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Mixmag Japan’s Picks: The 50 Best Mixes of 2021

今年魂を揺らしたミックス50編

Mixmag Japan | 31 December 2021

ベストミックス, 年間ベストミックス 2021, mixmag

アルバムに比べて、ミックスの聴き方は限定的かもしれない。どちらも等しくリスニングミュージックとして聴かれる場合もありうるが、ミックスは概ねフロアを志向しているように思われる。コロナ禍以降はフロアに意識が向く回数が減った人もいるかもしれないが、それでもやはり優れたDJが紡ぐストーリーに身をゆだねるのは素晴らしい体験だ。個人的な話をさせてもらえば、パンデミックが起きる以前よりもクラブに期待感を持っている気がする。フロアが閉鎖されていた時期があった分、より切実にイーブンキックやベースサウンド、フィジカルな高揚感を求めているのだろう。

そんなわけで、今年はオンラインプラットフォームで素晴らしいミックスに出会える喜びを改めて嚙みしめていた。再生マークをタップするだけで、そこをフロアに変えてくれる。

The 50 Best Albums of 2021と同様、ナンバリングは作品の順位を意味しない。どこから聴いても素晴らしい体験になることを約束する。


1. HAUS of ALTR 046:// AceMoMA – Essential Mix 2021-01-02

The Lot Radioに彼らが出る回は必ず聴いていた。例に漏れず、ニューヨークのクラブシーンも大きく影響を受けており、各ベニューは休止と再開を繰り返していた。シーンが本来の状態であれば、彼らはどれほど飛躍しただろう。いや、彼ら自身はそれほど悲観していないかもしれない。2時間のミックスをすべて自分たちの楽曲でまかなえるほどディスコグラフィーが充実しており、極東にもその名声は轟いていた。ジャズを取り入れたブレイクス、アップリフティングなハウスやテクノ、新世代の勢いそのままに、現代のパイオニアとして驀進中。


2. Anz | Boiler Room London

今年リリースされたEP『All Hours』が各所で絶賛されているが、マンチェスターを拠点とするAnzはDJとしても破竹の勢いだった。ポップからドープへ、ドープからポップへ、寄せては引く波のように様々なビートが展開されてゆく。先述のEPにもそんな趣があったが、彼女はDJでもそのニュアンスを表現できる。UKガラージやブレイクビーツ、たとえこのミックスの倍の時間続いたとしてもフロアで踊り続けられるだろう。


3. Strict Loose Mix / 死亡ミックス (Yoshinori Hayashi)

Mixmag Japanが選出する「The 50 Best Albums of 2021」にもアルバム『Pulse Of Defiance』が選出されたが、今年のYoshinori HayashiはプロデューサーとDJにおける目的が一致していた。アルバムのプレスリリースにもいわく、「これまでの作品はリスニングにフォーカスした音楽とクラブミュージック的音楽が乖離していましたが、今回は双方を一曲の中で統合させることに努めました」と書かれている。それはまさしくブリープでありテクノでありドラムンベースであり、90年代初頭の“カッコイイ”レイヴサウンドなのだ。


4. The Cover Mix: LSDXOXO

今年の5月にMixmagのThe Cover Mixを手掛けた、ニューヨーク出身にして現在はベルリンに拠点を置くLSDXOXO。プロデューサーとしてはブレイクビーツも手掛ける彼は、ハイエナジーなハードテクノを飲み込むプレイをみせる。このミックスはPioneer CDJ 2000(NXS2)3台とXone:96のミキサーで録音されており、彼が現在注目するプロデューサーの楽曲をコンパイルしたものとなっている。最初から飛ばした内容だが、40分を超えたあたりからいよいよアドレナリンは限界突破する。


5. The Face | Mix 35 | Nathan Micay

トロントとベルリンに拠点を置くNathan Micayが、The Face Magazineに官能的でエクレクティックなミックスを提供した。彼は我々の意表を突くことに長け、このミックスでいうと、スムースな4つ打ちが続いてきたところにSpace Systemの「Petik」でリスナーを引き込む場面に顕著だ(38分ぐらい)。それを経てまた動的なサウンドに回帰してゆくわけだが、実に技巧である。そこからの展開も前半部とはまた違っているのも白眉。


