ドイツの名門レーベル〈Tresor〉が放つ人気Mixコンピレーションシリーズ「Kern」にHelena Hauffが登場。今回はVol.5にあたるが、同シリーズにはこれまでにDJ Deep、DJ Hell、Objekt、DJ Stingrayと、錚々たるメンツが名を連ねている。DJ DeepによるVol.1がリリースされたのが2012年の11月なので、2010年代のバイブスの変遷を辿る上でも意義深いだろう。
近頃、複数のDJから「昔のMix CDをディグってる」との話を聞くようになった。曰く、「その時代の空気感をミックスから感じられる」と。テンポの遅速や音数の多寡、あるいは曲のつなぎ方も、時代によっては異なるかもしれない。映像ほど具体的ではないにせよ、いや、だからこそ効果的な記録として残せるのかもしれない。ミックスは時にモールス信号のように、“それ”と分かる人へは正確な情報として伝達される。その点においては、DJを“最も誠実なジャーナリスト”と形容することも出来るだろう。
今回のHelena Hauffによるミックスも、何らかの形でヒントになり得るはずだ。時間を経てから分かる場合もあるが、現時点で明らかなのは「インダストリアル」に深い意味性を求めるアーティストが増えていること。彼女は元々EBMやアシッドをインスピレーションに活動を続けてきたが、それが広い範囲で観測され始めている。弊誌で実施したPhase Fataleへのインタビューでも、同様のことが見受けられる。
Interiview: Phase Fatale 「『攻殻機動隊』が今回は重要な参照元だった」
また、Helena HauffとMorah、Umwelt、Machino、Galaxian、L.F.T.の5人が、このコンピレーションにしか収録されていない未発表曲を提供している。やはりと言うべきか、いずれの曲も心臓をダイレクトに刺激するようなインダストリアルトラックなのだった。
2020年代が「昔」と言われるまでまだまだ時間がかかるが、15年後あたりに今を振り返った時、このMix盤がどのような意味を持つのか大変興味深い。
■ Helena Hauff – Kern Vol.5
絶賛発売中
2CD / 3LP / digital
<Tresor公式ストア>
https://shop.tresorberlin.com/index.php/kern005bundle.html
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