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LONG INTERVIEW:Floating Points「今この瞬間に多大な苦悩を抱えている国が数え切れないほどある」

“原点回帰”によって手に入れた最高到達点や、如何に。

Mixmag Japan | 13 October 2019

Floating Points

今年の8月にサマーソニック深夜の部「NF in Midnight」に出演したばかりのFloating Points(ライブレポートはコチラ)。ディスコライクなDJ Setでフロアを大いに沸かせた彼が、間もなく新作アルバム『Crush』をリリースする。「初期衝動を取り戻して制作した」と語られる本作は、彼のこれまでのキャリアの中でも最高傑作と噂されるほどだ。

本作の発売日は10月18日(金)と、もう間もなくだが、このタイミングでインタビューが届いた。“原点回帰”によって彼が到達した境地やいかに。


― 『Crush』は2枚目のアルバムで、4年前の『Elaenia』以来となります。個々のトラックを作っていくのではなく、アルバムを制作することにした理由は何でしょう? 本作の12のトラックを結びつけるアイデアとは、どのようなものですか?

Floating Points(以下、F) 自分としてはひとかたまりの作品を作っていたと感じている。曲作りを始めたとき、ずっと追求していた美意識がそこにはあって、それをさらに追求していきたいと思った。そのためにはアルバムという形式が適しているんだと思う。美意識をより大きく進化させることができるから。僕にとっては……個々のトラックに注目するより、作品の集合として見ることに意味があるんだ。

― ここであなたがまとめ上げようとした美意識やアイデアとはどのようなものでしょうか?

F サウンド面に関してやっていたのは、初めにスタジオ内の技術的な仕組みを作ることだった。機材の設定を見直して、一度にすべてのことができるようにしたんだ。マルチトラックで別々にレコーディングするのではなく、すべてを同時に動かせるようにした。そして自分はキーボードで何か弾いたり、ループ音を鳴らしたりする。レコーディングしておいたループをシンプルなオーディオで鳴らすのも、MIDIデータを管理して生み出されたサウンドをループさせるのも、どちらでもできた。だからこそ、基本的にはすごく迅速にトラックを組み上げることができて、おかげで今回のレコーディングでは、スタジオ内での作業が本当に短時間で済んだ。その代わり、スタジオそのものを整えて、アルバムを制作するのには長い時間がかかった。物理的な制作過程ではなく、仕組みを理解することに時間を使った。機材の扱いを学んで、これまで自分がひとつの楽器であるという前提で動かしてきたものが複数の楽器の集合体であることを意識して、それがどう作動するかを学んだ。本当に長い道のりだった。

― 『Crush』で使われる楽器はバラエティーに富んでいて、アコースティック(アルバムで最初に聞こえるのはストリングスの音です)もエレクトロニックも両方あります。その中で鍵になる楽器のひとつが――以前と同じように――ブックラの200eモジュラーシンセサイザーです。オリジナルは70年代に開発されたものですね。この楽器のどのようなところに惹かれますか?

Floating Points – 「Anasickmodular」

F モジュラーシンセサイザーだね。どういう楽器かと言うと……回路基板をまとめてパネルに設置してある。パネルにはソケットがいくつもついていて、そこに配線を接続できるようになっている。電話の交換機みたいな感じだ。そうして、個々のモジュールに互いの情報をやりとりさせるんだ。モジュールのひとつに単純なオシレーターがあって、これは単一の音色を発生させる。だけど、その音色のピッチを変えるには、一定の電圧を掛けて変化させなくてはいけない。そんなふうに、それぞれの機械はすごく単純なものなんだけど、コードをいくつも接続したり、複数のオシレーターで音を合成したりと、あらゆる難解な設定を与えることができる。だからこそ、こんなにも優れた複雑なサウンドとその組み合わせ、そして音楽作品をこの機械から生み出せる。今、話に出たブックラというブランドはカリフォルニア州バークレーで誕生したものだ。製品のすべてをひとつの会社が製造している。モジュール同士を一緒に動かしたときの相性がすごくいい。そうしたモジュールが内蔵されたシンセサイザーがさまざまあって、それを僕はもう12年愛用している。10年とか12年もすると、自分はこの楽器のことを本当によく理解しているような気になる。だけど、この楽器にはとても多くの可能性がある。それこそ何百万通りもの可能性が。この楽器の持つ可能性を探求すると、常に新しい刺激が生まれてくる。こういった楽器を、ピアノやクラリネットやバイオリンと同列に扱うのは、適当ではない気がする。多くの人が、この楽器を学んで使いこなすのに生涯をかけている。これはもうまったく新しい別の楽器じゃないかな。どこまで行っても複雑なんだ。修得するには長い時間がかかるし、この楽器に関しては、僕もまだ表面をなぞっただけのような気がしている。このシンセを使っていた作曲家が何人かいる。スザンヌ・チアーニ、モートン・サボトニック、それから亡くなったチャールズ・コーエン。僕が思うに、この人たちは自分の作品でこの楽器を見事に使いこなしていた。だから僕は彼らの生徒なんだと思っている。