6. CHANGSIE 27.7.21

この記事を書いている最中、Mixmag UKが「THE 21 TOP BREAKTHROUGH DJS OF THE YEAR 2021」として、Changsieを選出していた。先に出されてしまった悔しさは若干あるものの、現在彼女が拠点を置くUKで広く認められている事実への喜びのほうがはるかに勝る。テクノを基軸にしながらダブやブレイクビーツ、ヒップホップを通過し、独自の解釈のもとにミックスが編まれてゆく。このミックスにもそれは顕著だ。筆者は彼女がレジデンシーを務めるNTSも欠かさず聴いていたが、様々な意味で励まされた。


7. PAWSA LIVE @ COCORICÒ, RICCIONE 04.12.21 🇮🇹

〈Solid Grooves〉の共同創立者・PAWSAが先日イタリアでギグを行ったときの模様。ストイックなミニマル・テックハウスだが、時おり投下される大ネタによって一気にビッグルーム然としたDJになる。先日EDGE HOUSEに出演したAmpsも語っていたが、Solid Groovesの面々(とりわけPAWSA)によるミックスの方法論は、ある種の発明であるようにも感じられる。


8. Fast Forward Audio Series #57: Julian Muller

フランスからベルリンへ、そして現在はブリュッセルへ…。拠点を転々とするJulian Mullerは、90年代バイブスと戯れながらキャリアを重ねている。初期のころにLobster Thereminからリリースした音源はトランスとテクノの間を射抜くようなレイヴサウンドだったし、今も大枠は変わっていないように思われる。しかし今年に入り、DJとしてもプロデューサーとしてもかなり洗練されてきた。いよいよ自身のレーベルを立ち上げるため、現在はその準備中であるという。


9. Daniel Avery B2B Haai – Junction 2: Connections

ときおり企画されるB2Bに対しては、「一人ずつ聴かせてくれよ!」と内心思うこともある。しかし反対に、手放しで歓喜する組み合わせも存在する。そのひとつがこのDaniel AveryとHAAiのB2B。UKらしいブレイクスが序盤の大部分を占め、そこからアッパーな4つ打ちに変化してゆく。これぞ、寄せては引いてゆくビートの波…!作業用BGMには滅法向いていない。漏れなくノッてしまうだろう。


10. GTA Online: Moodymann at The Music Locker, Los Santos

ゲーム(メタバース)とDJ(あるいはライブ)の組み合わせは今年も数多く生まれたが、最も現場の感覚に近かったのはGTA Onlineによる「The Music Locker」ではないだろうか。Moodymannのほか、KeinemusikやPalms Traxらがラインナップされ、それぞれの持ち味を発揮したDJを披露していた。ゲーム側のリテラシーとリスペクトがないと成立しなかっただろうが、この“フロア”にはそれがあった。そもそも開発元のRockstarは、創始者のハウザー兄弟によって音楽レーベルとしてスタートした経緯もあり、むしろこれこそが本来の姿なのかもしれない。


11. Anetha | Boiler Room Festival London 2021 | Possession

フロアが閉鎖された期間がありながら、プロパーなテクノ観を表明し続けたコレクティブやパーティがある。パリのテクノクィアパーティー「Possession」はそのひとつだ。そしてフロアの再開後、そういった努力や切望が最もエネルギッシュかつピュアに結実したのが、Anethaのプレイである。オーディエンスの狂乱と、動画のコメント欄に並ぶ彼女への称賛がすべてを物語っている。


12. BSRMIX #113 – Aruta

SryuとのDJデュオ「Automated Control」(こちらも大変好み)に対しては、ミニマルハードテクノを主戦場とする印象があった。しかしそれは一面に過ぎず、Arutaはハウス、アシッド、アンビエントを自在に往来し、ヒプノティックなミックスを紡ぎだした。提供先の〈BUTTER SESSIONS〉の懐の深さも大きく影響しているだろうが、それでも彼の底知れない才能を知るには十分なミックスである。


13. The Cover Mix: ABSOLUTE.

LGBTQ+界隈から現れたUKクラブシーンのニューヒーロー・ABSOLUTE.。今年の5月にはアルバム『Wonderland』をリリースし、高いプロデュース能力を見せた彼は、DJでさらにそのダンスミュージック観を拡張した。KETTAMA、CAYAM(Maya Jane Coles)、Fear-Eらの曲を巧みに繋ぎながら、レイヴィーでハウシーなサウンドスケープを実現した。KETTAMAの「Higher (Steel City Power House)」のキックが突っ込んでくる12:10前後は今年のベストモーメント。


