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FEATURES

Recondite 【インタビュー】 「同じ美学で音楽を作ることの、何が問題なの?」

果てしない時間の連なりにある「現在」

Mixmag Japan | 11 March 2020

ベルリンを拠点に活動する奇才Reconditeが、今年1月にフルアルバム『Dwell』をリリースした。販売元は、アメリカのレーベル〈Ghostly International〉。同レーベルから作品を発表するのは、セカンドアルバムの『Hinterland』以来である。これまでに〈Dystopian〉や〈Innervisions〉、〈Hotflush〉などの超名門から次々とリリースを重ねてきたが、最新作でも”Recondite節”は健在。イノセンスと不穏さが入り乱れたムードが作品全体を覆っており、けれどもこの独特な雰囲気こそが彼の真骨頂なのである。本作を制作することで彼が気付いたのは、自身の中に内在する、つまり住み着いている(Dwell)、音楽に対する美学であった。


‐ まず、本作に“Dwell”と名付けた意図を教えてください。

Recondite: 何も考えずに7~8曲ほど作っていたんだ。その後にもう何曲か作ってゆくうちに、段々気付いてきたことがあって。関連性のないはずのそれらの曲が、ものすごく一貫しているように思えたのさ。それらの曲をReconditeとしてリリースしようなんて思ってなかったのに、だよ? 実を言うと、最初はこの状況を悲観的に捉えていた。「僕は同じような曲しか作れないんじゃないか…?」って。でも、段々そのネガティブな考えそのものに対して猜疑心が芽生えてきたんだ。「いやいや、そもそもそれの何がいけないの?」ってさ。同じ美学に基づいて音楽を作ることの、何が問題なの? 僕はここに住んでる(Dwell)んだ。そう考えると、途端に視界が開けていったよ。もちろん、これまでにはフレッシュな曲を作ろうと努力した時代はあったけれども。でもね、よく考えるとそれらは焦燥感に駆られて作ったものがほとんどなんだ。僕の内側から出てきたわけじゃない。この世界にいると、どうしても周りが気になるんだよ。誰もがシーンを作りたがるし、その中心から振り落とされないように必死になる。けれども、僕は自分の音楽を追求することのほうが重要だと気付いたんだ。この先のシーンはどうなるんだろうか?とか、自分はその時どうしてるんだろうか?とか、答えがないものを考えるのはやめた。今この瞬間の、自分が信じる美学に住む。それがこのアルバムのコンセプトだよ。物事が次々とスワイプされ、更新されてゆく情報社会だからこそ、それが大事だと思ったんだ。

Recondite – 「Cure」

‐ 本作をリリース上で、数あるレーベルの中から〈Ghostly International〉を選んだ理由は何でしょうか?

Recondite: また彼らと仕事がしたかったんだ。以前Ghostlyから『Hinterland』を出して以来、少なくとも1度はニューヨークでギグを行っている。その時にレーベルのスタッフたちと話をしたんだ。彼らの素晴らしいところは、アーティストの意向を尊重してくれる点だよ。『Dwell』に対しても、すごく好意的なリアクションをくれた。彼らと仕事するのは大好きさ。本当に信頼できるし、対応もフレシキブル。特定のマニュアルがあるわけでもなく、アーティストへの圧力もない(笑)。僕らにとっては、極めて心地よい仕事の進め方だよ。たとえば今回は、アートワークにすごく時間がかかったんだ。「誰に頼むか?」っていう点でね。スケジュールを金科玉条のように死守することも重要だろうけど、時間がないからと言ってそれほど気に入っていない案を採用するのは後悔の元だよ。

‐ ぜひアートワークのお話もお聞きしたいです。むしろこちらから質問しようと思ってました(笑)。

Recondite: このアートワーク、良いよね。僕も好きだよ。“Funeral French”ってアーティストに頼んだんだ。彼はイギリス人のグラフィックデザイナーなんだけど、スケートブランドの運営もやっている人でね。メタルバンドのジャケットのデザインなんかもやってるみたいで、小さいデザインレーベルも経営してる。彼が手掛けたTシャツをとあるお店で見かけて、すぐに連絡したんだ。その後、彼の作品をいくつか見ていくうちに、エアブラシを使った作品が特に気になってね。その時は具体的じゃなかったけど、何かが僕の中で繋がった。で、実際にその方法論でアルバムジャケットのデザインを依頼したんだ。そうして完成したのが『Dwell』のジャケットだよ。彼は完璧に作品のコンセプトを理解してくれた。ボヤけた道の途中に、輪郭のはっきりした青いゲートが鎮座している。あのゲートこそが、僕の住み家なんだ。