― ブックラを使用した最初の作曲家のひとりが、1960年代後半のモートン・サボトニックでした。彼の作品が、あなたが10代のころ最初に触れたエレクトロニックミュージックのひとつだったのでしょうか? だとすると、どういった経緯がありましたか?

F 僕がエレクトロニックミュージックに触れたきっかけが、その方面からだった。その方面、つまり古典的な面からだ。その後に生まれたテクノのレコードではなく。音楽制作に関する影響を受けたのも、テクノからじゃないんだ。僕がジェフ・ミルズやデトロイトの音楽シーンに触れるようになったのは、モートン・サボトニック経由だった。そういうサウンドを聴いてみようと思った経緯としては、相当珍しいきっかけだろうね。ただ、そのころ聴いていたアンダーグラウンド・レジスタンスのレコードのサウンドは、僕にはモートン・サボトニックからの系統を追っているように感じられた。テクノを聴くのはとても刺激的な体験で、それはこういったレコード自体がかなり思索的だったからだと思う。ああいう音楽は、明らかにとても直接的で強い印象を与える。そこには大きなエネルギーがある。だけど、古典的な方面からこのジャンルを聴いてきた経験からすると、そこにはモートン・サボトニックの断片が聴き取れる。彼が用いていたノイズが多くのテクノで使われていて、後になって興味を持つようになった。それで僕の頭の中では、そうした音楽はどれも同じ世界にあるものとして捉えている。

― 『Crush』の楽曲は得てして以前より荒削りで激しく、より多くの電子音を導入しているように聞こえます。これは、『Reflections – Mojave Desert』(2017年)のライブ録音や、近年あなたがバンドと共に鳴らしてきたサウンドとは、明確な対比をなしています。これまでとやり方を変えて、再び自分だけで作品を作りたいと思った理由は何でしょう?