14. DETECT [067] – Risa Taniguchi

プロデューサー/DJとして、現在はプロパーなハードテクノに重きを置くRisa Taniguchi。しかし現行のスタイルに移行する前は、ベースミュージックやエレクトロ(初期)に傾倒するDJだった。このミックスでは、現行のテクノ観と以前に培ったベースミュージック観が折衷されたサウンドが鳴っている。アブストラクトながらも力強く、時折インダストリアルな趣を持って展開。このミックスのほか、彼女が今年〈FRAMEWORK〉に提供したものも同じベクトルで紡がれているように思われる。


15. #RFRadio – 001 – Skream

グラスゴーの音楽フェス「Riverside Festival」開催に際し、隔週でラジオのスペシャルプログラムが放送された。その第1回目に登場したのが、UK屈指のトレンドセッター兼プロデューサー・Skreamである。ダブステップから台頭した彼は、今や特定のジャンルに依拠していない。このミックスも“Techno”と銘打たれているが、実際は様々なサウンドが鳴っている。


16. WAVE MIX 011 “CRUE-LWAVE MIX” by KENJI TAKIMI

古今東西様々な楽曲は、名手によって新たな顔をのぞかせる。例えばこのミックス(14:10ぐらい~)におけるKenji Takimiは、The Velvet Underground & Nicoの「All Tomorrows Parties」を聴かせたあと、擦りながらBeing Boringsの「The Cult of Elegance feat. Eddie C(Gonno Re-Edit)」をドロップしてゆく。新旧やジャンルの違いは、彼の前ではもはや些事。その盤上には“普遍”しかない。


17. Fact Mix 799: Yu Su (Mar ’21)

「The 50 Best Albums of 2021」において、1枚だけ意図的に選ばなかったアルバムがある。それが、中国出身にして現在はカナダのバンクーバー在住のプロデューサー / DJ、Yu Suによる『Yellow River Blue』だ。その意図はもちろん悪意から来るものではなく、そのあとに聴いたこのミックスの衝撃によるところが大きい。『Yellow River Blue』はアンビエントやダブの趣があるが、彼女は全く違うタイプのDJとしてフロアを揺らすことができる。この驚きをむしろ強調したい。ド級の天才が現れた。


18. YELLOWUHURU @ Mutant Radio

日本の人気パーティ「FLATTOP」のオーガナイザー・YELLOWUHURUによるミックス。ジャズとエレクトロニック・ミュージックの間を射抜くような趣がある。「FLATTOP」がそもそもそういったコンセプトを持っているが、彼のDJの場合はどこか生楽器のインプロビゼーションのように聴こえやしないだろうか。あたかもフロンティアを開拓しているようで、そのスタンスがまさに日本の現行クラブシーンを象徴しているようにも思われる。


19. Roza Terenzi b2b D.Tiffany | Boiler Room x Ulica Elektryków

オーストラリア出身のRoza Terenziと、カナダ出身のD.Tiffanyによるb2b。ハウスやテクノ、ブレイクビーツ、あるいはトランスといった共通点を見出しながら、音像がスリリングに展開されてゆく。まさしくレイヴのバイブスである。同じ価値基準を持ったDJたちが国境を超えてb2bに及ぶ様は、コロナ禍にあって多くの示唆があったように感じられる。


20. Seimei Vinyl Sessions Vol.1 06-17-2021

〈TREKKIE TRAX〉の中心人物・Seimeiが発表したミックスは、ミニマル・ハードテクノの系譜の上にある。それはこれまで彼らが培ってきたベースミュージック観とは異なり、より彼の原体験(石野卓球によるレイヴフェス「WIRE」)に即したものだ。プロデューサーとしても彼は今年、初のフルアルバム『A Diary From The Crossing』をリリースしている。本作も確実に同じ文脈上にあり、The AdventやNene Hに共振するテクノ観を明らかにした。2010年代のクラブシーンを牽引してきた存在が、ついにルーツに向き合い始める。


