

MAYUDEPTH: Ellen Allienや、Miss Kittinといったテクノ黎明期から活動を続けているDJたちと共演したことは大きな経験になりました。プレッシャーもあったけど、彼女たちの音楽への真摯な愛情をダイレクトに受け取ることができて嬉しかったです。
― ここ最近、MAYUさん的に面白いなと思ったDJやアーティストはいますか?
MAYUDEPTH: いつの時代もクラブシーンは若い世代がやっていることが面白いと思います。今はいわゆるレイヴ=セカンド・サマー・オブ・ラブ的な体験をしていない若者たちが、DIYで新しい解釈のレイヴカルチャーを模索していて勢いがありますよね。それはリリースされているトラックとかMIXにも象徴されていて、いろいろな科学反応を起こしたサウンドが出ていて新鮮です。90’sサウンドのリバイバルも然りですが、新鋭ベース・テクノはパンクでルールに囚われていない感じ。あとD. Tiffanyのレーベル〈Planet Euphorique〉のリリースも独特のクロスオーバー感が印象的でした。最近気になっているアーティストのFlora FMもリリースしてたり。
― DSKEさんの、昨年はいかがでしたか?
DSKE: DJをいろいろやらさせてもらった中でも、台湾でやった「Spectrum Formosus」というクィア系のフェスティバルがあるんですけど、それがすごく良い経験になりました。アジアのアンダーグラウンドなクィアのパーティシーンというのが、今後楽しみだなあと。それが2019年の1番の発見ですね。
MAYUDEPTH: 「Organik Festival」の人たちがオーガナイズしてるんですよね。私も行ったけど、すごくよかったですね。
DSKE オーガナイザーの人がベルリンに住んでいることから、ヨーロッパのノリがありまして。その人自身は確かストレートなはずなんだけど、ゲイライクなラインナップが好きなんですよね。ベルグハインとかに遊びに行っているから、その感じがわかるのかなと思うんですけど、かなりいい感じでした。
MAYUDEPTH: ヨーロッパのシーンみたいで、ロケーションも面白くて茶畑でやっていたんですけど、あの感じは日本にはまずないですよね。クィア以外の人たちもたくさん来ていたし。
DSKE: そうそう。ちょっと山の上のバーベキュー場みたいなところでやっていたんだけど、しっかりフェスみたいになっていて。
MAYUDEPTH: 山の中のロケーションに関わらず、都心部からタクシーで20分くらいのところで、お客さんもちゃんとお洒落をしてきていて。それと主催者側だけでなく、遊ぶ人たちがとても自然体だったんですよ。自然にそういう人たちが集まってきて、みんなで格好いい音を聴こうよって感じで、知らない人同士でも気軽に話したり、生花をつけている人たちもいて。そういう雰囲気って、作ろうと思って作れるわけでもない。そこにいる人、土地の空気感、さりげない主催者側のホスピタリティ。とにかく洗練されてました。日本でもこんな風にクィアのカルチャーとクラブカルチャーが、もっと自然なトーンで一つになれたら理想的なんですけどね。

