新宿2丁目発、今年で14年目を迎える“東京イチのファッションパーティ”「fancyHIM」がRED BULLのサポートのもと、4月12日に渋谷で初開催された。舞台は東京屈指のサウンドシステムを誇るナイトクラブ、Contact。
この記事ではその時の模様をレポートするが、その前に2丁目のダンスミュージックシーンについて少し前置きしておきたい。AiSOTOPE LOUNGEを筆頭に、かの街では驚くほど多様な音楽が鳴っている。以前GOLD FINGERに行ったときはABBAの曲で大カラオケ大会が開かれていたし、すぐ近くのDragon Menでは爆音でCalvin Harrisの「Feel So Close」がかかっていた。Mixmag Japanの誌面版を置かせてもらうための挨拶回りをした時、新宿2丁目のお店はどこも快く引き受けてくれた。お店単位でお世話になっているところはたくさんあるけれど、エリアで考えたときにダンスミュージックが最も歓迎されていたのは2丁目だったように思う。クラブカルチャー黎明期にはそもそもゲイシーンが重要な役割を果たしており、その出自で言えば、今も変わらずダンスミュージックはマイノリティにとって大切な存在なのかもしれない。
で、「fancyHIM」は、そんな2丁目の中でも特にブランドネームのあるパーティである。
ストリートからセレブリティまで、年齢、性別、国籍に関係なく幅広い層から支持されており、音楽を中心に様々なパフォーマンスが行われる。今回はニューヨークを拠点に活動するモデル / DJのJuliana Huxtable、米国ゲイカルチャーをルーツに持つボールルーム / ヴォーグ / ハウスシーンを代表するMikeQ、Björkのアルバム『Utopia(2017年)』でメイクを手がけたことから一躍有名となったベルリンのドラァグクイーン・アーティストHungryらが登場した。
もちろん日本勢も精鋭ぞろいだ。ジャンルの枠にとらわれないプレイが各所から絶賛され、アングラからハイエンドなシーンで活躍するDJ、PELI。Dolce&Gabbanaのランウェイも経験し、幅広い領域で存在感を放つアーティスト、清水舞手。
DJにダンスにファッションに、彼らは様々なアウトプットでもってパーティを盛り上げていた。圧巻だったのは、MikeQの出番の時である。
BPMが高めなテクノで攻めたかと思えば、Cardi Bの「Money」やNicki Minajの「Feeling Myself」などのメインストリームな選曲で畳みかける。そしてその熱量にあてられたフロアのオーディエンスたちが、後方部でダンスバトルを始めた。当然ながら、プログラムに組み込まれたものではない。予定調和から逸脱した、純粋な快楽がそこにはあった。起きるはずのないことが起きたという点で、“再現性のない”パーティであったと思う。日常の瑣末から遠く離れた、「今」しかない空間。たとえようもなく美しかった。
メインフロアでトリを飾ったのは、Juliana Huxtable。1曲目に投下してきたのは、City Girlsの「Act Up」である。人種やエスニシティ、ジェンダーをテーマに活動する彼女がこの曲をかけるだけで、どこかコンセプチュアルな意味をはらんでいるように感じた。プレイ内容はMike Qと同様にビートとジャンルに統一感がなかったが、それでも彼女のミックスには強固な世界観があった。
“日常の瑣末から離れて”と書いたが、この空間が日常を侵食したとき、世の中は少しだけ優しくなれる気がした。渋谷で初開催された「fancyHIM」は、そんな一縷の希望が見えた夜だった。
text_Yuki Kawasaki
■ RED BULL MUSIC FESTIVAL TOKYO X FANCYHIM SHIBUYA TAKEOVER
Hungry
Juliana Huxtable
MikeQ
DJ POIPOI
The KissBoyz
PELI
清水舞手
CLOUDOM
DJ わびさび
fancyBOYS
FLAMINGOS
MONDO
電気羊
KANATAN
磯村暖
NUGA TORYFIERCEA
Aya Gloomy
Bunta
KANATA.CIRCLEK
Toyota Junior
92’ BABE
浦丸真太郎
@ Contact
<イベント詳細>
https://www.redbull.com/jp-ja/music/events/fancyhim-shibuya-takeover
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