21. Bleep Mix #212 – Eris Drew

弊誌が「The 50 Best Albums of 2021」で『Quivering In Time』を選出したように、今年のEris Drewはプロデューサーとしても優れていたが、そのニュアンスを「Bleep」のテンションで表現したのがこのミックスだ。ソフトなタッチで紡がれているが推進力があり、ハウス、ブレイク、プログレッシブ、トリップホップ、テクノ、ベース、ダブステップなど様々なジャンルが混在しているが、“レイヴ”に収束してゆく。


22. GOTH-TRAD: DEEP MEDi MIX (March 2021)

“ジャンルレス”なミックスの中でオリジナリティを確立しようとするのが昨今のトレンドならば、専門性の高いDJはオルタナティブな存在感を放つのではないだろうか。2000年代からUKダブステップに共振し、リアルタイムでそのマインドを体現してきたGOTH-TRADは、プロデューサー/DJとして同ジャンルの中心に今もなお君臨している。様々なジャンルが混在するカオスの中で「Grind」や「Airbreaker」を聴くと、頭をかち割られるような衝撃に襲われる。ちょうど今年は「Airbreaker」がVIPになって帰ってきたわけだし。


23. Prospa Radio 1 Essential Mix

あまりにも過小評価ではないだろうか。確かにポップなニュアンスのネタを堂々と使ってくる様はUKっぽくないかもしれないが、それならば外野から賛辞を送る次第である。ED BANGERやRage Against The Machine、Luke Vibertを吸収し、日本のStones Taroにまで射程を伸ばす。The Chemical Brothersのビッグビート、Daft Punkのディスコライクなエレクトロを通過した彼らは、まさしくフェスティバル級のスケールを感じる。


24. DANCE SYSTEM thumpin’ house set in The Lab LDN

多少のズレは全く気にならず、むしろちょっとビートが合わないぐらいがグルーヴを感じられるDJがいる。この日のDANCE SYSTEMがそうだ。そこに再現性がないからなのか、その「ズレ」に愛着を持つことすらある。最近はL-Vis 1990の名義でなく、DANCE SYSTEMの名で活動する機会が多いジェームス・コノリー。その名の通り“ダンス”に重きを置いているからか、よりダンサブルな内容のミックスだ。ハウスミュージックのきらめきと、ヒップホップのイナたさ。


25. Diffuse Reality Podcast 076: mu”he

「FUSION」や「PARNASSUS」といったカッティングエッジなパーティをオーガナイズしながら、DJとして多様なジャンルを越境するmu”he。トラップやドラムンベース、フットワークやトランスなどを媒介しながら独自の解釈でミックスを紡いでゆく。しかしここでは限りなくオーセンティックなテクノ観が提示された。今や世界中のポッドキャストにミックスを提供する彼女であるが、このミックスからはベルリンのフロアがみえる。


26. London Unlocked: Kode9 at Round Chapel

今年の〈Hyperdub〉は常に注目の的だった。リリースは次々に拍手喝さいを浴び、Loraine Jamesや食品まつりは各所から絶賛されている。レーベルオーナーのKode9もまた、極めて重要な存在だ。このミックスでは独特なビートパターンとIDM的なニュアンスでもって、我々を恍惚へと誘ってくれる。Yuzo Koshiroの「Temple (Actraiser)」も飛び出し、伝説のクラブイベント「Diggin In The Carts」を思い出した。


27. Pangaea – 06 November 2021

「もうアイデアは出尽くした」と外野が考えても、それをあざ笑うように斬新なDJ像を示し続けているのが〈Hessle Audio〉の面々である。2000年代末から2010年代にかけて絶えず注目されていた(誇張抜きで)が、彼らは常にエッジーであり続けた。レーベル創始者のひとりであるPangaeaは、今年もRinse FMを通して我々に最先端の景色を見せてくれた。


28. Bassiani invites Takaaki Itoh / Podcast #105

海外からDJを呼べない今、日本でTakaaki ItohのDJを体験できるのは大きなメリットである。LSDXOXOのような一線級のDJがThe Cover Mixで彼の曲を使っているように、日本が誇る正真正銘のグローバル・アクトである。このミックスも大仰ではないが迫力があり、絢爛な展開はないがストイックなグルーヴがある。少しずつ変化してゆく音のうねりが、2時間にわたって表現された。日本にはJeff MillsもBen Klockもいないが、Takaaki Itohがいる。


