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コロナ禍におけるパーティをめぐる議論 – クラブ編 –

葛藤する倫理観と経済的ジレンマ

Mixmag Japan | 8 January 2021

コロナ クラブ, クラブ 営業, mixmag

ダンスミュージックの未来はどうなってしまうのだろう。COVID-19の諸問題と同様に議論や意見が対立し、それぞれの正義が複雑に絡み合っている。パンデミックに対抗するために団結したいが、何から手を付けてよいか分からないのが正直なところだろう。欧州では再流行のたびにロックダウンが繰り返され、その都度飲食店やナイトクラブはやり玉に挙げられる。昨年、日本を含む一部の地域では営業を再開したベニューも見受けられたが、ネット上には様々な言説が散見された。イタリア、チュニジア、クロアチア、ジョージアなどでは、著名なDJがプレイしている動画がアップされ、SNSのとある界隈では「ビジネステクノ」と揶揄された。イタリアではそれ以来、メディアがパーティ開催を非難し、政府はベニューをクローズするように通達。アウトブレイクの魔の手は、より効果的にウイルス拡散を防いでいたと思われる国にも伸びてきた。例えば韓国のような。

どの国においてもウイルス拡散に一役買っているのは若者であるとされている。DJ、プロモーター、パーティの参加者は、“自分が感染拡大の要因になるとは考えないセルフィッシュな人間だ”と度々非難される。未認可のギグでプレイしたDJの名前を羅列した「Shitlist」なるものを作った人までいた。

言うまでもなく、これには簡単な答えは存在しない。冷静さを保ち、科学的なデータを見ながら、専門家のアドバイスに耳を貸さなければいけない。我々は人々の健康と安全を最優先しつつ、未曽有の危機に瀕するシーンを守るために行動すべきだ。

ここでは、様々な立場の関係者の話を紹介する。まずはナイトクラブ従事者から。ぜひ当事者の声として聞いてほしい。


VINCENT DE ROBERTIS – ジェネラル・マネージャー (GUENDALINA CLUB, PUGLIA, ITALY)

「絶対的に不確実な、そして官僚主義が蔓延した、COVID-19に関する資料なんて何もない状況で、私たちはクラブを再オープンしました」。イタリアはプーリア州にあるオープンエアのクラブ「Guendalina」のジェネラルマネージャー・Vincent De Robertisはそう語る。このクラブは、昨年7月にPatrick ToppingとWilliam Djokoらを招聘した。「私たちは法律のひとつひとつを尊重し、遵守していたんです。収容人数の40パーセントを削減し、エントランスにはマスクの着用を義務づけ、体温検知器を設置し、部屋のあらゆる場所に消毒器を設置しました」。

Guendalinaは専用のウイルス追跡システムを構築したのだが、これは世界でも最も効率的なもののひとつだろう。「不幸にも感染してしまった場合は、独自に開発したネットワークから追跡し、わずか数ステップで原因を特定できます。私たちと同じような手続きを、人通りがずっと多いローマの広場や通勤電車でも行われているのでしょうか?」。彼はそう問いかけ、クラブの悪評を嘆いている。また、こうも付け加えた。「クラブ営業をさせてもらった一方で、自問することはあります。クラブをオープンせずに、違った方法でシーンに貢献することもできたのではないか?」と。

その後、WhatsAppのやりとりで、彼はGuendalinaが政府から経済的な支援を受けていないことを明かしてくれた。「もちろん頼みましたが、政府は私たちの言うことに全く耳を貸そうとしませんでした。行政が何もしてくれないから営業せざるを得なかったのに、そのまま要求を受け入れてもらえず、結局8月16日にクローズすることになりました」。ちなみに、彼らのイベントに出演したアーティストたちは平時よりも減額されたフィーを快諾してくれたという。

TITO PINTON – オーナー (MUSICA, RICCIONE, ITALY)

同じくイタリアにある「MUSICA」は、今夏にオープンしたナイトクラブのひとつだ。これまでにBob SinclarやBlack Coffee、Ricardo VillalobosにDamian Lazarusなど、そうそうたるメンツがラインナップされている。広さおよそ5000平方メートルのベニューは昨年2月に建設が開始され、オープンしたときはまだ50パーセントの完成度だった。そのため、本来のキャパシティの40パーセント程度で営業はスタート。広々としたクラブは、Guendalinaと同様にオープンエアの作りで、やはりここも法的に定められたガイドラインに従っていた。

