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【インタビュー】Luke Slater 「完全な幸せなんて、これまでの人生で一度も望んだことがない」

「Osutgut Ton Series」最終章。レーベルを振り返る傑作『Berghain Fünfzehn』と共に

Mixmag Japan | 30 September 2020

Luke Slater, Luke Slater インタビュー, ルーク・スレイター インタビュー, mixmag

© Sven Marquardt

今年でレーベル結成15周年を迎える〈Ostgut Ton〉。アニバーサリーに合わせ、同レーベルは今年の2月からワールドツアーを予定していた。プランには東京も含まれており、世の中が今のような状態でなければ華々しく16年目を迎えられただろう。状況が落ち着いた際には、ぜひとも仕切り直していただきたいところだ。ささやかながらもMixmag Japanではアニバーサリーを記念して、今日までに所属アーティストのインタビューを3本公開してきた。Phase FataleTobias.Barker……。今回のLuke Slaterのインタビューでシリーズは一区切りである。

レーベルの15周年にあたり、彼はOstgutからDJミックスを頼まれていた。しかし、Berghainのレジデントにしてドイツのクラブシーンを代表するレジェンドは、単純なミックスに飽きていた。そこで彼は、1983年に自分が初めてミックス音源を聴いた日のことを思い出す。「複数の音源が折り重なり、けれども破綻なく聴こえる。これは一体どういうことだ?どうすればこんなことが成り立つのだろうか?」。彼は当時の原体験をこのように語っている。それがインスピレーションとなって制作されたのが、今年の4月にリリースされた『Berghain Fünfzehn』であった。

「RIP THE CUT」という独自の手法を用いて作られた本作には、これまでにOstgutからリリースされた音源が155枚分(12インチ125枚とアルバム30枚)詰まっている。彼はそれらを切り出し、削り出し、加工して、全く新しい音楽として作り上げたのだ。

本稿では、本作『Berghain Fünfzehn』の後日談を中心にLuke Slaterが見据える「これから」に迫った。


― まずは「RIP THE CUT」について詳しくお聞きしたいです。具体的にはどのように楽曲を制作されていたのでしょうか?

Luke Slater: Ostgut Tonのスタッフに10枚ずつリリースを送ってもらって、それをもとに楽曲を構成していったんだ。中でもダニエルには本当に助けられたよ。10枚につき新曲として出来上がるのは大体1~2曲ぐらいかな。制作ペースとしてはそれぐらいだった気がする。作業を開始したのが昨年の9月で、アルバムが完成したのが今年の2月だ。6か月も制作に費やしてしまったわけだね。正直きつかった…。気の遠くなるような作業だったけども、終わりが見えてくる頃にはめちゃくちゃほっとしたよ。完成した時はレーベルのみんなとも喜びを分かち合ったもんさ。で、そんなときにパンデミックだよ。突然、世界がロックダウンを始めてしまった。まったく、つかの間の高揚感だったよ。今作のライナーノーツの内容を考えている頃は、「これからどうなるんだ…?」みたいな心境だった。

― 今作はOstgut Ton全体を総括する上でも非常に重要なアルバムとなった気がしますが、そのような意図もあったのでしょうか?

Slater: そうだね、あったよ。でも感覚としてはもっと自然にそうなっていった感じかな。Ostgutのリリースはハードなものだけでなくダブっぽい音源もあるから、今作にはそういうニュアンスも効いてると思う。ただ、やっぱり基本的にはトラッドなOstgutサウンドが主軸になってるから、奇をてらった作品にはなっていないはずだ。僕のことを反映すると同時に、レーベルのバックグラウンドも映し出すような作品を作りたかったんだよね。

― 『Berghain Fünfzehn』がまさに典型的な例ですが、あなたほど長いキャリアを築きながら、他者性も個性も両立できるアーティストは極めて稀だと思います。トレンドを追い求めながら自身のアイデンティティを追求する秘訣はありますか?