29. Closet Yi FeelMyBicep Mixtape 159

韓国のDJチーム「C’est Qui」のひとり、Closet YiがBicepのブログ「FeelMyBicep」に提供したミックス。彼女は日本のコレクティブ「CYK」とも関わりがあり、C’est Quiとして彼らが運営する「CYK TOKYO RADIO」にもミックスを提供している。このミックスもロウな質感のハウスを基軸に、独自のレイヴ観が紡がれ、〈Lobster Theremin〉や〈Unknown To The Unknown〉のようなレーベルと共振するような内容に仕上がっている。本格的なブレイクも近いのでは。


30. CYK TOKYO RADIO 021 Kross Section (Keiju+ktskm)

京都を拠点に活動する、1998/1999生まれのDJ/プロデューサー・ktskmとKeijuによるユニット。節目になるようなパーティでCYKが抜擢される度に、そのコミュニティの強さを感じる。それは決して海外アクトの代替品としての強さではない。グローバルなシーンを相対的に考えたときに、CYKは既に代表的なローカルコミュニティになっているように思われる。先日渋谷のContactで行われた彼らのパーティに、Kross Sectionもラインナップされていた。この2人もホームレーベル〈PAL.Sounds〉を持っているし、CYK以外にも〈NC4K〉と連携しながら活動している。横のつながりが可視化されてきた今、少し先の未来に確かな明かりが見える。


31. fabric presents Overmono


Fabricが2019年にスタートさせた新ミックスシリーズ「fabric presents」の9作目。プレスリリースによると、「過去と現在の音楽シーンをリスペクトする」コンセプトで作られたという。その言葉通り、真摯に歴史と向き合って紡がれた本作はUKのクラブシーンを体現したような内容に仕上がった。2ステップやジャングルといったUKのクラシックなジャンルを横断しながら、かの国の多文化社会を祝福している。現実がどれだけ腐敗していても、アンダーグラウンドからこういった作品が上がって来ると気休め程度にはなるのではないだろうか。そして時に、気休めこそが重要なのである。


32. Hard Dance 102: Sara Landry

Perc、I Hate Models、Nico Moreno、VTSS、Cera Khin、Cassie Raptor、Amelie Lens…。多くのDJが、アメリカのオースティンを拠点に活動するSara Landryを支持している。ハードでインダストリアルなテクノを武器に、彼女はプロデューサー/DJとして近年著しく台頭してきた。Boiler Roomの名物企画「Hard Dance」に提供されたミックスは、1時間ひたすらハードに走り続ける。


33. In Session: Parris

ハックニーとトッテナムで育ったParrisがグライムやダブステップにハマるまで、そう時間はかからなかった。Plastic PeopleやDance Tunnelのようなナイトクラブに通うようになり、Ben UFOやLoefahに憧れを持つ。やがて彼はDJとして存在感を高めてゆくが、センセーショナルにバカ売れしたわけではなかった。さながらこのミックスのように、微熱を帯びながらプロップスを獲得していった。アップテンポなベースと、明滅するブリープ。


34. DJ Holographic at One Project

言うまでもなく、ダンスミュージックにとってデトロイトは今も昔も素晴らしい都市である。ホアン・アトキンス、デリック・メイ、ケビン・サンダーソンをはじめ、ジェフ・ミルズやロバート・フッドなど、オリジネイターに加えてレジェンドを数多く輩出している。次世代に至っては女性の台頭も著しい。DJ HolographicやAsh Laurynらがローカルをレペゼンしながら、世界的な評価を獲得しつつある。とりわけDJ Holographicはポップミュージック側から歓待されるうるだろう。このミックスを聴けば分かるように。


35. Ben UFO – Essential Mix 25.09.21

Pangaeaに同じく、Hessle Audioの共同設立者であるBen UFO。恐らくここ10年の間に最もDJを参考にされているひとりだろう。彼もまたミックスのアイデアが無尽蔵である。2ステップからいきなりバンガーなテクノに繋いでみたり、とにかく異なるジャンルをシームレスにミックスできる。BBC名物の「Essential Mix」では、DJ Lag、Elkka、Joy O、Overmono、Tim Reaper、Call Superといったプロデューサーのトラックを巧みに繋ぎ、2時間常に感動と驚きを我々にもたらしてくれる。