F 『Elaenia』は自分のスタジオで、自分だけで、アルバムを作るということで始めたプロジェクトだった。楽曲にはドラムも入っていたし、ギターも入っていた。最初のデモ音源では全部の楽器を自分で演奏していて、だからあのアルバムは、今回の『Crush』と似たプロセスを経て生まれたものだ。僕の叩くドラムは、それはひどいもので、ギター演奏も同じだ。だから、リリースが近づくのに合わせて、そういったパートはプロの演奏に置き換えていった。そういった要素があったから、バンド形式でツアーをやるっていうのは、僕にとって理に適っていた。初めは、バンド要素を兼ね備えたエレクトロニックプロジェクトとしてスタートした。ストリングスや管楽器といったものも、プロジェクトには含まれていたんだ。それが少しずつ縮小していって、世界中をツアーで巡った4人編成に収まった。アメリカは全部で3周した。ツアーをするというロックバンドの文化に身を置くことで、僕たちはロックバンドになったんだ。必ずしも、自分がどうしたいかってことを考えていたわけじゃない。それで、ツアーの最後にコーチェラ・フェスに出演した。あれは自分たちにとってかなり大きなステージだった。ツアーをやるのはそこまでにして、僕はスタジオに戻り、もう一度ひとりきりになった。しばらくバンドのメンバーとは別でいいと思っている自分に納得がいった。自分たちは少し離れる必要があったんだと思う。そこで再び自分だけでエレクトロニックの音楽を作り始めて、たくさんのプログラムを打ち込んだ。他の人たちと一緒にやるのではないということで、音楽制作に対して今までとは違う向き合い方をした。その経験が、なぜ自分にはバンドが必要だったかという問いに答えを与えてくれた。でも確かに荒削りだ。このレコードが前よりも荒削りなのは、『Elaenia』よりも直接的な手段で作られたからだと思う。特定の何かを作ろうとしていたわけじゃない。『Elaenia』のときはとても長い制作過程があったんだけど、さっき言ったように、今回はそれをひとりきりで再現した。だから、このアルバムはとても早く作れたし、即興でいろいろやっている。このレコードでリスナーが耳にするサウンドの多くは、単なるステレオ音源のファイルであって、その場その場でミックスしていっただけのものなんだ。後からミキシングを施したことはない。ライブパフォーマンス以上のミキシングはできないってことで、ミックス中には興奮しながらディストーションのエフェクトをこれでもかと加えた。そこはやりすぎた部分があるかもしれない。まあ、より直接的なサウンドを完成させようとしていたからこうなったんだけど。

― アルバムに『Crush』というタイトルを選んだ理由は何でしょう?

F そのときは、ある感覚が生じていたように思う。あくまで僕の個人的な感覚であって、政治的な意図はないんだけど、世の中を統治するやり方に思いやりが明らかに欠如しているということを人類全体が認識していて、それは全世界に広がっている。イギリスもアメリカもブラジルも関係なく、今この瞬間に多大な苦悩を抱えている国が数え切れないほどある。僕は以前よりもニュースを見たり読んだりするようになっていた。ニュースを詳しく知ろうと心がけるようになったのは、こうして不安を覚えることに気が滅入っていたからだ。そして、何か希望を見出したいとか、何かいいニュースを読みたいっていう願いが常にあったからだ。ちょうど先週、ボリス・ジョンソン首相が議会を閉会したけど、これはまたしても状況を悪化させることにしかならない。そして社会の良識の問題がある。これはもう民主主義とは必ずしも関係がなくて、僕たちが他の人たちと互いに良識を持って接するにはどうあるべきかっていう本質の問題でしかない。僕は多くの問題について、異なる意見には敬意を払いたいと思っている。イギリスでは、EU離脱(ブレグジット)が間違いなく巨大な問題で、事実、ソーシャルメディアが大きな武器となっていく過程があったり、虚偽の情報が一般に広がったりしたことで、民主主義そのもののあり方に大きなダメージを与えたと思う。もはやこれは社会の問題であって、政治の問題ではない。それを考えると自分でも信じられないくらい悲しくなって、そのときこの『Crush』というタイトルが、ゆっくりと増大していく社会への圧力を表していて、これこそ自分がレコーディングしながら表現したかったテーマなんだと思った。スタジオにいるときは、いろいろなニュースにどっぷり浸かっていた。そうしていると激しい感情が断続的に届いてくるのかもしれない。スタジオ内のあらゆる設備は厳格に制御されていた。扱うべき設備の幅広さからすると、僕が統率を緩めれば、まったく制御が利かなくなりかねない。ただ、あえて統率を緩めることで、レコードが多少油断ならないものになるという面があると思う。例えば「Environments」というトラックが顕著だ。「Environments」は初めとても慎重に手を着けたんだけど、最後は完璧な熱狂の中で終えられた。1回のセッション、1回のレコーディングで終わらせたんだ。僕にとって、流れに任せるというのはすごく自然なことだと思える。終わりが近づくにつれ、すべてがばらばらになって混沌になっていくんだ。

― 今回のレコードを制作するために、数ヶ月間という長い間、DJ活動を中断しましたね。DJ活動はあなたの作品にどのような影響を与えていますか? また、逆はどうでしょうか?

