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FEATURES

INTERVIEW:NAI PALM「世界には魔法としか言いようのない力が存在するのよ」

過去と現在、そして未来を繋ぐ「フューチャー・ソウル」。

Mixmag Japan | 5 April 2018

Nai Palm, Haitus Kaiyote, TAICOCLUB

Hiatus Kaiyoteでフロントマンを務めるネイ・パーム。ライブやMVではいつも奇抜なファッションで身を包み、圧倒的な存在感でオーディエンスの注目を集める。けれども、彼女の凄さはこれが「オチ」にならないところだ。アーティスト性が見た目の印象を完全に凌駕している。歌唱力もギターの腕前もとんでもなく高い。

Hiatus Kaiyote – 『Breathing Underwater』

そんな彼女が、2017年にソロアルバム『Needle Paw』をリリースした。デヴィッド・ボウイやジミ・ヘンドリクス、Radioheadなどのカバーのほか、Hiatus Kaiyoteの楽曲のソロアレンジも随所に散りばめ、オリジナルトラックも収録されている。バラエティ豊かな内容だが、「ネイ・パーム」というフィルターを通して再構成されているので、世界観には統一感がある。

その世界観の深層を探るべく、Mixmag Japanは彼女へインタビューを実施した。以前から「世界の多様性や文化」に深い愛情を表明し、音楽でそれを追求してきた彼女が見る景色や如何に。『Needle Paw』の細部に至るまで、そこに込められた強い思いを語ってくれた。まずは本作における重要なファクター、ネイ・パームが弾くギターの音色に迫る。

「『Needle Paw』をリリースしてから、いろんな人にギターについて聞かれるわ。もちろん私のギタリストとしての一面も見て欲しいけれど、あまり自分では意識してなかった。前提としてあったのは“バンドのHiatus Kaiyoteではカラフルに、ソロのときはよりシンプルに”っていうこと」

Nai Palm – 『Crossfire』

確かに彼女の言う通り、記事の冒頭の『Breathing Underwater』と比較しても手数や難易度に劇的な変化はない。単純にソロになったことで彼女に視線が集約され、今まで見えてなかった部分まで視認できるようになったということだろう。ここで改めてHiatus Kaiyoteの凄みを感じた。ネイ・パームという強烈な個性が、このバンドではひとつのピースとして機能する。見方を変えると新たな発見が生まれることがしばしばあるが、ここにもそんなセレンディピティがあった。

「見方を変える」と言えば、昨今のクラブシーンも変化の真っ只中にある。特にジャズとクラブミュージックの仲の良さは誰もが認めるところだろう。フライング・ロータスやサンダーキャットを軸としたBrainfeederの台頭、そして現行音楽シーンの王者として君臨するケンドリック・ラマー。それぞれインディペンデントなクラブミュージックの感性を持ちながら、歴史あるジャズの権威性も兼ね備える。ネイ・パームもテイラー・マクファーリン(Brainfeeder所属のプロデューサー)の楽曲『The Antidote』に参加しており、やはりこの系譜の上に居るように思われる。この方法論の源泉はどこにあるのだろうか。

Taylor McFerrin feat. Nai Palm – 『The Antidote』

「確かに少し前までジャズは敷居の高い音楽だったわ。でもこの世代のアーティストにとってはそうじゃなくて、“遊び”の一部なのよ。理論とエンターテイメントが共存しているのだと思う。サンダーキャットなんかはそうよね。オーセンティックなジャズの知識も豊富なんだけど、それを遊びに落とし込むのがすごく上手。私も彼のパーティーに行ったことがあるんだけど、凄かったわよ(笑)」

理論と遊びの両立―。考えてみれば、本来のジャズとはまさしくそのような音楽だったのではなかろうか。オーネット・コールマンしかり、ジョン・コルトレーン(フライング・ロータスの大叔父にあたることは有名な話)しかり、大いに遊び心あふれるアーティストであった。その点では、クラブミュージックと自在に接合してみせる今の形こそが、ジャズの真の姿なのかもしれない。

Thundercat: NPR Music Tiny Desk Concert

「良い時代になったと思う。入りにくかったところへもクリックひとつで自由にアクセスできるんだもの」

そう言って微笑む彼女の表情からは、市民権を得たジャズを揶揄してやろうという意図は感じられない。スノッブな見方をせず、純粋に音楽を楽しむ姿勢もこの世代の特徴かもしれない。

Nai Palm – 『Homebody』

話を『Needle Paw』に戻そう。本作にはギターの他にもうひとつ、特筆すべきポイントがある。それが「声」だ。こちらもソロアレンジになったことで驚くほど際立った。例えば、Hiatus Kaiyoteのオリジナルトラック『Atari』。本作にはこの曲のセルフカバーも収録されているが、編成がミニマルになり、より声の存在にスポットライトが当てられている。