36. LT Podcast 175 // RAVEN

〈Lobster Theremin〉主宰のAsquithは当初の目的を「UKハウスシーンにおける才能ある若手の発掘」としていたが、音楽ジャンルとしては常に拡張しているように感じられる。RAVENのようなプロパーなテクノを主戦場とするDJ/プロデューサーもこのレーベルに関わるようになってきた。彼女にとって今年は大きく飛躍した年だったのではないだろうか。ベルギーのレーベル〈Exhale〉からリリースされるコンピレーションに参加し、その後にはRadio Slaveの〈Rekids〉からEPをリリース。十全的にフロアが再開した暁には引く手あまただろう。


37. The Cover Mix: TSHA

BonoboやMaribou Stateといったアーティストから支持され、Mixmagのような専門誌以外からもサポートされているTSHA。彼女の名前を今年何度も見かけた。たとえばNMEやBillboardも彼女をフィーチャーしている。確かにこの訴求力だ。ハウスとテクノの間を自在に往来しながら、アップリフティングに突き進んでいく。AaliyahやWhitney Houstonをも巻き込みつつ、ダンスミュージックからは逸脱しない。スケール感。


38. SASHA in the Lab LDN

冗談みたいにDJが上手い。百戦錬磨のSashaをつかまえて失礼な話だが、動画を見ながら惚れ惚れしてしまった。リリースされたばかりの曲(ここではKorelessの「Black Rainbow」)ですら、テクニカルにミキシングできてしまう。コメント欄に彼の凄さを端的に表す言葉があったので引用しよう。「SashaのDJを体感するのは、ブラジル代表のフットボールを見るようなものだ。ファッションやトレンドに左右されず、何十年も(カッティングエッジな)態度を貫く人物の職人芸」。


39. Yazzus B2Beats Miley Serious

ロンドンを拠点に活動するYazzus、ニューヨークに拠点を置くMiley Serious(出身はフランス)が〈Telekom Electronic Beats〉で行ったB2B。彼女らはまだ実際にクラブで会ったことがなく、オンラインでのみやり取りをしているそうだ。そんな2人が各々のレイヴ観を共有し、ミックスを作り上げる。対面せずとも価値観やアイデアを交換し、ひとつのアウトプットとして結実させるのは、SNS以降のあらゆるアーティストの強みだが、それを最も実現できる可能性が高いのはDJではないだろうか。


40. Frankie $ – 速攻バッド入る完全ごみハードハウスマラソン (100% Vinyl)

GOTH-TRADとはまた別のタイプの“専門性”を持つFrankie $。彼の場合、様々なジャンルの音源が入ったレコード棚を俯瞰し、そこから各ジャンルごとのミックスを組み立てることができる。ジャングルやブリープ、ダブステップにUKベース…。彼のサウンドクラウドを眺めれば分かるように、ジャンルがコンセプチュアルに並んでいる。このミックスの場合はハードハウスだが、品のある“バッド”を体感できる。「頭の悪さは負けない自信満々」…。つまり、馬鹿になれる知性がある。そういった選択肢をとれる人間は、得てして賢いのだ。


41. Daisychain 196 – Shanti Celeste

ジャズやソウル、R&Bなど、テクノやハウス以外からの影響も大きいと語るShanti Celeste。ダンスミュージックとしては90年代にインスピレーションがあるようで、とりわけデトロイト・ハウスがルーツのひとつだという。現在の拠点はUKのブリストルということで、このミックスからはその街からの影響も随所に感じられる。トリップホップ由来のビート感やブレイクビーツ、テックハウスといった諸々が混然一体となって押し寄せてくる。


42. Nastia | Boiler Room Cologne

NastiaのDJはオンライン/オフライン含め何度も見ているが、個人的にはこれがベストだと感じる。もちろんオフラインを含めれば見ていないギグの方が多いわけだから、あまり大きなことは言えないが、テクノが突き抜けたときの破壊的なバイブスをまとっているように思う。アシッドでインダストリアルな高速イーブンキックで1時間弱を走り抜ける。…と思いきや、最後の最後でドラムンベースに移行するのも好き。