クィアのカルチャーと、クラブカルチャーが、もっと自然なトーンで一つになれたら理想的。
MAYUDEPTH
―「クィア」という言葉を、この数年よく耳にしますが、次の時代のキーワードになってくるのではないかと思っています。ところで、「クィア」とはどういう意味合いの言葉になるのでしょうか?
DSKE:ハッピーとかゲイとか、前向きな意味合いが強いですよね。
MAYUDEPTH:ゲイとか、トランスジェンダーとか、あらゆるセクシュアルマイノリティ。
―「MOTORPOOL」は、クィアなパーティと言っても良いですか?
DSKE:本当にいろいろな人たちが来てくれているので、100%ではないけどクィアなパーティと言えばそうですね。
― 2019年パーティは、どのように変化したと思いますか?
DSKE: 大きく進化した1年だったと思います。いろいろな人が遊びに来てくれるようになったし、自由度も前よりも高くなっていて、みんなどんどん弾けだしているというか。
MAYUDEPTH: ゲストDJのネームバリューというよりも、「MOTORPOOL」という名前でお客さんが来てくれるようになったことは良かったなと思います。だからこそ、お客さんをがっかりさせないよう、クォリティをキープしていかないとと思っています。同じことをしていたら、飽きられてしまいますしね。
― この先、理想としていることはありますか?
DSKE: 安心して遊べる雰囲気作りですね。張り切って汚れに行けるような。お洒落していくけど、汚くなれるというのが僕の理想で。最近は、結構みんなしっかりしていて、背中をピン!と立てていなくちゃいけない感じが多いから。本当は、この場所に来たらもう何をしていても恥ずかしくないっていうのが理想なんですよね。
MAYUDEPTH:パーティって基本、現実を忘れてクレイジーになりにいくところでもあると思うから、そういう気持ちを持って来てくれても、私たちはウェルカム。そういう人を見て、ドン引きするような人がいる雰囲気にはしたくないなと思っています。もちろんセーフティな空間であるということが大前提で。
― 確かに全体的に「汚れてもいい」という感覚はあまりない感じもしますね。
DSKE:パーティ中は、綺麗にしっかりしてないといけないっていう意識があって、汚れたいなんて思わないんでしょうね。でも本当は弾けたいし、汚れたいって気持ちはあるはずだし。汚れるってヘンな例なんですけど、日々のストレスから開放されたい、白いTシャツが真っ黒に汚れてしまってもお構いなし、男も女も脱いじゃうけど周りは(タイプの子以外)まったく気にしない感じ……それくらいパーティって自由なものであって欲しいし、好きな時に踊って、好きなことして自分勝手に楽しんで欲しい。
― 遊んでいるときに、開放を感じる瞬間ってあるじゃないですか。それを導いいてくれるのは、いいパーティですよね。
MAYUDEPTH: オープンマインドなパーティって、そういうことを言うのではないのかなと思います。
― そこに必要なものってなんだと思いますか?
MAYUDEPTH: 一番大切なのは共感して遊びに来てくれる人。パーティは私たちだけでは作れないので。
― 現在、「MOTORPOOL」にはどんなお客さんがきていますか?
MAYUDEPTH: 本当にいろいろですよね。ストイックな音楽好きもいれば、音楽には詳しくないけど、パーティの雰囲気が好きっていうだけの人もいるし。あと女性のお客さんも多いし、年齢の幅も広いかなと思います。
DSKE: Tシャツ(「MISTERGENTLEMAN」と「MOTORPOOL」のコラボレーションアイテム)だけを買いにきたけど、そのままいたら凄く楽しかったっていう人もいたり。



DSKE
MAYUDEPTH: それはブッキングしているDJの人たちが、色気のある人たちが多いからかも。
― 東京なんかは新しいクラブもたくさん出来始めているのに、なんかこう色気を感じない。
DSKE: だから「MOTORPOOL」は、ミックスなパーティなのに、色気を感じてくれているってことは凄く嬉しいですよね。ゲイ、レズビアン、クイアではない人がそう感じでくれることはすごく嬉しい。
― 何故、パーティに色気が出たと思いますか?
MAYUDEPTH: DAIちゃん(DSKE)が思う色気と、私が思う色気って違うと思うんですけど、2人とも色気好きであることは変わらないよね。テクノとかハウスミュージックにおいて凄く大切な要素だと思うし。
DSKE:「MOTORPOOL」ってContactでやっているんですけど、例えばFOYER(真ん中のフロア)はクィア的な色気も出ているし、バーがあるCONTACTフロアは大人の音楽が好きな人の色気が出ていて、メインフロア(STUDIO X)はお客さんの熱気と海外からのゲストDJのプレイから色気が出てる。パーティの各フロアごとの要素、それぞれの空気感は全くの別物だけど、ぶつかっていないんだよね。調和が取れているのかも。
MAYUDEPTH: そうそう。3つの部屋をどういうバランスで開催するかは結構考えていますね。呼んでいるアーティストによって組み方は変わってくるし。その中で1番気を使っていることは、部屋ごとに明確にカラーを打ち出しながらも、さっき DAIちゃんが言ったように“ぶつからない”こと。全体が調和するってことですね。
DSKE: 今は、そこを一番大事にしていますね。ひとつだけのフロアで見たら、そこまで魅力的ではないと思うんですよ。だけど、真ん中の部屋で華やかなことをやって、その横でめちゃストイックなことをやっているという、その調和が良い方向に向かっているのかなと。
― このスタイルは、DSKEさんのベルリンでの経験で得たことでもありますか?
DSKE: もちろんありますけど、やっていくうちに自然とオリジナルができあがった感じですね。最初のうちはすべてのフロアにクィアの要素が入っていたんですよ。ただやっていくうちにどんどん進化していって、今のバランスがいい感じになっていますね。それからDJに関しても、あまり誰が主役とかはないですね。一応メインのゲストはいるんですけど、同じくらい他のフロアのDJも目立っている。みな楽しんでやってくれていますね。
―「MOTORPOOL」は、ゲイの人たちも多くいらっしゃいますが、自分のようなストレートも行きやすいなと思いました。新宿2丁目だと、やはり少しハードルが高かったりするんです。
MAYUDEPTH: その逆もあって、2丁目以外のパーティには行きづらいというゲイの友達も結構いて。今の東京だとまだまだクラブシーンとゲイカルチャーの隔たりが大きいんですよね。言葉やディスカッションだけ先行してて現場や当事者がまだついていけてないというか。
DSKE: 渋谷界隈で、メンオンリーのパーティもたまにあるんですけど、そこはまた全然違う世界で。こうやっていろいろな人たちがミックスしているパーティはなかったよね。
MAYUDEPTH: そうですね。今後の課題のひとつとして、クィアのアーティストをもっと発掘していきたいとは思っています。DJであれば尚更いいし、もちろん映像作家、絵をかける人とかも。そういう人たちと、コラボレーションできたらと思っています。


