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Phase Fatale 【インタビュー】 「『攻殻機動隊』が今回は重要な参照元だった」

「Osutgut Ton Series」第一弾!!

Mixmag Japan | 17 May 2020

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初めてPhase Fataleを見たのは、渋谷のContactだった。2017年の夏で、その頃の彼は〈Ostgut Ton〉の ニューカマー的立ち位置だったと記憶している。現在はベルリンに拠点を構えているが、当時はまだ“ニューヨークからの刺客”と銘打たれていたはずだ。ディストピア的世界観で鳴らされるインダストリアルなサウンドは、この頃から既に顕著であった。

あれから3年弱。彼を取り巻く環境はだいぶ変わった。先述の通り拠点をベルリンに移し、2018年には自身のレーベル〈BITE〉を立ち上げ、レーベルツアーまで組めるようになった。ちなみに、昨年の5月にはレーベルの主宰としてContactに凱旋を果たしている。

そして今年の1月、彼は2枚目のフルアルバム『Scanning Backwards』をOstgut Tonからリリースした。今回のインタビューでは、本作の成り立ちと共に、彼のアーティストとしての核心に迫る。なお、このインタビューは「Osutgut Ton Series」の1本目にあたり、同レーベルに所属するアーティストが後に続く。


‐ 『Scanning Backwards』リリースから数か月が経ちました。あなたはEBM(Electronic Body Music)の影響を受けた新世代のアーティストと評価されてますが、ご自身ではどう考えてらっしゃいますか?

Phase Fatale(以下、P): 異論はないよ。ただ、今回のアルバムの最大の目的は自分自身の幅を押し広げること、あるいは何か違うことをすることだったんだ。この手の音楽シーンは80年代に始まって、既に何度かリバイバルを経てきていて、いつも違ったサウンドになっている。そして僕が今回試みたことは、全てをスローダウンさせることだったんだ。最近は何もかもが超高速になってきているので、これは重要なことだったよ。黎明期のEBMやインダストリアルなテクノを聴いてみると、今のサウンドに比べてかなりスローなんだよね。僕は今作でそこに着目したんだ。そして、BPMを下げることによって分かったことがある。単純な話だけれど、テンポを落とすと各ビートの間に多くのスペースが生まれるんだ。そうすると小節ごとに挿入できる音の数も増えるから、曲全体が豊かになるんだよ。このスペースが小さいと、曲がシンプルになりがちだ。もちろん僕は今後もテンポが速い曲も作りたいと思ってるけど、今回の発見はそっちでも役に立つだろうね。

‐ 大きなムーブメントとして、次はどのようなサウンドが台頭するでしょうか?

P: 過去に歩んできた道を再現しているように見えるよ。90年代のテクノもかなりテンポが速かったし、その後によりコマーシャルなものになって、あらゆるアーティストがフェスへと向かっていった。曲も大げさなブレイクがあるものが増えていったよ。そこでRobert Hoodのような人たちが、「OK、俺はミニマルに行く」と言って、新たな道を開拓していったんだ。ドラムマシンとシンセを使っただけの、文字通り“ミニマルな”サウンドを彼らは追求していたよ。何事もサイクルがあると思う。ただ、僕が言いたいのは「次はミニマルのムーブメントが始まるだろう」ってことではないんだ。かつてミニマルがそうだったように、これからは音を分解したり、ルーツを紐解く方向に行くんじゃないかと思うんだよね。だから僕は、DAFのような80年代初期のEBM界のゴッドファーザーが当時何をやっていたかを参考にしたんだ。

Phase Fatale – 「Binding by Oath」

– あなたのバックグラウンドも大変興味深いです。ダンスミュージックを作る前はバンドマンだったんですよね?

P: そうだよ。一番聴いてるバンドはThe Cure。子供のころからずっと聴いてきたけど、今も一番好きだよ。僕はギターとベースを弾いてたから、The Cureの各パートをコピーしてた。その経験は間違いなく今も活きているね。それと僕は2000年代の頃はまだニューヨークに住んでたわけだけれど、当時「Wierd Records」というレーベルが主催していたパーティにDJとして出演してたんだ。そこで僕はAsylum PartyOpéra de Nuitといったバンドを知って、彼らにもハマってた。彼らは1970年代のフランスで起きた“コールド・ウェイヴ”というムーブメントに類するバンドなんだけど、メロディの使い方がフランスの古い歌謡曲に由来するみたいなんだよね。この旋律に乗せると、フランス語はものすごくロマンティックに聞こえる。

‐ まさしく“分解して、研究された”音楽なわけですね。お話を伺っていると『Scanning Backwards』は必ずしもダンスフロアに向けられた作品ではないような気がしてくるのですが、この解釈は合ってますか?