Recondite – 「Dwell」

‐ あなたの作品では、「自然」が大きな役割を果たしているように思います。今回もアルバムの随所にフィールドレコーディングと思われるサウンドが散見されました。

Recondite: 必ずしも自然がテーマにあるわけじゃないんだ。少なくとも、今回は『Hinterland』ほどはっきり自然を主軸としていない。あの時は綿密に計画を立て、湖が凍るのを待ち、そこから氷片を取ってきた。そしてそれをスネアの代わりに使ったんだ。あのアルバムには、自分から見える自然を写実的に音楽で表現する試みがあったからね。今回もフィールドレコーディングを採用しているけど、あくまで“音”として組み込んでいるんだ。それを見つけるのも極めて偶発的だったよ。僕が音楽を作ってる時、後ろから妻が電動歯ブラシを使ってる音が聞こえてきたんだ。どういうわけか、その時僕が作ってた曲の周波数と歯ブラシの音がピッタリ合致してしまったんだよ。で、彼女に「悪いんだけど、もう1回歯を磨いてもらえるかな?」と頼んだんだ(笑)。今振り返ると、やや変な頼み方をしてしまったな。…だからまぁ、今回に関してはフィールドレコーディングが当初のプランにあったわけではなかった。

‐ その“歯ブラシの音”が使われている曲は、「Mirror Games」ですか?

Recondite: そうそう。あの曲は歯ブラシの音を処理して使ってる。今作にはもうひとつあって、「Interlude 1」もそうだね。こちらは処理せずに原音のまま使った。50秒前後にそれらしき音が出てくると思うよ。

Recondite – 「Interlude 1」

‐ 「Interlude 1」についてお聞きしたいのですが、この曲は非常にヒップホップからの影響を感じさせる内容です。ヒップホップがルーツにあるとは伺っていたのですが、具体的にインスピレーションになったアーティストは誰ですか?

Recondite: ひとつに絞るのは難しいね。僕は東海岸のラッパーたちが大好きなんだ。Nas、Wu-Tang ClanにGuru…。ギャングスタ系のDJやラッパーも素晴らしい。Notorious BIGとかJay Z、DJ Premierとかね。まぁ西海岸のアーティストも好きなんだけど(笑)。Warren GにNate Dogg、Dr. DreやSnoop Dog…。もちろんアンダーグラウンド勢のレコードもたくさん持ってる。Madlib、MF Doom、J Dillaなどなど…。いずれも僕がティーンエイジャーだった頃、狂ったように聴いてたよ。間違いなく、ヒップホップは強烈な原体験だった。

‐ あなたの音楽に度々見られる「不穏さ」はヒップホップがリファレンスになっているのでしょうか? それとも、あなたの元来の気質に起因するものですか?

Recondite: 両方じゃないかな。僕は元々感情的な人間ではないし、どちらかと言えば自分を客観視するタイプの人間だと思う。物事に対して敏感な方だとも自覚しているけれど、それを積極的に発信していく気にはあまりなれない。僕の音楽が不穏な雰囲気を帯びるのは、それが理由だろうね。特定の感情が、たとえば怒りとか悲しみはどのように発露するのか、僕はその経路についてよく考える。“感情”は極めて曖昧だけれど、だからこそそれをロジカルに解釈することは必要だと思っていて。そういった感情の経路を音楽で具現化してゆくと、何となく不気味なイメージになるんだよね。僕の「Recondite」という名義にもそのスタンスが表れていると思うよ。“不明瞭”とか“難解”とか、そういう意味の言葉で。

‐ つまり音楽に対するスタンスは「Recondite」と名乗ったその日から変わっていないわけですね。まさしく『Dwell』と今回のインタビューを体現する話だと感じました。

Recondite: うん。僕にとって“現在”は、ものすごく時間軸の広い概念なんだ。間違いなく『Dwell』は僕の最新作だけれど、過去と現在、そして少し先の未来が繋がっている。僕は今の世界を1~2日程度ではなくて、果てしない時間が連鎖した大きな絵として捉えていて。その考えに至っては、僕が学生だった頃から変わってない。明日のテストの点のために必死で勉強するなんて馬鹿げていると本気で思っていた。一晩で処理できる問題なんて、全然大したことはないんだ。…まぁ、そのおかげでテストの結果は褒められたもんじゃなかったけど(笑)。当時の僕はひどい不利益を被ったけど、本当に重要なことは時間を跨いでも残るものだよ。『Dwell』がそれを証明できていると信じてる。


Interview_Kimya Khayat
Edit_Yuki Kawasaki

■ Recondite 『Dwell』

recondite
Label: Ghostly International, PLANCHA
<アーティスト詳細>
FB
Instagram
RA

 

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