「人々がこの地で踊っていた2か月間、ひとりの感染者も出なかった。私自身も、昨日検査を受けたら陰性だったよ。クラブが営業していた間、何千人もの人たちと会ってきたけど、私の身には何も起きていない。私には2人の娘がいるし、当然ながら安全には最善を尽くしてきた」。

最終的に、MUSICAのオープンは上(行政)から降ってきた。このベニューが周辺地域から求められていたからである。「リッチョーネの人々は観光資源としてクラブのオープンを望んでいたんだ。イタリア政府の決定に誰もが賛成してくれたよ。夏にはたくさんの人々がビーチにやってきて、地域経済に貢献していた。クラブの外でどう過ごすかは、さすがに私たちの手からは離れると考えており、その責任まで私たちが負うのは難しい」。なお、夏の間はMUSICAに限らず、リッチョーネにあるクラブは政府から営業再開の許可を得ていた。

RENATA TOSI – リッチョーネ市長

イタリアの主要な新聞社が、「クラスターが発生した」としてナイトクラブを批判した。その後、ローカル局もリッチョーネを取り上げ、科学的根拠なしに新たな感染源をの責任をクラブに転嫁している。それに対し、同市の市長を務めるRenata Tosiはこう反論した。「我々のデータによると、COVID-19の感染経路をクラブに特定するのは難しいでしょう。陽性反応が出た人たちはバカンスの真っただ中で、ビーチからレストラン、電車、バスといった様々な場所で過ごしています。そう考えれば、ほぼすべての場所に感染リスクはあるわけです。原因を特定の場所に押し付ける方法では、ウイルスが死滅するより先にイタリアの経済が崩壊します」。

ALESSANDRO RAVIZZA – マネージング・パートナー (DAZE EVENTS, ITALY)

DAZE EVENTSは、世界的なイベントエージェンシーである「Live Nation」におけるイタリアのサブブッキング部門だ。前置きとして説明するが、バカンスシーズンを迎える前に、イタリア政府はCOVID-19の対応に関する意思決定権を地方自治体に委譲している。同社のマネージング・パートナーであるRavizza氏は、その影響についてこのように述べている。「各地域がどのような施策を実施し、どのように営業を再開するのかを決めることができた」。この記事でも何度か説明されているように、イタリアの経済を支えている重要な産業は観光である。平時ではそれらに大きく収入を依存している地域、つまりプーリア島、シチリア島、ヴェネツィア地方、リッチョーネ、サルデーニャなどは、行政の懐事情に直結する影響力を持っているのだ。

また、Ravizza氏も「ナイトクラブが政府から財政的な支援を受けていない」と認めている。「私が話したクラブのオーナーは、『この夏にどれだけ稼げるかで破産か継続かの道が決まる』と言っていたよ。『これからの10か月間を生き残る資金を得られるのは今しかない』と。『営業するな』って声が彼らにも届いてるけど、今のところそれしか方法がないんだよ」。

TOMAS JINDRICH – プロモーター (DRUM & BASS ON THE BOAT, PRAGUE, CZECH REPUBLIC)

チェコは3月16日に国境を閉鎖し、厳しい時間的な制限を設けたが、わずか1ヶ月後には段階的に措置を縮小し、5月11日までにはほとんどの制限を解除した。その後すぐに、クラブは100人収容での営業が許可され、野外イベントの開催も認められている。6月には500人収容の会場が開放され、野外パーティーは1000人のゲストを収容できるようになった。8月15日にチェコのプラハで開催された「Drum & Bass on the Boat」では、DJのBryan GeeとPatifeがヘッドライナーを務めた。

「ボートの定員は300人。野外イベントだったこととソーシャルディスタンスを啓蒙できていたことから、僕らのパーティは法的に問題なかった。もちろん、このパーティが屋内イベントとして企画されていたら、僕らは開催を見送っただろうね。でも…、率直な感想を言っていいのか分からないけど、やっぱりパーティは最高だったよ」と、同イベントのプロモーターであるTomas Jindrichは語る。

「数か月間クラブが閉鎖されて行く場を失った人々は、みんな口々に『疲れた』と言っていた。イベントの前後で否定的な意見はなかったよ。チケットの売り上げを見ても明らかなように、そりゃあ普通の生活に戻りたい人のほうが多いよね。もちろん今のタイミングでそれができる人は限られるだろうけど、何かしらの形で希望を与えられる人はそうすべきなんじゃないかな。僕らがパーティを開催した理由は、まさしくそこにあったんだ」。


Text_Marcus Barnes
Edit_Yuki Kawasaki

 

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