「色気」は、テクノとかハウスミュージックにおいて、凄く大切な要素だと思う。
MAYUDEPTH
DSKE

DSKE: 来年はいろいろなパーティがポッとでてくる可能性はありますよね。オリンピックもあるし、人も集まるだろうから。何かしら沸き立つイメージはありますね。遊びにいく人たちの人数も、確実に増えますよね。ただ、クラブシーンがどうなるかは、全然検討がつかない。「MOTORPOOL」は日本に住んでいる外国人も来るんですけど、日本へ遊びにきた人も来てくれたらいいですね。
MAYUDEPTH: 今、シーンが分散しすぎちゃっているから、難しいんですけど、今後は海外のオーディエンスが増えて行くだろうし、ひとつのパーティの中にもっと振り幅のあるものが出て来ても良いように思います。音楽性だけにフォーカスしすぎててオリジナリティや遊び心のあるパーティがまだ少ないと感じるので。
DSKE: 行ったパーティの半分の人たちが、その日のDJの話をしていたら、そのパーティを自分はあまり楽しめないことが多い(笑)。音にストイックなオタクは、20%くらいのバランスがいいかな。
― 自分も好きなDJを聴きに行くことは多々あるんですけど、時々、DJやアーティストでないとここにはいてはいけないのかな? と思うパーティがあります。良い意味でも、悪い意味でも、クローズしている感じ。
MAYUDEPTH:それは側から見ていても何となくわかるし、良く耳にすることですが、やはり長く続いてるパーティーってどんなに偏ってて尖っててもお客さんをよく見てるし大切にしてると思います。
― ところで、最近お2人でB2Bをされていますね。
DSKE: それが結構面白いんですよ。DSKE & MAYUDEPTHっていうコンビでやっているんですけど、1人でできないことが2人だといい感じに新しい展開が出来たりして、相乗効果になっている感じはしますね。
MAYUDEPTH: ひとりだと予定調和だったりすることも、B2Bって何がくるかわからないから変な乱れ感があって面白いですね。
DSKE: 一曲、一曲、対応していく感じだもんね。お互い良く知っていて、安心できる人でないとできないですしね。
DSKE: 「MOTOPOOL」では、かなりB2Bに力を入れているんです。見た目も華やかになるし、真ん中のフロアとかほぼB2Bでいいんじゃないかって。いろいろな人と絡んでやってみたい、それと他がやっていないことをやってみたいというのはありますね。
MAYUDEPTH: 「これって『MOTORPOOL』っぽいよね」ではなく、「『MOTORPOOL』でこれをやるんだ」ってことに今後もトライして行きたいですね。


MOTORPOOL feat. STEFFI
2月29日(土) at Contact
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【LINEUP】
Studio:
Steffi (Ostgut Ton | Dolly)
DSKE
MAYUDEPTH (四季協会)
Contact:
Kenji Takimi
YAMARCHY
and more
Text&Photo(People):Kana Yoshioka
Party Photo:Wataru Fukaya
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