F そんなに経っていたんだって実感がなくて、不思議な気がする。だけど、クラブに出掛けていって、別の誰かがDJをやるのを聴きたくなることはある。それこそ一番興奮する時間だ。コール・スーパーのDJを聴きに行ったら、会場に着いてすぐに帰ってしまうだろう。でもこれはいいことなんだ。聴いている音楽で何かすごいことが起こっていたら、すごく興奮して自分もスタジオに入りたくなって、すぐに帰らないとってなるからね。だから僕がクラブに長居しすぎていたら、それはよくないことかもしれない。僕にとって、スタジオに入りたくなったっていうのは、クラブに行って心から楽しんだときに生まれる感情だ。問題は、もっとその場にいたいっていう気持ちと、スタジオに行きたいっていう気持ちが同時に生まれてせめぎ合うことかな。大抵はスタジオが勝つんだけど。そういう時間があることで、刺激を受けて音楽を作りたくなったり、新しいことを試したくなるのは間違いない。自分自身のDJ活動が、自分の音楽制作に影響を与えているとは必ずしも思わないけど。

― あなたは18才からずっと、他の国を旅しながら現地でレコードを買い続けていますね。今もまだ、ツアーの合間に古いアナログレコードを探し求めているのでしょうか? 最近、何か印象的な掘り出し物はありましたか?

F 18才のころから、しょっちゅうアメリカまで往復の旅をしていた。シカゴによく行った。国から学生ローンが下りると、決まってシカゴまでの一番安い航空券を買って、3日か4日の予定で現地に向かった。とりわけ、ピーボディーズっていうショップをよく訪れた。それこそ何百枚っていう単位でレコードを買うものだから、スーツケースとかバックパックとかあらゆる鞄に無理に押し込まなくてはいけなかった。飛行機に搭乗するときは、荷物がちっとも重たくないような振りをした。船便で家まで送ることもあった。多大な労力がかかっても向こうに行く価値が絶対にあるのは、この目的のためだけじゃなくて、現地に行くことで愛するものにたくさん出会えて、レコードショップに関する知識もたくさん得られるというのがあるからだ。そこで働いている人は、自分たちが販売する音楽に深い関心を寄せていて、コンピューターのアルゴリズムでは得ることができない提案をしてくれる。アルゴリズムとは、連想によって運用されるものだから。他の誰かがプレイリストにアルゴリズムを組み込めば、気に入るものができるかもしれないから、意味があるのは確かだ。ただ、実際に僕もアルゴリズムから見事な提案をしてもらうことはあるんだけど、大抵それは少し遅れていて、結局アルゴリズムを実行するのに人間の力を借りなくてはならない。つまり、僕がレコードショップを好きなのは、色んなものに興味を抱かせてくれるからなんだ。最近の掘り出し物といえば、日本に行くと毎回びっくりするようなレコードに出会える。ワゴンセールの格安品にも掘り出し物は眠っている。ファイルーズっていうレバノンの歌手のレコードがあるんだ。僕の解釈では、彼女はレバノンの音楽業界最大のスターだと思う。楽曲のアレンジはすべて息子が担っている。『Maarifti Feek』というタイトルのアルバムがあって、それがとにかく美しい。大阪にあるリベレーション・タイムというショップで手に入れたんだ。というわけで、これが最近手に入れた中で、本当に感動したレコードだった。アレンジが美しいからね。そして彼女の歌声も美しい。

― 4年前に、アナログ盤専門で過去作の復刻を中心に手掛けるレーベル、Melodies Internationalを立ち上げたんですよね。どうして、これをやりたいとなったのでしょう?