P: その通りだよ。実は、今作をBerghainのフロアのピークタイムで聴いてもらおうとは思ってない。今回僕がやりたかったのは、どちらかと言えば高音域の実験なんだ。僕が最も精通しているサウンドシステムはBerghainのものなんだけども、このアルバムに収録されている曲の周波数はローエンド・ハイエンド共にBerghainのそれには合わせてなくて。今回のアルバムには高音域の歪みのようなものがたくさん出てくるんだけれど、この音が人間の心理にどのような影響を与えるのか、僕はそれが知りたかった。そこで、20世紀半ばにアメリカで行われていた“MKウルトラ計画”に注目したんだ。この陰謀めいたプロジェクトは当時のCIAが主導したとされているんだけど、その目的のひとつは人間のマインドコントロールだった。被験者に対して極端に低い周波の音を向け、記憶喪失を引き起こすというものさ。僕はそれを建設的な解釈で自分の音楽に利用しようと試みたんだ。音楽がいかに記憶と強く関連して、それらが頭の中でどのように結びつくかってことをね。

‐ “MKウルトラ計画”をリファレンスに持ってくるまでのプロセスが気になります。

P: 大きく遡ると、幼いころからインダストリアル・ミュージックにハマっていたことに由来するんじゃないかな。僕にはこの手のサウンドが時に破壊的なものに感じられることがあるんだけど、その理由は社会の病的な部分や恐ろしい側面を照らし出しているからだと思うんだよね。というか、僕はそれこそがアートの役割だと信じているよ。実際に起きたことを引用することで、それそのものが秘めている可能性を再検証するというか。それと、軍事的な美学の矛盾も指摘したかったんだよね。「大きな世界を救うために、何も知らないお前らには死んでもらう!」って話は、控えめに言っても世界のあちこちで起きている。それがいかに邪悪なマッチョイズムであるか、けれども同時に、そこにはホモエロティックな美学も存在しているってことを伝えたかった。

‐ あなたが音楽をプロデュースする際、歴史上の出来事やフィクションを引用することは頻繁にあるのですか?

P: 僕は映画へのパッションも音楽と同じくらい持ってるんだ。僕のトラックの多くは映画からインスピレーションを受けている。映画の内容やセリフに直接言及することはあまりないけれど、曲のムードやフィーリングに反映することは本当に多い。実は「Scanning Backwards」というタイトルも、日本のアニメ映画『攻殻機動隊』からインスピレーションを得ているんだ。これまで同様、作品の内容に直接言及しているわけではないけれど、“人の記憶をスキャンして改ざんする”行為については大きく影響を受けた。人間の本質を生命体であることではなく、情報の集積体として解釈する考え方にもね。この映画が示唆するものはとても恐ろしいけど、アート作品として大変素晴らしいと思う。

‐ あなたはニューヨークからベルリンに拠点を移していますが、今ではあなたのように北米からヨーロッパに移動するアーティストも増えました。やはりテクノの中心地では、得られるインスピレーションは多くなるものなのでしょうか?

P: インスピレーションの多寡については何とも言えないところだけど、明らかに違いはあるよ。ベルリンに来てからは、同世代との交流が増えたし、この街は若いアーティストが何かすることに非常に寛容だ。たとえば友達とゴスパーティに連れ立ったとして、その次にはそこのみんなでBerghainのフロアに向かうことだってある。もちろん、その逆もあるよ。テクノやエレクトロが好きな人もいれば、アシッドハウスが好きな人もいる。そうやって、この街では異分野の交配が続いているんだ。だからベルリンのカルチャーはハイブリッドなんだと思うよ。ニューヨークこそ、そういうイメージを持たれがちなんだけども、僕がいた頃はそこまで活気があったわけじゃない。そもそもテクノの土壌も今みたいに整ってなかったしね。ほんの数年の間の出来事なんだよ。アメリカでテクノが90年代のような勢いを取り戻したのは。

‐ 私も西海岸に住んでますが、確かにその実感はありますね。最近ヨーロッパのDJから「ツアーでアメリカに回ってくる度に、テクノやハウスのシーンが大きくなっている」という声を多く聞きます。…最後の質問です。今、世の中はこんな状態ですが、あなたがBITEやOstgutで予定していることはありますか?

P: つい最近出たばかりなんだけど、Sarinの曲をリミックスしたよ。彼とは昨年BITEのレーベルツアーで日本にも一緒に行ったんだ。それから、まだ詳細は言えないんだけど、あるアーティストのリブート盤を企画してる。それ以外にもEPのリリースがいくつか決まってるよ。僕自身もEPの制作に取り組んでいるところで、近々完成の目途が立つと思う。今は山ほど時間があるから、今年は色々試してみようと考えているよ。


Interview_Kimya Khayat
Edit_Yuki Kawasaki

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