Slater: 僕は音楽的な部分においてかなり頑固なんだと思う。陳腐に聞こえるかもしれないけど、音楽が時代と共に変わっていくとして、自分のアンテナがそこに働いたならそれを信じれば良いんだよ。僕はフレキシブルに思われることもあるんだけども、実はまったくの逆。好きなことしかやってない(笑)。それにね、何年もやってればそりゃあ変わるって。自分の好きなことと世の中の流行がたまたま一致した。それだけのことなんだよ。特にテクノやハウス界隈では、その手の一致を何度も繰り返してる。これらのダンスミュージックは決して消えることなく、これからも進歩してゆくだろうね。僕もそうだよ。

― アンダーグラウンドな音楽が大きなマーケットでも支持された途端に魅力を失ってゆく現象がしばしば見受けられますが、それについてプレッシャーを感じたことはありますか?

Slater: 時代によって意味合いや程度が違うにせよ、僕は昔からアンダーグラウンドかメインストリームかという考え方に興味がないんだ。どちらかと言えば、むしろ僕は“アンダーグラウンド”ってカテゴリーから抜け出したいと考えていた。秘密であればあるほど、時に自分たちの首を絞めてゆくわけで…。ダンスミュージックがニッチである必要はまったくないんだよ。まぁでも、だからと言ってコマーシャルなことを積極的にやる必要もないんだけどね。乱痴気騒ぎみたいなパーティは嫌だしさ…(笑)。そんなイベントからはすぐ帰るよ。だからつまり、僕は好きなことを好きなように楽しみたい。それに尽きるね。

― この状況(パンデミック)下においてもそれは変わらないですか?

Slater: そうだね。というより、この状況に関しては“変われない”と言ったほうが近いかもしれない。僕を含め、あらゆるアーティストが変化を求められ、無理にクリエイティブであろうとしているに見えるんだ。しかし僕は、本当のクリエイティビティはもっと自然発生的なものだと思っている。もちろんそれが既にある人はどんどん発信すべきだよ。最近の僕はと言えば、料理が少し上手くなったぐらいだ(笑)。『Berghain Fünfzehn』が完成してから曲も書いてない。世界がこんな状態だからこそ、僕自身はゆっくり考えたくて。…アーティストとしてマズいかな?

― そんなことないと思います。私もロックダウンによって可処分時間が増えて、改めて考えられることもたくさんありました。こんなに時間をかけて自分の人生を振り返ったのは初めてかもしれません。

Slater: そうだよね。そうなんだけど、僕自身も今話していることが正しいことかどうか分かっていないんだ。内省的な時間が増えて、その熟考がポジティブな方向に向かえば、それは当然素晴らしいよ。“マインドフルネス”ってヤツだね。パンデミック抜きにしても、ここ数年は世の中の浅はかさが浮き彫りになっていた。でも本来はそうではないと僕は信じている。だから今この時は、僕らが物事を学ぶチャンスなのかもしれない。

― そういう内省がご自身の音楽に投影されることはあるんですか?

Slater: 作曲やDJを始めたばかりの頃はしょっちゅうだったよ。今もだけど、僕の創作意欲の大部分はネガティブな感情だ。内省的で憂鬱な気持ち、美しい悲しみ…。正直言うと、完全な幸せなんてこれまでの人生で一度も望んだことがない。今後もそうだろうな。

― 引き続き予測不可能な世の中ですが、Luke Slaterの、あるいはPlanetary Assault Systems(氏の別名義プロジェクト)の今後についてお伺いしたいです。

Slater: 夏に予定されていたギグはすべてキャンセルだったし、そろそろ何かしら動き出す頃だろうとは思ってる。まだ詳しくは言えないけど、ちょっと変わったことをやろうと考えているよ。Luke Slaterの新連載みたいな感じでさ。2020年は恐ろしい年だったけど、さっきも言ったように人々がマインドフルネスな考えを持てれば、きっと社会は再生できるはずだ。僕も今は家族を守るので精一杯だから、まず大事なのはこの状況を乗り切ることだね。本当は5月に日本に行くはずだったし、僕自身本当に楽しみにしてたんだ。また日本に行ける日が来れば、その時は必ず行くよ。


Interivew_Kimya Khayat
Edit_Yuki Kawasaki

■ Luke Slater (Planetary Assault Systems)
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Ostgut Ton
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