F その通りだ。ただ、Melodiesはデジタル音源も扱っているよ。僕たちはとにかく民主的な手段でレコードを入手できるようにしたかった。ラジオ番組をやったりDJをやったりしている中で、僕にはひとつ実感したことがある。僕自身もそれから多くの友人たちも、ただ純粋に音楽をやっているだけなんだけど、それが流通するレコード価格の硬直化に荷担することになっているんじゃないかっていう罪の意識を持っている。そうやってレコードの価値を実際以上によく見せているのかもしれないし、これは例えば音楽を求める18才の若者にとっても、よくないことだと思う。そしてレコードの値段は、いきなり入手不可能なほどに釣り上がることがある。だから僕たちは、オリジナル盤のアーティストを捜し出して承認を得るために努力をしている。復刻に当たって、ファン向けの小冊子をつけて、その内容を辿れば作品周辺の詳しい背景を知ることができると考えた。リリース当時、大ヒットを記録しなかったのはなぜか? 現在そのアーティストはどうしているのか? このレコードの裏にあったアイデアとはどんなものなのか? そのためにインタビューを敢行した。今僕たちがやっているのとまったく同じように。僕はアーティストたちからその音楽について話を聞いて、それを文章にまとめて、レコードに同梱する小冊子に載せた。これでリスナーにレコードの背景を伝えられる。それから販売するレコードの値段は、7.99ドル程度に抑えた。700ドルなんかにするわけにはいかない。この事業はとても有益な経験になっている。何しろ関わった誰もが勝者なのだから。オリジナルを作ったアーティストたちも勝者になれる。唯一の敗者は、レコードを転売する連中だけだと思うよ。

― 今秋、あなたは初めて大規模なソロツアーを行います。映像面に関して、ハミル・インダストリーズという2人組と協力をしていますね。どのようにして音楽にぴったり合った映像を作っているのでしょう?

F 彼らはバルセロナで活動していて、すごく仲良くしている。なんだかんだで、ほぼ毎日連絡を取っているよ。大抵、何かが生まれるときは、自分たちが接しているテクノロジーに刺激を受けるところから始まっている。創造的なアイデアの原型のようなものがそこにある。僕たちが作る映像はビデオとは違う。写真でもない。言わば、リアルタイムで画像を生成するやり方だ。使用しているのは単純な技術だけど、その組み合わせ方が面白いんだ。僕たちはひとつの泡をフィルム代わりに使う。それをステージの脇で実演する。目的に合った液体を使って、そして泡の膜を張る……それからマクロレンズを使って、泡の表面を至近距離から接写する。また、泡の周りを囲むようにして、圧電気を利用した小型装置を並べて、それが泡の表面にかすかな空気を吹き付ける重要な役目を果たす。半球形の泡を割ってしまわないように、それでいて小さな波紋を作り出せるように加減しなくてはいけない。これらの装置を起動させるのがブックラだ。ブックラを使うのは、このシンセサイザーが電流に働きかけるからだ。電圧を変動させるような感じかな。とにかくとても単純な仕組みで、ただ空気を吹き出す装置に接続するだけなんだ。こうして吹き付ける空気が泡に波紋を作るから、そこにカメラを向ける。そしてカメラの映像が、巨大な映写機に送られる。ブックラの設定を変えて、例えばベースとドラムの音を4倍の長さに引き延ばせば、泡に吹き付ける空気も4倍の長さになる。電圧の変化に絶えず反応するようになっているんだ。何もかもが単純な仕組みだ。信じられないほどにね。だけどその単純さゆえに優雅さがあって、見事な反応が返ってくる。そうして、巨大な投影図ができ上がる。とにかく行われていることは単純だ。極めて小さな現象が、大きなスケールに膨らんでいくんだ。映像を見ると、すごく印象に残ると思う。僕たちは他の技術も利用していて、それは、電気信号の波形を見るオシロスコープを使って、リサジュー図形と呼ばれるものを描く試みだ。画面にはX軸とY軸がある。そこに渦のような図形が描かれる。だけどそこに追加のデータをインプットする。X軸に対応したものだ。すると、それによって画面上を移動するドットの彩度が変化する。こうすると奥行きを生む効果が得られるんだ。ドットが暗くなっていくと、画面は想像とはかけ離れたものになっていく。こうして動いていくドットを使うだけで、3次元の形態をスクリーンに描くことができる。そして僕たちは、FM放送にも使われる超短波で音を発信する。音声をオシロスコープに繋いで、僕は自分の音響機器、つまりブックラを使って音声信号に修正を加えることができる。このやり方は周波数変調(FM)と呼ばれるものだ。基本的には、情報を伝えるための搬送波信号の上からブックラの信号を重ねて、信号の動きや形状を変化させる。ある意味では、どんな音が聞こえているのかを可視化するのも同然だ。じっと観察していると、それが信じられないほど明白になる。本当にそうなるんだ。もしここでベースやドラムの音を4倍の長さにしたら、無秩序に動き回る斑点が画面上に現れて、これもまた聞こえている音と完全に一致するだろう。音声信号を使って映像を創造するやり方の何がすばらしいかと言えば、サウンドをどんなふうにでも加工できるのと同様に、映像にもさまざまな手を加えられるということだ。例えば、ドラムのサウンドに昔からあるフィルターを掛けるとする。テクノで色んな人が用いる古典的な手法だ。すると、映像の信号にも同じ効果が加わって、そのサウンドに似通った画像を得られる。これは本当に見応えがある。しかも、音楽の専門的知識や、視覚的に何がどうなっているのかということを理解する必要はない。それでも、目で見たときに画像の縁が柔らかくなっているように思えたら、それはその音楽から極端な音域を削ったということになる。すべてが理に適っている。そしてオシロスコープは動き続ける。それを正面からカメラで映して、巨大な映像にして投影する。僕たちがやることはとても単純だけど、リアルタイムで進めていくんだ。ステージの横にそれを用意してね。ひとつだけ厄介なのは、この技術がどれも時代遅れだってことだ。オシロスコープも時代遅れの機械だ。ちゃんと動き続けるように、時々、ケースの横から叩いてやらなきゃいけないんだ。