Nai Palm – 『Atari』

「もちろんヴォーカルにはこだわったわ。私自身『声』という楽器がとても好きなの。今はテクノロジーが発達して様々な音が作れるようになったけれど、それを突き詰めてゆけば人の声こそが最もクリエイティブな楽器だと思う。『Ghost in the Shell』のオープニングのシーンに顕著だけれど、SF作品の中でフィーチャーされているものって、実はプリミティブだったりするのよね」

Ghost in the Shell (1995) Opening

グレゴリオ聖歌やゴスペルも重要な参照点であったという。「ヴォーカルのハーモニーを大事にしていた」と彼女は語るが、大切だったのは単純な「音」だけではなかったようだ。Hiatus Kaiyoteがブレイクした当初、その音像を指して「フューチャー・ソウル」と銘打たれた。やや大仰に思われたこの呼び方も、決して間違いではなかったのである。彼女たちの視線の先には未来があったのだ。そしてその未来を切り開くために、過去と現在を参照する。

アリーヤティンバランド*にも刺激をもらってるわ。二人ともネオ・ソウル系のアーティストではあるけれど、色々なジャンルからサウンドを引用してる。でも彼女たちには圧倒的なオリジナリティがあるのよ。さっき話に出たテイラー・マクファーリンやサンダーキャットみたいにね。例えば『Read Between the Lines』はラテン音楽からの引用があるけれど、オリジナルとはまた違った印象を受けるわ。私にとっては、それがすごく面白くて。『Needle Paw』でもそこにチャレンジしたつもりよ」

アリーヤとティンバランド:90年代後半を代表するR&Bシンガーとプロデューサー。2001年の飛行機事故によってアリーヤが逝去するまで、シーンの第一線を走る名コンビであった。

Nai Palm – 『When the Knife』

ここまで出てきたものを単純に並べるだけでも、『Needle Paw』の雑食性が理解できよう。ボウイ、ヘンドリクス、ソウル、ジャズ、ゴスペル、Ghost in the Shell・・・。古今東西のあらゆるものを吸収し、自らの表現に繋げてゆく。彼女が言う「世界の多様性」というものがおぼろげながら見えてきた。

「世の中のトレンドや周りの評価よりも、自分が愛しているものを大事にしたいわ。それが私の場合は過去の偉大なアーティストだったり、最果ての地で鳴り響く音楽なの。その意味で、今回ジェイソン・グルウィウィと一緒に音楽を作れたのは幸せなことだった」

そう言って、彼女はテーブルの上に置いてあった『Needle Paw』のアートワークに手を伸ばす。

自身とジェイソン・グルウィウィのツーショット写真を指し示すネイ・パーム。

ジェイソン・グルウィウィは、『Needle Paw』のオープニングとエンディングに収録されている『Wititj(Lightning Snake)』に参加したアーティストだ。彼は、オーストラリアの先住民「ガルプ族」の儀式で用いられる祭歌をうたう。

「農耕民族と狩猟民族、個人と社会、テクノロジーと自然。世の中には対比することで見えてくるものってあると思うんだけど、彼の歌を聴いていると“現代文明の中で生きる自分”が見えてくる気がするの。ガルプ族の歌って、東京やシドニーの文化からはかけ離れた世界観を持っているから。ジェイソン自身もものすごい山奥に住んでるのよ。彼の曲、私にとっては衝撃的だったわ。まさに魔法よ。世界にはそういう魔法がいくつもあったと思うんだけど、今はそれが見えにくくなっている気がする。私は前からそんな力を音楽で表現したかったし、『Needle Paw』でそれが出来たことは本当にありがたいことよ」

Nai Palm – 『Have You Ever Been (To Electric Ladyland)』

こちらがジミ・ヘンドリックスのカバーだ。一連の話を聞いた後では、この曲からもまるで「魔法」を再現しようとする執念を感じる。“The magic carpet waits for you”という一節に、彼女はどれほどの思いを乗せているのだろう。

「実は今Hiatus Kaiyoteの曲もレコーディング中なの。今はまだ詳しいことは言えないけれど、色々なことにチャレンジしているところよ。今日の話に繋がる部分もたくさんあると思うわ」

古きを温め、現在を参照し、そして未来を照らし出す。ネイ・パームが紡ぐ音楽こそ、我々にとっては時空を超えた魔法である。


(Nai Palm & Hiatus Kaiyote出演イベント)
■ TAICOCLUB 2018
日程:2018年6月2日~3日
開催地:長野県木曽郡木祖村 こだまの森
<イベント詳細>
http://taicoclub.com/18/

 

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