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FEATURES

Virtual Selfが提示した「並行世界的2000年代」

ポーター・ロビンソンはオタクか司祭か、はたまた神か。

Mixmag Japan | 12 June 2018

ナードカルチャーからの逆襲

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5月の最終日、USのプロデューサーであるポーター・ロビンソンの別名義プロジェクト、Virtual Selfが「マイナビBLITZ赤坂」にてLIVE SETを披露した。Virtual Self名義としては今回が日本初公演である。米国以外でこのプロジェクトが稼働するのも、これが初めてだ。

オープニングアクトを務めたCarpainterも含め、彼らのギグは細分化著しいダンスミュージックの現在地を照らし出すような内容であった。Red Bull主催の『DIGGIN’ IN THE CARTS』が好例だが、近年のクラブシーンにはゲーム音楽からの影響を隠さないアーティストが多い。特に90年代以降に生まれたアーティストは、ダイレクトにその影響を自身の音楽に反映させている。ポーターとCarpainterはその代表格だろう。そして今回のVirtual Selfのパフォーマンスは、そんなナードカルチャーを出自に持つ表現行為の到達点と言ってよいかもしれない。それほど重要なLIVE SETであった。

オープニングアクト、Carpainter

Carpainter – 『Returning』

ポーターから直々に指名を受けたCarpainter。日本のクラブシーンにおけるブライテスト・ホープの彼は、のちに控えるVirtual Selfへバトンをしっかり繋いで見せた。自身のオリジナルトラック(とリミックス)を中心とした展開に、Disclosureの『Ultimatum』などを組み合わせ、ゲーム音楽を下敷きにした現行ダンスミュージックを完璧に再現。『Changeling Life』に至っては、キラーチューン以外の何物でもない。重めのビートが銃弾のように下腹部を貫いた。更には『Flicker(Carpainter Remix)』をプレイし、オープニングアクトとしても気の利いた繋ぎを聴かせる。締めに持ってきたのは、上の『Returning』。これでまだ余白も感じられ、今後の彼がどのように突き進むのか非常に楽しみになった。

ディレイがかけられたシンセの高音が、余韻となってフロアにこだまする。Virtual Selfの世界観に接続する、けれどもCarpainterのアイデンティティーは失わない、素晴らしいDJ SETであった。

トランス、ジャングル、ハードコア……。ポーターのルーツが結集したVirtual SelfのLIVE SET

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2000年代に強く影響を受けて作られたのが、Virtual Selfの音楽だ。だが、ポーターの言う「2000年代」とは、当時破竹の勢いであったPitchfork的インディーミュージックでもなければ、ColdplayMaroon 5のようなメジャーシーンの音楽でもない。インディーとメジャー、当時いずれの括りにも入らなかった「ゲーム音楽」。特にポーターのインスピレーションとなったのは、音楽ゲームシリーズ『ダンスダンスレボリューション(以下DDR)』のサウンドトラックである。いや、影響を受けたどころか、この日のLIVE SETではDDRに収録されている曲をいくつか使っていた。

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ジャングルのブレイクビーツをふんだんに取り入れた『SP-TRIP MACHINE ~JUNGLE MIX~』、オーセンティックなトランスナンバーの『Look To The Sky』。どちらも日本人のアーティスト(前者はDE-SIREこと前田尚紀、後者はSySF.こと藤森崇多)が手掛けた楽曲だ。特筆すべきはこれらの曲が他のハードコアなトラックと並列し、かつ何の違和感もなかったことである。そもそもゲーム音楽がクラブミュージックを参照しているから当然ではあるのだが、「ゲーム」というフィルターを取り払ってフロアに提示された事実は大きい。Dj Misjah & Grooveheadの『Trippin out』や、Voodoo & Seranoの『Blood Is Pumpin’』など、ハードコアなトランスの楽曲が続く中、DDRのトラックが編み込まれていた。それも最先端のライティングと映像技術と共に。

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Dj Misjah & Groovehead – 『Trippin out』

冒頭にも書いたが、Virtual Self名義でのパフォーマンスは、US以外では日本公演が初めてだ。彼を「ポーター・ロビンソン」の頃からよく知っている人は、「それはそうだろうな」と思ったことだろう。本人名義でのパフォーマンスにおいても、彼は日本のポップカルチャーへの憧憬を前面に押し出していた。ここまで繰り返しているように、オリバー・ヘルデンスZeddなど、アニメやゲームが大きな参照点となっている若手プロデューサーは少なくない。けれども、ポーターはその中でも圧倒的にディープなのだ。日本の制作会社「A-1 Pictures」と協力して全編書き下ろしのアニメーションによるミュージック・ビデオまで作ってしまうのだから恐れ入る。そう考えてゆくと、母国アメリカの次に日本をVirtual Self披露の場に選んだのは半ば必然であった。

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「ポーター・ロビンソン」と「Virtual Self」における相違点を挙げるとすれば、ポーター自身の抽象度だろう。本稿で使われている写真を見れば分かるように、彼の表情を視認できるものは一枚もない。ひたすらアブストラクトな存在として、Virtual Selfの世界観を司る。いや、「司る」という表現はいささか能動的過ぎるかもしれない。この拮抗するユートピアとディストピアの創始者よろしく、彼は「見えざる存在」として君臨していた。イメージとしては限りなく神に近いように思う。

Virtual Self – 『Key』

アンコールを迎え、最後に披露されたのはVirtual Selfのオリジナルナンバー『Key』であった。実はこの曲、現時点では単独公演でしかプレイされていない。ラスヴェガスで開催されたEDCでも、マイアミのUltraでもこの曲はかからなかった。RPG風に言うと、「裏ボス」的なトラックである。ストーリー・テラーのポーターのことだから、この曲を最後に持ってきたことに何かしらの意図はあるのだろう。Virtual Self名義の作品の中でも格別にピースフルなこの曲によって、ディストピアとユートピアの二元論に終止符を打ったのかもしれない。「そんな安直なものじゃないよ」と彼は言うだろうか。いずれにしても、終演後は『ゴッドファーザー』級の長編映画を一本見終えたような充足感があった。

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かつて2000年代のゲーム音楽に魅了された少年は、いま再び原点へ立ち返る――。そして、インディーでもメジャーでもない、音楽シーンにおける並行世界からやってきたナードなメンタリティはダンスミュージックシーンの覇権を握るところまで来ているのだ(この日のライブ直後「Virtual Self」は日本のTwitter上でトレンド入りを果たす)。


Photo:Masanori Naruse
Text:Yuki Kawasaki

■Virtual Self 配信限定EP 『Virtual Self』

 

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