43. Lost Village 28th August 2021

今年の8月に開催された「Lost Village Festival」でFour Tetがプレイしたときの音源。ヘッドライナーとしてラインナップされた彼は、その役割を十二分に発揮し、レジェンドがレジェンドたる所以を明らかにしてみせた。Overmono、Adam Fらの楽曲、そして自身が“スタジアムサイズの箱用に”リエディットしたEric Prydzの「Opus」などをプレイした。


44. Joris Voorn Vinyl DJ Mix | Classic Acid Pt.2 (Guilty Pleasures and More..)

「DJを始めたばかりのころ、俺はアシッドテクノに夢中だった」という文章を添え、自身のDJ配信の告知を行ったJoris Voorn。今年やたらとフロアでDJ Misjahの曲、「Delirious」と「Access」を聴いた気がするのだが、これらの楽曲の再検証を始めたのはひょっとしてJorisなのだろうか…。とりわけ「Access」はテクノパーティに行けばかかるぐらいの頻度で聴いた実感があり、90年代は相変わらず強い。この荒々しさと恍惚、まさしく“Guilty Pleasures”。


45. India Jordan | Boiler Room London

クラブの営業再開後、「もうほとんど泣きそうだった」という文言と共に自身が出演したパーティのショートクリップを添付し、Twitterでちょっとしたヴァイラルを生んでいたのはIndia Jordanだった。彼女はそういう場面がよく似合う。この動画も、フロアが再開して間もない頃のものだ。ハードハウスやUKガラージ、ブレイクビーツをゴリゴリ展開し、会場を熱狂させてゆく。


46. Dekmantel Podcast 321 – Giant Swan

初めて再生ボタンをタップした時の感動を今もよく覚えている。開始10分で「すげぇ…」とひとり呟いた。元々はバンドのギタリストとして音楽シーンに参入してきたGiant Swanの2人だが、このミックスにはロックの影はない。しかしその勢いはロックに勝るとも劣らない。Kangding RayからSOPHIE、あるいはTheo Parrishまで、様々なジャンルのエネルギーが跳躍するように繋がってゆく。


47. Ancient Methods – HATE Podcast 253

SoundCloudのアナライズによると、今年筆者が3番目に多く聴いたのがこのミックスらしい。10月にリリースされた事実を考えると、よほど聴いていたのだと思う。余談だが、1番聴いたのは上のGiant Swanのミックス(Dekmantel Podcast 321)で、2番目がFour TetのLost Village。実際、このミックスをかなり聴いていた自覚もある。凶暴なEBMが耳を引く内容だが、なぜかずっと聴いていたくなるのだ。


48. DJ Boring | Boiler Room x Lost Sundays

コロナ禍以降、久々の現場だったのか、DJ Boringもいつにも増してアップリフティングである。フロアの熱気もありありと伝わってくるようだ。終盤にかかるThe Thrillseekersの「Synaesthesia (En-Motion Remix)」を聴いて、微塵も興奮しない人なんているだろうか? トランシーなブレイクから、再びパワフルなドロップへ。手を上げるオーディエンスに、モクモクと焚かれるスモーク。そしてサイケな色彩のライティング…。フロアを諦めたくない理由がここにある。


49. Could You Give Me An Hour? Vol.4 Stones Taro

大車輪の活躍と言って差し支えないだろう。レーベルのボスとして、プロデューサーとして、DJとして、どのステータスから見ても完全無欠。今年のStones Taroは国内外から破格の評価を受けていた。ProspaやCloset Yiがミックスで彼の曲を使い、Louise Chenのような気鋭DJからも声がかかる。そして年末、自身のルーツに回帰するかの如くハウスのミックスを紡いでみせた。果たして、彼がやり残したことはあるのだろうか。


50. FJAAK (DJ Set) | Boiler Room x AVA Festival 2021

自分たちがプロデュースする楽曲と、フロアで実践したいDJがこれほど合致するアーティストが他にいるだろうか? 今や彼らのようになりたいDJは大勢いるだろう。今回のミックスでも、少なく見積もってセットリストの半分を自分たちのトラックが占めている。力強いキックに、レイヴィーなシンセサウンド。ウイルスが収束した暁にはぜひとも来日してほしいが、まぁスケジュールは埋まっているだろう。座して待つ。


Text_Yuki Kawasaki

 

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