にある。
「自分の音楽をひとことで…。難しいな(笑)。自分の音楽を自分で語るのは、人の作品を評価するよりも難しいかもしれない。僕じゃない人から聞いたほうが正しい表現で語ってくれるかもしれないよ。それでも僕が自分の音楽を説明するとすれば、そうだな…。“旋律”じゃないかな。グルーヴとリズムに気を配りながら、ピアノに“歌わせる”ように心がけている。僕の音楽はリズムと旋律の組み合わせが肝心なんだよ。テクノが僕の人生に欠かせないのはそのためだろうね。ひとことで表現するとすれば“Piano in Space”かな」。
Francesco Tristano – 『Dminorloop』
「僕はよく“テクノとクラシックをクロスオーヴァーした”とか言われるんだけど、まったくそうじゃない。確かに僕は、アコースティックな楽器とエレクトロニクスを組み合わせることが好きだ。でも本当の意味で“クロスオーヴァーする”ってことは、まったく違う方法で音を鳴らさなきゃいけないってことだと思う。でもピアノはひとつの楽器でそれが出来るんだよ。“クロスオーヴァー”なんかしなくともね。これさえあれば、リズム、メロディ、パーカッションを演奏できる。更にはたくさんのエフェクトがあり、いくつかトリックを使うと、シンセサイザーのようにだってなれるんだ。だから僕は、ピアノをシンセサイザーのように解釈しているよ。ダンスミュージックにとって、ピアノは基本中の基本なのさ。クロスオーヴァーしたというよりも、“ピアノは先にあったもの”なんだ」。
昨年ジェフ・ミルズにインタビューしたときのことを思い出す。解釈が非凡で、我々の想像をすっと超えてくる感じ。「音楽」という現象を、長い時間軸と広いスケールで捉えている。
「でも基本的に僕のヒーローはバッハだよ。僕の音楽の根幹。バッハは1750年代に亡くなったけど、彼の音楽はいまだにフレッシュで、今の時代との関連性も高いと思う。彼の作品こそ、時間とジャンルを超越しているよ。僕にとって彼の音楽は常にホームさ」。
Francesco Tristano – 『Aria BWV 988 (Bach)』
日本との関係についても話が及んだ。彼の初来日は2010年であったが、そこからは頻繁に日本に来ており、今や制作も東京で行うほどだ。
「日本の文化、人々、そして食を深く愛しているよ。実際、次に出るアルバムも日本でレコーディングしたものなんだ。東京の街からインスピレーションを受けたよ。伝統と現代性が合わさっていて、僕にはそれが大変魅力的に見える。2017年に坂本龍一と共演できたのも素晴らしい経験だったな。寿司やラーメンも好きでね。お気に入りの寿司屋の名前は教えないよ(笑)。その店はミシュランの星も断ったみたいなんだ。ラーメン?新宿の『桂花ラーメン』は最高だよね」。
Interview_Miyuki Murakami
Edit_Yuki Kawasaki
■ Francesco Tristano – Live –
2月15日(金)
OPEN:23:00
@VENT
DOOR:¥3,500 / FB discount:¥3,000 ADVANCED TICKET:¥2,500
=ROOM1=
Francesco Tristano (Transmat) – Live –
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※VENTでは、20歳未満の方や、写真付身分証明書をお持ちでない方のご入場はお断りさせて頂い ております。ご来場の際は、必ず写真付身分証明書をお持ち下さいます様、宜しくお願い致します。 尚、サンダル類でのご入場はお断りさせていただきます。予めご了承下さい。
※Must be 20 or over with Photo ID to enter. Also, sandals are not accepted in any case. Thank you for your cooperation.
<イベント詳細>
http://vent-tokyo.net/schedule/francesco-tristano/
<Facebookイベントページ>
https://www.facebook.com/events/369110293640806/
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