Floating Points – 「Last Bloom」

― 〈Ninja Tune〉と契約することになった経緯と、〈Ninja Tune〉からリリースされたフェイバリット・アーティストを教えてください。

F 歴史が凄くあるレーベルなんだよね。僕が小さい時に持ってた2枚のアルバムはMr.ScruffのとThe Cinematic Orchestraだったね。 The Cinematic Orchestraのジェイソンに昨日会ったんだ。僕のアルバムを褒めてくれていたよ。昔彼がロイアル・アルバート・ホールで演奏した時に観に行ったことがあって、彼のオーケストラ・ミュージックとドラムやベースやギターがあんな風に交わり合ってたのが僕に凄くインスピレーションを与えてくれたんだ。音楽の内容がどうとかじゃなくて、その繋げ方をしてもいいんだよって教えてくれたんだよね。ジャンルなんて気にせずに繋げてもいいんだって。凄くインスピレーションをもらったよ。作曲者として最も大切なことを教えてもらったと思うんだ。Mr.Scruffのレコードもそうなんだけど、同じマンチェスター出身で彼がマンチェスターのクラブで演奏をするクラブナイトっていうのがあったんだんだ。毎回入ろうとして止められて入れなかったんだ。凄く童顔な15歳だったから(笑)何をしても入れてもらえなかった。今はアンディと凄く仲が良くてその話をすると「知ってたら入れてやったのにー!」って言ってくれるんだ(笑)。15歳の僕に言ってくれ(笑)。主にこの二枚かなぁ。凄く昔のだけどね。もうちょっと最近のものならマリー・ダビッドソンとかかな。あまりにもたくさんレコードを抱えてるところだし、僕も凄くたくさん持ってるんだけど、リスト見ないと分からないな。永遠に話せるよ。

― 2019年のフェイバリット・アルバムを教えてください。

F 最近ずっと聴いてるのはKelsey Luの『Blood』ってアルバムだね。素晴らしいアルバムだよ。自分が最近一番聴いてるのはこれだね。

Kelsey Lu – 「Blood」


Interview_Ian Blevins
Photo_Dan Medhurst

■ Floating Points 『Crush』
Floating Points
2019.10.18 Release
Label: Ninja Tune / Beat Records
Tracklist:
1. Falaise
2. Last Bloom
3. Anasickmodular
4. Requiem for CS70 and Strings
5. Karakul
6. LesAlpx
7. Bias
8. Environments
9. Birth
10. Sea-Watch
11. Apoptose Pt1
12. Apoptose Pt2

 

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